アメリカの風刺報道機関である「The Onion」が、陰謀論者として有名なアレックス・ジョーンズ氏が立ち上げたウェブサイトの「InfoWars」をオークションで落札したことを報告しました。InfoWarsを買収した理由を、The Onionが生み出した架空の悪徳企業・Global Tetrahedronのブライス・P・テトラーダーCEOが説明しています。

Here’s Why I Decided To Buy ‘InfoWars’ - The Onion

https://theonion.com/heres-why-i-decided-to-buy-infowars/



The Onion wins Alex Jones' Infowars in bankruptcy auction

https://www.nbcnews.com/news/us-news/onion-wins-alex-jones-infowars-bankruptcy-auction-rcna179936

ジョーンズ氏は2012年に起きたサンディーフック小学校銃乱射事件について、「事件はでまかせだ」という陰謀論を吹聴し、事件の被害者遺族から訴えられました。ジョーンズ氏は裁判所から多額の損害賠償の支払いを命じられ、最終的に破産。裁判所は2024年6月に、サンディーフック小学校銃乱射事件の賠償金を回収するために、ジョーンズ氏の個人資産を売却することを決定しています。これにより、InfoWarsは売却されることとなり、オークションにかけられることとなったわけです。

現地時間の2024年11月13日、Infowarsの設立者であるジョーンズ氏は、「15分前に弁護士とスタッフから、『あなたの破産についてアメリカ管材人と面会したところ、裁判所の命令がなくても事業を閉鎖する予定であると伝えられました』と連絡を受けたばかりです」「何が起こるかわかりませんが、彼らが来て電気を消すまで私はここにいるつもりです」などと語り、ジョーンズ氏の破産によりInfowarsが閉鎖の危機に陥っていることを明かしていました。





翌日の11月14日、The Onionの親会社であるGlobal Tetrahedronのブライス・P・テトラーダーCEOが、The Onion上でInfoWarsをオークションで落札したことをユーモアたっぷりに報告しています。

テトラーダーCEOによると、InfoWarsは「1999年に設立されて以来、陰謀論を拡散し、大衆を洗脳するための貴重なツールとして着実に成長を遂げてきた」そうです。InfoWarsは妄想的な偏執病と、怪しいアンチエイジングハックを巧みに組み合わせることで、すべての人にとって人生をより恐ろしく、より長いものとすることを目指しているそうです。そんなInfoWarsを、テトラーダーCEOは「InfoWarsは真のユニコーンであり、億万長者への国民の支持を喚起すると同時に、ジョン・F・ケネディを暗殺することはできても、人類を月に送ることすらできない無能な連邦国家に対する怒りをかき立てます」と表現しました。

InfoWarsは上記のような手法で消費者の怒りをあおり、社会で最も弱い立場の人々を過激化させるそうです。これは「Global Tetrahedronの心に深く響く価値観」であるとテトラーダーCEOは記しています。さらに、「これほど融通の利く資産と知性の宝庫には、どんな値段でも高すぎるということはありません。しかし、幸運にも、強力な特別利益団体がInfoWarsの不運なオーナー(アレックス・ジョーンズ)を出し抜き、1兆ドル(約160兆円)未満という法外な値段でInfoWarsの売却を強制しました」と語りました。

テトラーダーCEOはInfoWarsの買収について、「誤解しないでください。これは当社にとっての成功であり、世界中の多国籍企業のエリートたちにとっても勝利です」と説明しています。



InfoWarsの今後について、テトラーダーCEOは「買収の余剰資金は将来有望な活路指導者へのビジネススクール奨学金、危機に瀕した第三世界の独裁者に選挙権を与えるための慈善事業、工場に費用をかけずに孤児に安定した工場の仕事を割り当てるため無償プログラムなどの慈善活動に投資されます」「InfoWarsが販売していたビタミン剤やサプリメントは直ちに販売を中止します。1人の寿命を10分でも延ばすことができるのであれば、こうした奇跡の薬を薄めて一般消費者に提供するというのは倫理に反する無駄です。代わりに、InfoWarsの倉庫にある在庫をすべて大きな容器に集め、中身を煮詰めてキャンディーバーサイズの総合ビタミン剤を1個作り、それを1人の役員(名前は挙げません)が食べ、権力を増し、不死になるかもしれないという計画を立てています」と冗談めかして説明しています。

NBC NewsがInfoWarsの状況に詳しい人物から入手した情報によると、The OnionはInfoWarsを閉鎖し、有名なインターネットユーモア作家やコンテンツクリエイターを特集するウェブサイトに再構築する予定だそうです。

サンディーフック小学校銃乱射事件の被害者遺族の弁護士を務めたクリス・マッティ氏は、「我々の依頼人は、真の説明責任を果たすには、InfoWarsの終焉と、ジョーンズ氏がウソや苦痛・恐怖を拡散する能力をなくす必要があると語っていました」「InfoWarsからジョーンズ氏を切り離すことで、遺族とThe Onionは公共奉仕を行い、ジョーンズ氏がさらに害をなす能力を著しく阻害することに成功しました」という声明を出しています。

なお、ジョーンズ氏はInfoWarsの買い手について、配信上で「これまで通り番組の配信を行わせてくれる友好的な支援者」と表現しており、他の入札者は「InfoWarsを閉鎖させようとする悪者」と語っていました。ジョーンズ氏はInfoWarsの買い手からサイトを閉鎖すると通知された場合、代替チャンネルで配信を続けると語っていますが、InfoWarsというブランドを失うことでこれまで程の求心力は得られないとみられています。