スペイン東部の都市・ビリェーナで1963年に発見された金や銀などを材料とするティアラや指輪、ブレスレットなどの宝飾品は「ビリェーナの財宝」として知られています。このうちの2つの宝飾品に、地球外から飛来した隕石(いんせき)に含まれる鉄が使用されていることが明らかになりました。

Vista de ¿Hierro meteórico en el Tesoro de Villena? | Trabajos de Prehistoria

https://tp.revistas.csic.es/index.php/tp/article/view/929/1110



Strange Metal From Beyond Our Planet Found in Ancient Treasure Stash : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/strange-metal-from-beyond-our-planet-found-in-ancient-treasure-stash

鉢や瓶、ブレスレットなど計59点の宝飾品からなるビリェーナの財宝は、青銅器時代後期から鉄器時代初期の間に製造されたと考えられています。



by manuel m. v.

スペイン国立考古学博物館のサルバドール・ロビラ・ローレンス氏らは、ビリェーナの財宝に含まれる直径4.5cmの鉄と金からなる半球を分析したところ、この宝飾品に使用される金の部分が紀元前1500年から紀元前1200年に作られたことが明らかになりました。



しかし、ヨーロッパでは紀元前850年頃に鉄器時代が始まるまで、鉄鉱石から鉄を精錬する技術がなく、青銅器時代さなかの紀元前1500年から紀元前1200年の間に金細工と鉄細工を合わせた宝飾品が作られたことがひとつの謎となっていました。

同様に、ビリェーナの財宝からは鉄製とみられるブレスレットも発見されています。



ローレンス氏らはビリェーナ市立考古学博物館から許可を得て、これらの宝飾品のさらなる分析を実施。蛍光X線分析とレーザーアブレーションICP質量分析を行ったところ、これらの宝飾品のニッケル含有量が5.5%から6.9%であることが判明しました。

このような高いニッケル含有量の鉄鉱石は地球上に存在しないため、これらの宝飾品に使われた鉄は、鉄とニッケル合金からなる隕石である「鉄隕石」である可能性が示唆されました。

今回の発見によって、鉄を洗練する技術が未発達の青銅器時代では、貴重な素材である鉄隕石によって鉄を入手していたことが明らかになりました。



研究チームは「調査の結果、ビリェーナの財宝に含まれる2つの宝飾品が鉄隕石由来であることが示唆されました。今回の発見では、これらの宝飾品が鉄鉱石による鉄の精錬が始まる以前の青銅器時代後期に製造されたことを物語っています」と語っています。また、今回の分析に使われた宝飾品は腐食が進んでおり、結果が不正確である可能性が指摘されています。そこで研究チームは「この発見を確固たるものにするのに役立つ、より詳細なデータセットを得られる非侵襲性の分析技術を適用して再度調査を実施する予定です」と述べました。