Image: Microsoft

パソコン選びのスペックでよく目にするのが、CPU(Central Processing Unit)。パソコンの脳味噌であり、ほとんどのタスク処理を担当するやつ。

あとはGPU(Graphics Processing Unit)も。主にグラフィックス(画像や映像)処理をするパーツで、3Dレンダリングやゲームで存在感を発揮します。GPUはCPU自体に内蔵されている場合もあれば、単体で独立している場合(ディスクリートGPU、dGPU)もあります。

これに加えて、最近よく耳にするようになったのがNPU。…NPUってなんです?

AI時代のNPU

NPU=「Neural network Processing Unit」。去年から急激に耳にするようになった気がします。去年といえば、AIスマホやAIPCなんて言葉を頻繁に聞くようになったタイミングです。

AIが現在のテック業界において、最も関心とコミットが高い分野であることは疑いようがありません。先日のGoogle(グーグル)のデベロッパカンファレンス「Google I/O」でも、120回ほど「AI」という言葉が連発されたことを思えばそれは明らか。

「AIって何回言った?」=120(+α)。#GoogleIO でインパクトが強かった3つの数字

ソフトでもハードでも、ありとあらゆるものに拡大導入されていくAI。これまた先日のMicrosoft(マイクロソフト)の発表会では、「Copilop+ PC」なる新ジャンルのAI強化型パソコンも登場しました。

AI強化Surface登場。マイクロソフト発表「Copilot+ PC」まとめ #MicrosoftBuild

AIパソコンに欠かせないもの、それがNPUです。

NPUとは? TOPSとは?

Photo: Kyle Barr - Gizmodo US

冒頭にCPUとGPUを挙げましたが、NPUは特定タスクを行なうという点ではGPUに近い存在。ただ、独立して存在するGPUとは異なり、少なくとも現状ではCPUに搭載されています。

何を専門に行なうのかというと、マシンラーニング(機械学習)のアルゴリズムの演算処理。わかりやすくいうと、AIタスクに特化したプロセッサーです。AIタスクはそれに必要なさまざまなリクエストを小さく分割し、同時に処理する並列処理が行なわれます。他のシステム処理を邪魔することなく、ニューラルネットワークの要求に応えるために特別に設計されている、それがNPU。

NPUの性能、処理速度を測るのに使われるのがTOPS。これは「Trillions of Operations Per Second」の頭文字を取ったもので、1秒あたり何兆回の演算をできるかという指標です。現状テック企業はこのTOPSの数字で、ニューラル処理の力量を比較、判断、競い合っています。

CPUやGPUには、やれ処理スピードだ、コア数だ、テラフロップスだ、クロック周波数だと、いろいろな指標がありますが、NPUは現状TOPSのみ。

GPUとNPUをまとめたGPNPUというものもありますが、とりあえず今はNPUのTOPSを考えておけばよし。そのうち簡単なAI処理能力をもつAIパソコンと、TOPS力の高い重いタスク処理もできるAIパソコンで、また細かく別れていきそうですが、とりあえず今はNPUのTOPSを考えておけばよし。

NPUって最近生まれたの?

Screenshot: Apple / YouTube

昨年から一気に色気づいてきたAIスマホ&AIパソコン。NPUも去年生まれたのかというとそうではなく、もう少し前からあります。

パソコンだけでなくスマートフォンにも搭載されるNPU。例えばGoogleがNPUじゃAI能力じゃと言い始めたのは、2017年リリースのPixel 2のころ。Huawei(ファーウェイ)もNPU搭載スマホのMate 10を2017年、AsusはZenphone 5を2018年にリリース。

そのころからスマホにおけるAI機能を推す傾向はあったものの、消費者としては今よりもっと?マーク。懐疑的な印象を持っていました。そもそも当時のNPUは、今ほどパワフルでもありませんでしたし。

スマホはもちろんパソコンも、去年より前からNPUを搭載していました。Apple(アップル)がIntel(インテル)からARMベースのMチップに移行を始めた2020年、すでにニューラル機能に対応していました。

M1チップは11TOPS、M2チップは15.8TOPS、M3チップは19TOPS。先日発表されたばかりの新型iPad Proには、MacBookを差し置いて最新チップのM4が搭載されたと大きな話題になりましたが、このM4チップではニューラル機能が大きく伸びてなんと38TOPS。

ハード>ソフト

NPUの狙いは、端末内のAIタスク処理(AI生成画像でもAIチャットbotでも)をCPUやGPUから分けることで、パソコン全体の動作を重くせずにAI機能をやりましょうというところにあります。

問題…というか課題は、そのNPUを最大限活用するために、ユーザーが本当に求めるAI機能を、まだ模索している段階にあるということです。

ここ数年、米Gizmodo編集部が大手チップメーカーに取材するたびに耳にしたのは、ハードウェアメーカーがソフトウェアメーカーの需要を上回ったと感じているということ。

これ、長い間逆だったのです。つまり、ソフト側が消費者向けハードの限界をグイグイと押し、チップメーカーがなんとかそこに追いついていた(追いつけとハッパかけられてきた)という長年の構図が、AI時代に入って変わってきたということです。

2024年、端末内で処理可能なAIタスクはまだ一部です。Qualcomm(クアルコム)やIntelのチップのAIデモは、Zoomの背景をボケ加工するくらい。リアルタイム字幕やAI音楽生成や画像生成、AIチャットボットに対応したアプリなどはあるものの、誰もがNPU能力の高い最新端末が欲しくなるようなAI機能は、まだ一般的ではないというのが今の段階です。

今できるのは、Googleならば、自社AIシリーズの中のミニサイズ版Gemini Nanoを、Pixel 8やPixel 8aに搭載すること。Samsungならば、Galaxy S24のみで使えたAI機能を、それ以前の機種にも拡大対応すること。年内にはスマートウォッチにも拡大する予定なこと。以前の端末でどこまでAI能力が開花するかは、ベンチマークしてみないと分かりませんが、2021年くらいまでの端末ならそこそこは使えそう。

端末内でのAI処理は、まだまだ一般消費者向けマシンでは処理能力が追いつかず。Microsoft、OpenAI、Googleは、NvidiaのAI進化版GPUを山ほど積んだデータセンターにて、多くのAI処理(Gemini AdvancedやGPT4o含むより高性能なAI)をこなしています。

このプロセスには、コストもリソース(電力・水など)が膨大にかかり、結果としてこれらクラウドで処理するAIを利用するユーザーは、有料ユーザーである必要があります。逆に考えれば、端末内でAIタスク処理ができるようになれば、ユーザーにも環境にも優しくなるということなのです。つまり、NPU性能アップが重要なのですね。

Apple 13インチiPad Pro(M4):Ultra Retina XDR ディスプレイ、 512GB、横向きの 12MP フロントカメラ/12MP バックカメラ、LiDAR スキャナ、Wi-Fi 6E、Face ID、一日中使えるバッテリー - シルバー
254,800円
Amazonで見る
PR

2024年のWindows PCは「AI PC」を選ぶべき。この8台がおすすめ