SNSでは多種多様なユーザーからさまざまな情報が発信され、その情報が真実なのか、誰が発信しているのかといった重要な情報が無視されたまま拡散されることが多々あります。こうした無責任な情報拡散は選挙という国の根幹をなす活動にも影響を与えており、とある調査では、たった10個のSNSアカウントが偽情報を含む投稿を6万件以上発信し、1億5000万回も閲覧されている可能性があることがわかっています。

Bot-like tweets seen 150 million times ahead of UK elections | Global Witness

https://www.globalwitness.org/en/campaigns/digital-threats/investigation-reveals-content-posted-bot-accounts-x-has-been-seen-150-million-times-ahead-uk-elections/

イギリスで2024年7月4日に選挙が実施されることを踏まえ、NGOのグローバル・ウィットネスは選挙期間中に政治的メッセージを拡散しているTwitter(X)アカウントを調査しました。

調査チームは、イギリスの総選挙において議論の中心となっている2つのトピック「気候変動」と「移民」に焦点を当て、これらのトピックに関連する特定のハッシュタグを使用した投稿をすべて収集しました。そして、これらのハッシュタグをつけて投稿しているアカウントがボットである可能性を探り、ボットの可能性ありと疑われたものだけを集計したとのこと。

アカウントがボットであると見なす基準は、1日に膨大な量を投稿するアカウントや、自分のコンテンツはほとんど書かずにいつも他人の投稿を拡散しているアカウント、ハンドルネームの末尾が数字の長い文字列(デフォルトID)になっているアカウント、プロフィール画像がないアカウント、プロフィール画像がAI製またはウェブ上の他の場所から盗用された形跡のあるアカウントなど。調査チームはこれら複数の要因を組み合わせて判断しました。例えば、フォロワーが1000人未満で、1日平均60回以上投稿し、そのうち90%が他アカウントの投稿をリポストするようなアカウントがボットの可能性ありと判断されます。



調査チームが、リシ・スナク首相が解散と総選挙の実施を発表した2024年5月22日以降の投稿を調査した結果、ボットの可能性があるアカウントが10件見つかり、選挙が公示されてからの数週間で合わせて6万回以上投稿していることが判明したとのこと。これらの投稿は1億5000万回以上表示されたと推定されるそうです。

こうしたアカウントのほとんどはあからさまに政党を意識した投稿を行っており、単に政治的な意見を表明するだけでなく、特定の政党に対する賛否を明確に表明していることもありました。例えば、保守党に投票しないよう促したり、反労働党をうたいリフォームUKへの投票を促したりするものです。

アカウントの中には、イスラム教徒に過激で暴力的なイメージを植え付けたり、同性愛嫌悪を広めたり、気候変動は「デマ」であり、ワクチンは「大虐殺」を引き起こし、国のトップが移民を受け入れて白人を減らそうとする「大交代説」は事実であるなどの陰謀論を広めたりするものもあったとのこと。



調査チームは「こうしたアカウントが横行する問題の責任はソーシャルメディア企業にあります。ソーシャルメディアは人々を閉鎖的で有害な会話に誘導できるよう設計されています」と述べました。

Xでは、市民活動の阻害や人種や宗教などを理由としたヘイト行為を禁止するポリシーを制定していますが、調査チームは「このポリシーが十分に実施されていないことが問題」と指摘。Xに対して、今回あらわになったボットのリストがポリシーに違反していないか調査し、民主的な議論を言論操作から守るためにもっと投資するよう求めました。