モスクワで2024年6月14日、ロシアの外務省幹部との会議で発言するプーチン大統領=ロイター

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 ロシアのプーチン大統領は14日、ロシア外務省の会議で演説し、ウクライナとの和平交渉の条件として、ロシアが一方的に併合宣言したウクライナ4州からの同国軍の完全撤退と、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟する方針について撤回を宣言すること、米欧の対ロシア制裁の全面解除などを挙げた。

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 プーチン氏が具体的な交渉条件を明言するのは初めてとみられ、15日にスイスで始まる「ウクライナ平和サミット」を前に、米欧などを揺さぶる狙いとみられる。ただ、自国領土からのロシア軍の撤退を求めるウクライナには受け入れられない条件だ。

 プーチン氏が言及した4州は、2022年9月に一方的に併合を宣言したウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州、中南部ザポリージャ州、南部ヘルソン州。全域の占領はしていないが、ロシアへの帰属について「議論の余地はない」とした。

 ウクライナ軍の撤退開始とNATO加盟放棄が公式に通告されれば、ロシア側は直ちに停戦を命令し、交渉を開始すると主張している。「紛争の凍結でなく、最終的な決着について話している」とし、ウクライナや米欧が拒否すれば、「流血が続くのは彼らの責任であり、交渉開始の条件も別のものになるだろう」と警告した。

 プーチン氏が示した条件について、ウクライナ側は強く反発した。ポドリャク大統領府長官顧問は14日、「何度も聞かされている『標準的な侵略者のセット』だ」と一蹴。「領土をよこせ」「主権と主体性を諦めろ」「無防備になれ」と押しつけているとし、「国際法に対して非常に攻撃的なものだ」と批判した。さらに、「幻想を捨て、常識外れの『ロシアの提案』を真に受けるのをやめよう」と訴えた。

 NATOのストルテンベルグ事務総長も同日、「これは和平の提案ではなく、さらなる侵略の提案だ。ウクライナの領土から撤退すべきはロシアだ」と非難。「戦争が始まった時からロシアの目的はウクライナの領土を支配することで、この提案はロシアが戦争の目的を達成することを意味する。露骨な国際法違反で、NATOウクライナを支援し続ける理由はそこにある」とした。