(※写真はイメージです/PIXTA)

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老後には、退職金や満期保険金など、まとまった資金を受け取る機会が多くあります。そしてそのタイミングで、銀行から資産運用や定期預金などの案内を受けることも決して珍しくありません。本稿では、生命保険の満期保険金を受け取った67歳女性の事例をもとに、まとまった資金を受け取ったときに気をつけたいポイントについて、ファイナンシャルトレーナーFP事務所の森逸行氏が解説します。

満期保険金が振り込まれ3時間後、銀行から来た“謎の電話”

「なんだか、口座をずっと見られているようで怖かったです」

そう話すのは、佐々木さん(仮名/67歳)。数年前に夫を亡くし、現在はひとり暮らしです。住宅ローンはすでに完済しており、夫が遺してくれた生命保険金や、自身の退職金を大切に管理しながら、静かな老後を送っていました。

ある日、佐々木さんの自宅に、加入していた生命保険が満期を迎え、600万円の満期保険金が銀行口座へ振り込まれたことを知らせる手紙が届いていました。まとまったお金ではあるものの、「すぐ使う予定はない」と特に気に留めていませんでした。

ところが約1ヵ月後、スマートフォンが鳴りました。画面には見覚えのない電話番号が表示されています。特殊詐欺も多いことから、知らない番号には出ないようにしている佐々木さん。一度は無視しましたが、しばらくして同じ番号から再び着信。不安になって電話に出ると、相手は取引のある銀行の担当者でした。

「口座にまとまったご入金がありましたので、ご連絡いたしました。もし使い道がお決まりでなければ、一度お話だけでもいかがでしょうか」

丁寧な口調ではあるものの、突然の連絡に戸惑う佐々木さん。最初はなんの話をしているのかわかりませんでしたが、少し考えて、今日が満期保険金が振り込まれる日であることを思い出しました。

「そのお金は使う予定があって……」

そう伝えると、電話はすぐに終わりました。しかし、電話を切ったあとも心のモヤモヤは消えません。

保険金が振り込まれたことを、どうして銀行は知っているの? 口座を覗かれているみたいで怖い……」

数日後、銀行から改めて案内があり、「話だけなら」と店舗へ足を運びました。担当者は、「老後はなにが起きるかわかりませんから」と、定期預金や投資信託や一時払い終身保険など、さまざまな資産運用商品を次々と勧めてきます。

「どの商品もよさそうに聞こえるんです。でも、本当に私に必要なのかわからなくて」

その日は「一度持ち帰って考えます」と伝え、契約はせずに帰宅しました。しかしその後、佐々木さんは「このまま預金で持っていていいのだろうか。それとも資産運用を始めたほうがいいのだろうか」と悩み続けています。

銀行からの勧誘に迷った際は、「お金の目的」を整理して

銀行では、生命保険の満期保険金や退職金、相続資金など、まとまった資金が入金された顧客に対して、資産運用や定期預金などを案内することがあります。これは営業活動や情報提供の一環であり、多くの場合、不正に口座を「監視」しているわけではありません。

まとまったお金を預けている銀行から提案を受けると、「勧められた商品を選ぶべきなのではないか」と迷う人も多いと思いますが、このような場面で筆者が多くの相談者にお伝えしているのが、まずは一つの問いを自分自身に投げかけてほしいということです。

その問いとは、「そのお金はなんのためのお金ですか?」というもの。

その場で契約を急ぐ必要はありません。一度持ち帰り、自分に本当に必要な商品かを冷静に考えることが重要です。

これまで筆者は、退職金や相続、今回の事例のような生命保険の満期保険金など、多くの資産に関する相談を受けてきました。そのなかで強く感じるのは、お金の運用方法を考える前に、「そのお金にどんな役割があるのか」を整理することの大切さです。

そのお金は、老後の生活を支えるためのものか、将来の介護や医療に備えるためのものか、それとも大切な家族へ引き継ぐものか……。まずは、そのお金の目的を明確にすることが、後悔しない資産運用の第一歩です。

老後は、まとまった資金を受け取る機会が多くあります。また、そのタイミングで銀行から資産運用や定期預金などの提案を受けることも、珍しいことではありません。

だからこそ、その場で勧められた商品を焦って購入するのではなく、お金の目的を明確にし、自分に合った資産管理や資産運用を冷静に判断することが重要です。

森 逸行

ファイナンシャルトレーナーFP事務所

代表