“ひょっこり男”こと成島明彦容疑者(関係者提供)

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「例の金髪、サングラス、黒ずくめの服装で自転車に乗り、この周辺をうろちょろしていたよ。すっかり有名人だから目撃情報はいろいろなところから入ってくる。でも、また犯行を繰り返すとは思わなかった。なんにも懲りてないじゃん」

【写真】対向車にフェイントをかける容疑者

 と話すのは千葉県柏市の容疑者の地元に住む男性。

 皮肉交じりに有名人と言われたのは同市在住の成島明彦容疑者(36)。埼玉県桶川市で2020年3〜10月にかけ、ドロップハンドルのロードレース用自転車で対向車の前に飛び出しフェイントをかけるなど危険なあおり運転を繰り返し、『週刊女性』やワイドショーをはじめ多くのメディアが逮捕を報じた“ひょっこり男”である。

 あれから約4年、地元・柏市に戻っていた成島容疑者は再び自転車で対向車の通行を妨げたとして千葉県警柏署に道路交通法違反(妨害運転)の疑いで逮捕された。

 市内の実家周辺から離れたエリアの木造賃貸アパートで1人暮らしだった。

「5月9日午前7時半ごろ、複数の私服警察官が容疑者の部屋をノックし、“起きて〜”などと呼びかけていた。部屋から出てこなくて30分ぐらい手こずっていたようだったが、最後は覆面パトカーにおとなしく乗せられていった」(目撃した近隣住民)

42件の通報が

 県警によると、4月15日午後0時39分ごろ柏市松ケ崎の市道を自転車で走行中、対向車線の50代女性が運転する乗用車に接近し、衝突回避の措置をとらせた疑い。

 警察の取り調べに対し、

「普通に自転車に乗っていただけで、対向車に危害を及ぼすような運転はしていない」

 と容疑を否認している。

「柏市や我孫子市で今年1月以降、類似事案の通報が計42件あった。例えば“自転車が対向車線にはみ出して妨害していた”とか“サングラスをかけた男が自転車で蛇行運転をしている”など。通報を受けて現場に急行しても、自転車はどこかに走り去ったあとだったが、関係者の協力を得られ、ドライブレコーダーや周辺の防犯カメラの映像解析などから逮捕に至った」(捜査関係者)

 警察への通報は1月に4件、2月6件、3月14件、4月12件、5月は8日までに6件とおさまる気配がなく、重大事故を引き起こす前に検挙できたのは幸いだった。同署は同じような犯行を繰り返していた可能性があるとみて捜査を進めている。

 成島容疑者が自転車であおり運転を始めたのは'18年ごろとみられる。当時居住していた埼玉県桶川市などで蛇行運転や飛び出し走行をして'19年に最初の逮捕。「運転手の驚く顔が見たかった」などと供述し、'20年2月にさいたま地裁で道交法違反罪などで懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を受けた。

 判決から1か月もたたず犯行を繰り返し同年10月にまた逮捕。'21年5月に同地裁は「嫌がらせで快感を味わいたいという動機は身勝手きわまりない」として道交法違反罪などで懲役8月と罰金20万円の実刑判決を言い渡した。

迷惑行為はほかにも

 成島容疑者は公判で、やめないといけないとわかっていながら「スッとする欲が勝った」などと述べた。

 社会規範から逸脱していたのは自転車の運転だけではない。桶川市のアパートで1人暮らしをしていたころは、犯行をとがめた住民に石を投げつけたり、胸ぐらをつかんで悪態をついた。夜中に大音量で音楽をかけ、くわえタバコのガニ股で歩き、灰をアパートの通路に捨てた。

 柏市に戻ってからは、目立つ迷惑行為は確認されていない。

「深夜の騒音はなかった。変わった振る舞いといえば、夜でもサングラスをかけ、通行する車も人もいない道でも自転車で蛇行運転をしていたことぐらい。ただ、曜日が決められているゴミ出しのルールは守らなかった。マクドナルドの包装ゴミばかりだったから、よほどハンバーガーが好きなんだろう」(近所の住民)

 愛車も変わった。桶川市で乗っていたのはロードレース用自転車だったが、

「容疑者が犯行に使ったのはいわゆるママチャリだ。電動アシスト機能はついていないし、スピードが出るように改造したものでもない」(前出・捜査関係者)

 実家には戻らなかったのか。

 幼少期から両親と姉の4人家族で賃貸アパートの一室で暮らしていた。両親のケンカは激しく、皿や鍋などが外まで飛んできた。青年期に姉は自立し、母親も出て行ったため、父子だけが残った。

「明彦くん(成島容疑者)が帰る実家はもうありません」

 と話すのは地元の男性。

 実家を訪ねてみると、かつて一家が暮らしたアパートはなく、新しい家を建てるための基礎工事が進んでいた。

「1年以上前にアパートは取り壊されて更地になり、数か月前から工事が始まりました。最後まで入居していたのが容疑者の父親。どこへ転居したかは聞いていません」(近所の女性)

 複数の近隣住民によると、容疑者は前回逮捕で刑に服した後、実家には戻ってこなかったという。

父親は「愛のムチ」

 前回の逮捕当時、『週刊女性』が父親に容疑者の更生について尋ねると、

「(罪を償って出所しても)家には入れないよ。愛のムチをふるう。いまでも“かわいい”と思っているから」

 とあえて敷居をまたがせない覚悟を述べていた。

 どうやら、ムチの効果はなかったか。

 前回の逮捕当時、容疑者の知人や同級生、地元住民らに話を聞いたところ、少年時代の生育環境について同情する声が大きく、歪んだ人格形成の一因との指摘があった。

 まず、家族でレジャーや外食に出かけることはなく、「両親とも子どもには関心がない様子で“放置子”だった」(周辺住民)という。常識が身につかず、自宅にトイレがあるのに庭先で用を足した。イタズラを注意されると素直に謝れず、隠れてから「バカバカ、バーカ」と言い返した。

 寂しそうにしているのを見かねた男性が孫とのキャッチボールに加わらないかと誘えば、ほとんど断らない。同じ年頃の少年が母親とレストランに行くうしろをついて歩き、誘われるまま一緒に食べることも。「あの子はかまってほしくてたまらないから、大人になってもこんなことをしているんだろう」(少年時代を知る女性)との声もあった。

 小・中学校の同級生によると、いじめられっ子で逃げ足だけは速く、女子にはモテずバレンタインデーのチョコレートはゼロ。成人後は、地元の駅頭でキャバクラの呼び込みをしたほか、桶川市在住時は金属加工会社に勤めたり、工場で働いた。現在は無職だ。

 どれほど過去に同情すべき点があろうと危険行為の免罪符にはならない。