スキンケアについて無頓着なのはもちろん、間違ったケアも老化につながる。真夏を迎える前に、ケアのポイントについて再確認したい(写真:Fast&Slow/PIXTA)

女性の化粧品市場は成熟しきったと言われて久しいが、一方で規模はまだ小さいものの、右肩上がりで成長しているのが、男性の化粧品市場だ。


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男性化粧品といえば整髪料が主流だったが、戦後は資生堂の「MG5」やマンダムの「マンダムシリーズ」など、時代を反映する男性用総合ブランドが続々と登場。2003年には百貨店で展開する資生堂の高級コスメ「SHISEIDO MEN」が欧州でローンチされ、翌年、日本に上陸した。

この頃から大手外資系ブランドもメンズのスキンケアに力を入れ始め、現在はまさに百花繚乱の状態。スキンケアからメイクまで幅広くアイテムがそろっている。

「スキンケア」は、なぜ男性も必要なのか?

とくにスキンケアアイテムは、今や若い男性たちが日常使いするものとなっており、メイクをする男性もいる。中高年層も男性のスキンケアアイテムの購入が増えているという調査はあるものの、人によってかなり意識の差があるのが現状だ。

まだ「自分には関係がないもの」と認識している男性は一定数いる。しかし、スキンケアは、実は年齢性別を問わず必須と言ってよい。とくに肌へのダメージが大きい真夏を迎えようとしている今はなおさらだ。

「基礎化粧」という言葉があるように、これまでスキンケアは「メイク前の準備段階」として捉えられてきたが、そもそも人体において皮膚は腸に次ぐ、表面積を持つ第2の免疫器官だ。バリア機能を有し、外部から有害なウイルスや細菌の侵入を阻み、体内の大切な水分を逃さない役割がある。

つまり、肌の手入れは、「健康を維持するためのメンテナンス」であると言える。

では、いったい何をすればよいのか。スキンケアの基本は、3つ。「洗う」「保湿する」「守る」――これに限る。

まず「洗う」だが、多くの男性は洗い方が乱暴だ。洗顔料に少量の水を混ぜ、手のひらでゴシゴシこすって、洗えたと勘違いしている。鼻や頬骨は隆起していて、小鼻の脇は皮脂分泌が活発なので汚れがたまりやすい。そんな状態なのに、手のひらの「面」でこすっても汚れは落ちない。

また、ガス台の油汚れにいきなり原液の洗剤をかけてこすっても汚れが広がるばかりで落ちないのと同様で、皮脂とホコリなどが混じった汚れは、最初にぬるま湯で1分ほど予洗いをして緩めたい。

その後、洗顔料はこんもりと盛れるほどにしっかりと泡立て、たっぷりの泡の表面張力を使って汚れを絡め取っていこう。つまり、手のひらの「面」で泡を潰してしまっては意味がなく、泡が隅々まで行き届くよう、指の腹の「点」を使ってくるくると円を描くようにして洗うのが大切だ。

また、皮膚はこすれに弱いので、強くこすれば刺激となって肌荒れし、色素沈着する。そんな刺激が長く続けば、合わない靴を履いてかかとの皮膚が厚くなるように人体は防御のためにやむなく角質を厚くするので、肌はゴワついてくる。そのような理由から、「やさしく洗う」のも大きなポイントとなる。

洗顔料は、オルビスの人気シリーズ「オルビス ミスター」の「フォーミングウォッシュ」が、スキンケア初心者の男性でも使いやすいだろう。毛穴よりも小さい皮脂吸着微粒子と、汚れを吸着してくれるモロッコ溶岩クレイを配合したもので、豊かな泡立ちで洗いやすい。オイルや香料、着色料など肌への負担となるものを含んでおらず、「乾燥&テカリ」の対策が同時にかなう。泡はそのままシェービングにも使えて便利だ。


「オルビス ミスター フォーミングウォッシュ」(医薬部外品、120g、1650円〈税込み〉)/オルビス(写真:オルビス提供)

肌がベタつく男性ほど「保湿」が必須

次に「保湿」。皮脂は前述したようにバリア機能の一端を担っているが、酸化すると刺激になるので落とさなければいけない。ただ、どんなに丁寧に優しく洗っても、皮脂だけでなく肌に大切な潤いまで奪ってしまうので、保湿が必要になる。

多くの中高年男性たちは「皮脂=敵」だと勘違いし、味方である皮脂を敵視して躍起になってこすって肌を痛めつけ、潤いは補給しない。愚の骨頂だ。

中高年になると「肌がベタつく」と思う人は多いかもしれないが、実は男性の皮脂分泌量は20代〜60代であまり変わらないと言われている。その代わり、年齢を追うごとに水分蒸散量が増えて肌内の水分が減るから、相対的に皮脂が多くなったと感じるのだ。

