「両親が喫茶店を営んでいたので、漠然と『自分もいつかコーヒーの店をやりたい』と思うようになったんです。それからは、自分が店を持った時に役立つようにと、居酒屋やカフェ、フレンチなど飲食関係の職場でフリーターとして働きました」

 さらに、周囲に「コーヒー屋をやりたい」と日頃から公言していたことをきっかけに、地元栃木県のマルシェで、コーヒー店を出店しないかという話が舞い込んだ。

「『せっかくやるなら』と、宇都宮の焙煎屋の方の元で学びながら、コーヒー豆の焙煎の勉強を本格的に始め、その豆やコーヒーをマルシェで販売しました。そのときにコツコツ貯めた開業資金を元に、30歳で、地元にコーヒー店をオープンできたんです」

◆通販事業の展開や飲食店コンサルタントとして活動開始

 開業後は、店の運営の傍らで、知人のアドバイスからコーヒー豆の通販もスタート。

「いざネットで販売すると、すごく好評で、すぐに通販の売上が店舗売上を上回るようになりました。店舗営業は時間の制約もあるし、発作のリスクもあることから、思い切って店舗営業はやめ、通販事業に専念するようになったんです」

 この噂を聞きつけた同業者から、「通販事業のノウハウを教えてほしい」と言われ、飲食店コンサルタントも開始した。コンサルと通販が軌道に乗り、気が付けば売上は月商1500万円以上、年商1億円以上を稼ぎ出すように。

◆人間関係や職場のストレスから解放され、状態も安定

 まさに引きこもりニートからの逆転脱却を果たした亀井氏だが、現在は新たな目標に向かって進んでいる。

ニートから卒業し、ビジネスが軌道に乗ったいまだからこそ、世の中のためになる社会貢献をしたいと思ったんです。そんなとき、知人から支援活動団体を紹介され、ブータンの子どもたちに100万円を寄付したのを皮切りに、世界25か国途上国の子どもたちへの支援活動を行うようになりました。年に数回現地に行き、スラム街などで支援活動を行っています。自分自身、10代から様々な挫折をしてきたからでしょうか。人の役に立てるようになって、ようやくいま生きている実感がありますね」

 さらに、ビジネスでの成功や社会貢献という生きがいを見つけたことからか、42歳の現在では、てんかんの発作も減っているという。

「自分の場合は人間関係のストレスや無理な働き方が発作の原因になっていたので、時間の融通が利く自営業に切り替えられて、本当によかったと思っています。同じようにてんかんの発作で悩んでいる方も多いと思うのですが、いまは世の中にオンラインだけで完結する仕事も増えているので、ご自身に負荷がかからない環境をぜひ探してみてほしいなと思いますね」

取材・文/藤村はるな