東大生語る「長い入試問題ほど簡単」腑に落ちる訳
(漫画:©︎三田紀房/コルク)
記憶力や論理的思考力・説明力、抽象的な思考能力など、「頭がいい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。
その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当の西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時に東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う「チームドラゴン桜」を作っています。
そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載(毎週火曜日配信)。連載を再構成し、加筆修正を加えた新刊『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』が、発売後すぐに3万部のベストセラーとなっています。第124回は、科目問わず年々長くなる大学入試問題をどう解けばいいのか、コツをお話しします。
ページ数・問題量がどんどん増える
最近の大学入試問題は、科目を問わず、問題文がどんどん長くなっています。
センター試験から共通テストに移行し、問題のページ数・問題文の量は増える一方です。数学の問題ですら、とんでもなく長くなっています。数学Aの試験では、2006年のセンター試験と2021年の共通テストを比べると文字量が「5倍」になっているという話もあるほどです。
そうした傾向を見て、多くの受験生は「最近の大学入試問題は、昔よりも難しくなった」と口にします。実際に文章量が増えたことで、時間が足りなくなってしまう受験生も続出しています。
しかし「文章が長くなっている」から、「問題が難しくなっている」とは一概に言い切れない部分もあります。
みなさんは、問題文が長い問題と短い問題、どちらのほうが簡単だと思いますか?
おそらく多くの人は、「短い問題のほうが簡単だ」と考えると思いますが、実際にはそれは正しいとは言い切れないところがあるのです。
このことについて『ドラゴン桜』の漫画の中で解説されているシーンがあるので、まずは漫画をご覧ください。
※外部配信先では漫画を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
(漫画:©︎三田紀房/コルク)
(漫画:©︎三田紀房/コルク)
いかがでしょうか? この漫画に書いてあるとおり、東大生は数学の問題を解くときには、短い文章量の問題より、長い文章量の問題から先に手を付けます。
では、この漫画で書いてあることは本当なのか、みなさんにも知ってもらうために、実際に出題された東大入試の文章を読んでいただきます。
この問題は、その年の数学の問題の中でいちばん長かった問題です。
正八角形の頂点を反時計回りにA,B,C,D,E,F,G,Hとする。また、投げたとき表裏の出る確率がそれぞれ1/2のコインがある。点Pが最初に点Aにある。次の操作を10回繰り返す。
操作:コインを投げ、表が出れば点Pを反時計回りに隣接する頂点に移動させ、裏が出れば点Pを時計回りに隣接する頂点に移動させる。
例えば、点Pが点Hにある状態で、投げたコインの表が出れば点Aに移動させ、裏が出れば点Gに移動させる。
以下の事象を考える。
事象S:操作を10回行った後に点Pが点Aにある。
事象T:1回目から10回目の操作によって、点Pは少なくとも1回、点Fに移動する。
(1)事象Sが起こる確率を求めよ。
2019年東大文系数学 第3問 (1)
超長い問題文どうやって解く?
なんだかいろんなことが書いてあって、難しそうですよね。でもこの問題、よく考えて図を書いてみると、こうなります。
(図:筆者作成)
点Pが、正八角系の頂点を移動していく、というだけの話なのです。こうやって理解すれば瞬時に理解できる話であり、(1)も東大の入試とは思えないほど簡単なのですが、問題を見て「難しそう」と考えてしまうと、解けなくなってしまいます。
もっと言えば、この問題文が長くなっている要因は「例えば、点Pが点Hにある状態で、投げたコインの表が出れば点Aに移動させ、裏が出れば点Gに移動させる。」といったように説明が加わっているからですよね。
問題文が長いのは、多くのヒントが入っているからだ、ということについて納得できましたか?
多くの受験生は、長い分量の問題を見てうんざりしてしまいがちです。長い文を読むのは疲れるし、時間もかかる。しかし、それは先入観からそういう気持ちになってしまっているだけの場合もあります。「長い」=「難しい」と考えず、ぜひ「長い」=「簡単」と考えてもらえればと思います。
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(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)