なぜ堂安は中東アウェーで活躍できなかったのか? 森保監督の采配に感じた“意図”【前園真聖コラム】
堂安律と南野拓実を同時起用した際の修正点が判明
第2次森保ジャパンで、森保一監督は第1戦と第2戦で大胆なターンオーバーを使い、選手層を広げてきた。
だが、9月シリーズの中国戦とバーレーン戦ではターンオーバーを行わず、スタメン変更は中国戦でゴールを挙げた久保建英を鎌田大地に代えたのみ。果たして、森保監督はどんな狙いを持ってこの先発メンバーの変更を行ったのだろうか。元日本代表MF前園真聖氏はバーレーン戦の監督の狙いをこう分析した。(取材・構成=森雅史)
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僕は、圧勝で終わった中国戦とバーレーン戦で森保監督が「選手の組み合わせを見る」という目的を持っていて、実際に確認できたのではないかと思っています。それが一番分かったのは、久保建英の使い方でした。
中国戦の時は右のウイングバックに堂安律、右のインサイドハーフに久保を配置しました。この2人のコンビネーションは出来上がっていて、何度もポジションチェンジしながらリズムを作っていました。
ところがバーレーン戦で先発した堂安は、中国戦ほど活躍できませんでした。これには理由があります。
バーレーン戦のインサイドハーフは鎌田大地と南野拓実です。そのうち南野は中央でプレーすることが得意なため、あまり外に開きません。これが久保との違いで、久保は右のアウトサイドとしてのプレーも得意なため、堂安と役割を交換しながら相手を翻弄できました。ですが堂安と南野の組み合わせではなかなかポジションチェンジが生まれず、その分、相手がマークしやすかったと思います。
ただ、大切なのはこうやっていろいろな組み合わせを試してみることでどんな問題点が生じるのかを確認しておくことです。今後もし堂安と南野という組み合わせで起用することになった時、どういう修正をしなければならないかは分かりました。
同じようにバーレーン戦では鎌田と三笘薫という組み合わせも試し、こちらは非常に効果的だというのも分かりました。また、鎌田をボランチの位置に下げてプレーさせることで、どういうことができるのかというのも分かったと思います。そうやって鎌田を試したかったからバーレーン戦での久保の出番が少なかったのでしょう。
上田綺世は1トップとして周囲を上手く活用
そして選手個人の面に目を向けても、いろいろなことが分かりました。
上田綺世は1トップとして周りを非常に上手く使っていたと思います。それでも中国戦ではゴールがなかったので、バーレーン戦で2ゴールを挙げたのは本人としても良かったでしょうし、ストライカーが決めるとチームも調子の波に乗れます。ますます期待できると思います。
鎌田はクレバーなプレーを見せてくれました。動き出し、ボールを受けに行く動き、ポケットを獲りに行く動作など、随所にセンスの良さを感じさせてくれました。何より周りがよく見えています。
南野は中国戦で2点を奪っていたのでバーレーン戦でも先発させたのだと思います。ただ組み合わせの問題でバーレーン戦では目覚ましい動きを見せることができませんでした。ですが、その点に関しては、三笘とのコンビネーションは上手くいっていましたので、外に開いてくれる選手と組めば機能するというのが明確に分かったことが良かったと思います。
守田英正がバーレーン戦では2ゴールを挙げて脚光を浴びましたが、それは遠藤航がいて、安心して前に出られたからだと思います。これが守田と田中碧とのコンビなら、むしろ守田のほうがより守備を意識したのではないでしょうか。そういう意味では守田の活躍を讃えつつも中盤を底支えした遠藤のことを忘れてはならないでしょう。遠藤のバランスの取り方は絶妙でした。
そして伊東純也。本人にとっても日本代表にとっても復帰は大きなものでした。3バックのウイングバックとして、攻撃で貢献するのはもちろん、守備でも献身的な働きを見せてくれました。三笘に加えて伊東の存在があることで、両方のスピードがより生きてきます。チームにとって大きな武器がこの最終予選に間に合ったことが本当に良かったと思います。(前園真聖 / Maezono Masakiyo)