埼玉西武ライオンズの新人投手、小石博孝が11日付で出場選手登録を抹消された。小石は1軍で3試合に先発登板し、1勝0敗、防御率4.50。10日の対東北楽天ゴールデンイーグルス第7回戦では、2回途中4失点で降板している。

 ルーキーの応援は、難しい。百戦錬磨のベテラン選手をきりきり舞いさせる光景は見ていて爽快だが、1年目から活躍できる選手は、ごく稀。多くはプロの壁にぶつかる。
 それも1つの経験なのだが、それでチームが試合に敗れた場合、誰に責任を求めるべきか。もちろん、1年生たちを責めるわけにはいかない。結局は、起用した監督が悪いということに落ち着く。

 チームの負けが込むと、ファンからはルーキーを登場を待つ声が強まる。颯爽と現れたルーキーが1軍の雰囲気を変えると言うよりも、どうせ勝てないのなら、新人に経験を積ませた方がマシという、消極的な理由からだ。
 だが、個人的には、この大胆なアイデアには賛成できない。ともすれば、開き直りになるからだ。

 スポーツライターの二宮清純氏は、この開き直りを現実逃避思考停止状態と批判している。
 二宮氏は「1ミリの大河 新スポーツ論」(マガジンハウス社)で、元競泳選手の鈴木大地の挑戦を取り上げている。
 鈴木は1988年のソウル五輪の金メダリストだが、競泳男子100メートル背泳ぎ決勝では、スタート直後から距離を稼げるものの、体力の消耗も激しいバサロの回数を、これまでの21回から27回に増やした。さらにゴールの際には、骨折も覚悟でゴール板に指を突き立てた。
 この果敢な挑戦で、鈴木は世界記録保持者のアメリカのデビッド・バーコフを0.13秒差で破り、日本競泳界に16年ぶりに金メダルをもたらした。
 二宮氏は鈴木の挑戦を称える一方で、選手の開き直りを批判。「そうした愚か者に神が至福の瞬間をプレゼントしたいと思うだろうか」と切り捨てている。

 勝算があるのならともかく、安易なルーキーの起用は開き直りだ。小石のケースがそうだったと言うわけではないが、開き直りにいい結果がついてくるはずがない。女神は、最後の最後まで勝利に拘る選手やチームにのみ、微笑むのだ。