必要なのは、水分を補給して若い頃のような油分とのバランスを取ることだと理解してほしい。

だから、保湿の基本は「化粧水で潤いを与え、その後に乳液やクリームでフタをする」、この2段階を踏むことが重要。とくに年齢を重ねるほど、丁寧にケアするのが望ましい。20〜30代ならばオールインワンのコスメでも足りるかもしれないが、40代以降はきちんとこのステップを守るのがベターだ。

保湿については、男性から支持を集めているブランド「バイタリズム」のアイテムはダメージ肌でも使いやすい。シャンプーが人気という印象が強いかもしれないが、スキンケアシリーズも優秀だ。

化粧水の「エッセンスローション」と保湿乳液の「モイストミルク」は、保水有効成分「ヘパリン類似物質」や肌荒れに作用する「グリチルリチン酸ジカリウム」、肌を明るくする美白有効成分「トラネキサム酸」などを配合しており、紫外線やヒゲ剃りでダメージを負った男性の肌に潤いを与えてくれる。


左:「バイタリズム 薬用 プレミアム エッセンスローション」(医薬部外品、100ml) 右:「バイタリズム 薬用 プレミアム モイストミルク(医薬部外品、80ml) 各3980円(税込み)/ヘアジニアス・ラボラトリーズ (写真:ヘアジニアス・ラボラトリーズ提供)

日頃ベタつくと思っている人でも、試しにほんの1週間、保湿ケアをしてほしい。肌はバリア機能を守るために過剰に皮脂を分泌しなくなるので、赤みやかゆみが落ち着き、ベタつきも軽減されるはずだ。さらに油分と水分のバランスが保たれるようになれば、少々時間はかかるが、開いていた毛穴も目立たなくなってくるだろう。

「光対策」を万全にして、ムダな老化を防ごう

最後に「守る」という重要ステップがある。

これは日焼け止めを塗ることだが、夏だけではなく通年で対応してほしい。日焼け後のシミだけにとどまらず、シワやたるみなどの老化の原因の9割以上は、紫外線や近赤外線などの「光」によるものと判明しているからだ。

中でも地表に届く紫外線は主に2つあり、エネルギーが強く、表皮に影響を及ぼす「紫外線B波」はサンバーンという火傷を負わせる。無防備に日焼けすると赤くなり、皮むけをはじめ、ひどいときは水ぶくれや発熱などを引き起こすのは、この紫外線B波の仕業だ。

そしてもう1つ、エネルギーは弱いものの表皮の内側にある真皮層まで届く「紫外線A波」は、細胞核のDNAを破壊し、深刻な被害をもたらす。例えば、シミやシワ、色素沈着にたるみ、果ては皮膚ガンにもつながりうる。

筆者が使いやすいと感じている日焼け止めは、男性用スキンケアブランド「クワトロボタニコ」の「ボタニカル オイルコントロール & UVブロック」だ。

まず、SPF50+、PA++++と、紫外線のB波からもA波からも肌を強力に守ってくれるのに皮膜感のないジェル状で心地よいのだ。乾燥や毛穴トラブルにも対処する4種の植物エキスに加え、2種のUVダメージケア成分を配合し、美容液感覚で使える。皮脂吸着パウダーが配合されており、夏場でもサラッとした見た目をキープできるのもありがたい。白浮きせず、汗や水にも強いウォータープルーフなので、日常使いからゴルフなどレジャーシーンにも対応する。


「クワトロボタニコ ボタニカル オイルコントロール & UVブロック」(50g、2475円<税込み>)/リ・ブランディングジャパン(写真:リ・ブランディングジャパン提供)

また、注意したいのは紫外線だけではない。「近赤外線」も波長が長く、肌の深層にまで届いて肌の弾力を保つ「コラーゲン」や、それを支える「エラスチン」にダメージを与え、たるみにつながる。紫外線のように目に見える反応がないため見過ごされがちだが、その影響は大きい。

さらに、PCやスマホ、LED照明などから発せられる「ブルーライト」も真皮層にあるコラーゲンなどを作る源の「線維芽細胞」にダメージを与える。そして夜間に浴び続けると自律神経を乱し、皮膚のターンオーバーが正常に行われなくなる。

昨今はこうした近赤外線やブルーライトを防ぐ日焼け止めも出てきているので、アイテムを選ぶ際の参考にしてほしい。

健康を守るためのルーティン、それがスキンケア

ひと昔前は「男が見た目を気にするなんて」といった男性への差別意識や同調圧力があり、日焼け肌が凛々しくてカッコイイというイメージもあったが、そうした感覚は、今は昔。Z世代など環境意識の高い若者は、何の対策もせずに日焼けしている人を「知識不足で、自分の健康を守れない気の毒な人」として見ることもあるという。

スキンケアは「ときおり行うもの」ではなく、「毎日のルーティン」にして初めて効果が出るもの。年を取ってから新しい習慣を加えるのは大変なので、「健康を守るための大切な行為」と認識できたなら、今すぐ始めるのが得策だ。

(藤村 岳 : 男性美容研究家)