海外からも「ミセス・ワタナベ」などと呼ばれたように、日本では主婦たちの間にもFXが広く普及し、熱心な売買が目立っている。「ベースアップを望めない夫に代わってFXで稼ぐ!」という心意気はありがたいが、夫の扶養控除が受けられなくなる点には要注意だ!妻がFXで年間に76万円以上稼ぐと控除が一切不可に子育てが一段落したことを機に、専業主婦だった妻がパートなどで再び働き始めるケースはありがち。その際、年間の収入が103万円以下なら、65万円の給与所得控除と38万円の基礎控除を差し引いて、ほかに所得がなければ所得税はかからず、その申告の必要もない。しかも、配偶者控除の対象となり、その分だけ夫の所得税が軽減される。また、妻のパート収入が103万円を超えても、141万円未満(控除を差し引いた金額で76万円未満)で、夫の合計所得金額が1000万円以下(給与収入のみなら年収でおおむね1230万円以下)であれば、配偶者特別控除が受けられる。こちらは妻の収入が増えるにつれて、控除額が段階的に少なくなるが……。しかしながら、最近はパート収入以外にも意外な落とし穴が待ち受けている。主婦の間でもFXが浸透しているのは周知の通りで、こちらで利益を出しているケースが少なくないのだ。当然だが、FXで儲けた場合には給与所得控除が適用されず、利益が年間38万円を超えた時点で配偶者控除が適用されなくなる。そして、76万円以上の儲けが出ていると、配偶者特別控除も受けられなくなるのだ。こうして妻が控除から外れれば、おのずと夫に課される税金は重くなってしまう。そればかりか、夫の課税所得をもとに算定される住民税などもアップしてしまう。皮肉なことに、苦しい家計を支えるためにFXを始めたとしても、稼ぎすぎるとむしろ逆効果となるわけだ。あまりにもトレードが好調で稼ぎすぎている場合は腹をくくるしかないが、微妙な場合は含み損が出ているポジションを決済するなどして、控除枠内に年間の利益を抑えたほうが賢明だといえる。利益が70万円以上になると配偶者特別控除は1ケタ(6万円以下)になってしまうので、最低でもそれ未満に抑えたい。損失との通算以外にも利益を抑えるすべはある。左記の記事の通り、FXにも経費の計上が認められているのだ。「トレードを行なううえで必要だった経費なら、基本的には何でも計上できます。ただし、納税者には説明責任があり、もしも税務署側から問い合わせがあった場合、彼らをきちんと納得させられなければなりません」


林 裕二林税理士事務所法人税、所得税等の決算申告業務や税務相談、企業内セミナー講師、原稿執筆等に従事。ファイナンシャル・プランナーとしては、独立系FP会社、証券アナリストや保険コンサルタントとの共同による包括的コンサルティングを行なう。「くりっく365」のセミナーでは講師も務める。―--この記事は「WEBネットマネー2012年2月号」に掲載されたものです。