2024年6月1日、Q&AサービスのStack Exchangeへ「ボイジャー1号」に関する質問が投稿されました。この質問に、物理学の専門家が回答しています。

electromagnetic radiation - How many photons are received per bit transmitted from Voyager 1? - Physics Stack Exchange

https://physics.stackexchange.com/questions/816698/how-many-photons-are-received-per-bit-transmitted-from-voyager-1



投稿された質問は「2024年現在、ボイジャー1号は地球から約1光日の距離にあり、まだ無線交信を続けています。ボイジャー1号が地球にメッセージを送信するとき、1ビットあたり何個の光子が送信され、そのうち何個が受信されるのでしょうか?」というものでした。

質問者は質問の意図についてソーシャルサイトのHacker Newsで補足しています。それによると、質問者は量子誤り訂正に関連する仕事をしており、古典的なシステムで使用されている繰り返し符号(反復符号)の例を知りたがっていたとのこと。量子誤り訂正とは、量子計算機が外部からのノイズにさらされることで起こりうるエラーの訂正を行うことで、繰り返し符号とは、送信されるビットを繰り返して冗長化することで誤りを訂正する方式のことを指しています。

上記の質問に回答したのが論理物理学者のジョス・ベルガーヴォート氏。ベルガーヴォート氏は、受信側が70m級のアンテナを使用していて、ボイジャー1号の送信周波数が8.4GHzであり、送受信時の損失は計上しない場合を想定して以下の答えを示しました。

ボイジャー1号は160ビット毎秒のデータを送信し、23Wの電力を消費します。これは、8.4GHzの周波数では1秒当たり4×10^24個の光子、または1ビット当たり約2.6×10^22個の光子を送っていることになります。



ボイジャーのアンテナの直径は3.7mで、ビームを形成して主に地球に向けて電波を送信します。このアンテナ利得は(πd/λ)^2と表され、電波を効率的に集束させることができます。しかし、現在の地球からの距離(R=235億km)では、到達する電波の強度はわずか3.4×10^(-22)W/m^2しかありません。そのため、直径70mの受信アンテナで電波を収集しても、わずか1.3aW(1.3×10^(-18)W)程度にしかならないそうです。

Eφで割ると、受信できるのは1秒あたり24万個の光子、すなわち1ビットあたり1500個の光子です。ボイジャー1号は8.4GHzの他に2.3GHzを使用しますが、仮に使用周波数を2.3GHzとすると、光子の数は1ビット当たり415個に減少します。ただし、あくまでもこれは理論値であり、実際に送受信する際の損失を考慮すると、おそらくこの半分にしかならないとのことです。