現役野球ママが語る少年野球と仕事・家事との両立(写真はイメージ)【写真:荒川祐史】

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フルタイムで働く母親に聞いた、少年野球と仕事・家事との折り合いの秘訣

 宮崎さんはバリバリ働くママだ。月曜から金曜までフルタイムで仕事をこなしている。長男は中2で硬式野球チームに所属、次男は小学生で学童野球チームに入っている。毎週末、練習や試合がある。硬式野球チームは平日夜も練習があるし、学童野球も学年が上がると練習日が増えてくる。そんな宮崎さんに、仕事と野球ママ両立について話を聞いてみた。

「仕事をしていたら金曜の夜はようやく、くつろげる時間ですよね。でも最初の頃は、子ども二人の野球のスケジュールをにらんで、何時に起きる必要があるか、翌日のお弁当は何にするかと、段取りばかりを気にしていました」

 中学硬式チームは朝早いことも多く、自分自身も起きられるかが不安になり、夜のお酒の量を少し控えることも。

「飲みたいのに飲めないストレス」と小声になった宮崎さんは肩をすくめつつ、とにかく一番大変だったのは、上の子が硬式野球チームに入った時だと話してくれた。

「上の子と下の子の予定がバラバラであることに慣れるまでは時間がかかりました。それぞれにLINEグループがあり、LINEの量が膨大で、理解して翌日の段取りをつけることや、夫との役割分担にも最初は時間がかかっていました」

 最初は確かにみんな大変だ。そもそも入った当初はチームのことなんて、よくわからない。時間を間違えないように、試合に遅れないように。お弁当は? 水筒の大きさは? 一応付き添ったほうがいい? 考えれば考えるほど、おちおち寝てもいられない。だが、それも最初だけだ。「慣れますよ、やっているうちになんとかなります。というか、なんとかできる程度にやればいいんだと思います」と宮崎さん。

「今はもう、あまり考えすぎず、長男を送り出してから、さてと! みたいな感じで次男のスケジュールを確認する感じですね」

 お弁当も、がんばらない。夜作ったものを温めて、ご飯だけドカンと詰める。レトルト食品や○○の素のようなものも、大活躍だ。

一家の行動を把握し1日をクルクル動かす

 子どもが成長するにつれ、大人と子どもの予定が合わなくなってくる。兄弟姉妹がいれば、それぞれの生活時間帯も変わってくる。野球だけではなく、ほかの習い事や塾との兼ね合いで大変なこともあるだろう。宮崎さんの場合も、「オンラインでのミーティングが終わってすぐ、平日夜の練習に出かける長男のために、とりあえず夕飯を食べさせて出す」なんてことも頻繁にあるそう。

 たとえば、きっとこんな光景がたくさんあるに違いない。

 家事をこなしながら「それで? 宿題は?」と声を張り上げ、「オレのゲームがない!」なんて半泣きの子をなだめる。いたずらで隠している上の子をつかまえて「いい加減にしなさいよ!」と叱り、まだ半泣きの弟には「校庭練習に行くのだから、着替えなさいよ」と声をかける。帰宅した夫に週末の予定を聞き、役割分担を割り振る。

 一家全員の行動を把握して、1日をクルクル動かしていくのはとっても大変なのだ。

「慣れてくると、試合がある時はこんな感じ、雨が降ったらこうする、みたいにパターン化してきて、パッと行動に移せるようになる。最初はずっと段取りを考えているけど、だんだんわかってきて、あとはまあ、なんとかなります」

 宮崎さんだけではない、全国の少年野球ママたち(パパだったり、おばあちゃんだったりすることもあるだろう)、皆さんは「超優秀なマネジメント能力」をもって、一家をコントロールしているのだ。

「金曜夜に思いっきり飲めないのは残念ですけどね」

 宮崎さんは、こっそり教えてくれた。「でもね、平日に飲むお酒の量がちょっとずつ増えているの、なんだか自然にバランスをとっているみたい」と、おおらかに笑う。お母さんが笑顔なのはいい。お母さんが笑顔でいるためには、なんとかなると開き直るくらいの大きな気持ちが大事なのかもしれない。

できないことは「できない」でOK…なんとかなる、くらいがちょうどいい

 宮崎さんは押し寄せる雑用をゆうゆうとさばいているように見えるが、違うらしい。できないことはできないし、「試合も全部見に行っているわけではないですよ。行きたい時、行ける時に行くだけ」と言う。

 いろいろ試行錯誤をしているうちに、その家の、その母の「やり方」が定まってくれば、ずっとやりやすくなる。仕事と家事と少年野球の両立と難しく考えず、「適当に、なんとなくやっているうちに、こんな感じかなとおさまってくる」そうだ。

 この、少年野球かーちゃん、元々は企業広報で、独立して社長になった。仕事に子育てにすごいですねと言うと、宮崎さん、苦笑いを浮かべて首をふった。

「月曜から金曜まで働いて土日は野球漬け。そりゃもう、月曜は体力的にボロボロなこともありますよ」

 宮崎さんは自然体だ。試合だから行く必要があるとは思っていないと言う。行きたいから行く。行けない時は行かない。野球に限らず、子どもに関わるあれこれを全部カンペキにしなくてもいい。

「なんとかする、ではなく、なんとかなると思うくらいでちょうどいい」。宮崎さんのことばを、全国で頑張っている少年野球ママたちに贈りたい。(大橋礼 / Rei Ohashi)