「ユーイング肉腫のステージ分類」はご存知ですか?検査法・症状についても解説!
ユーイング肉腫は、主に小児や若年者がかかる肉腫です。骨や軟部組織に発生することで知られています。
一定の時間を置いて起こる痛み・腫れといった症状があるため、早めの診断・治療で対応したい病気の1つです。
では、ユーイング肉腫とはどのような肉腫なのでしょうか。
ここでは、ユーイング肉腫について、ステージ分類・検査・症状・治療方法について解説します。
この記事で、自分自身やご家族の症状で気になることがある場合、受診の参考としていただき早めの対応がとれるようにしましょう。
監修医師:
甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室産業医)
著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など多数。
日本外科学会専門医 日本病院総合診療医学会認定医など。
ユーイング肉腫とは?
そもそも肉腫とは何でしょう。がんとは違うのでしょうか。肉腫もがんも同じ悪性の腫瘍です。この2つの違いは、発生する場所にあります。
粘膜・皮膚といった上皮組織に発生するものをがんと呼び、骨・軟骨・筋肉・神経といった非上皮組織に発生するものは肉腫と呼ばれます。
ユーイング肉腫は、主に小児や若年者の骨・軟部組織に発生するため、肉腫という分類になるのです。小児の骨に発生する悪性腫瘍で最も多いのが骨肉腫といわれています。小児に発生する骨腫瘍においてユーイング肉腫は、骨肉腫の次に多い肉腫です。
患者さんの約50%が10歳代で発症しており、70%の患者さんが20歳までに発症していることを踏まえるとユーイング肉腫は小児・若年者が気をつけなければならない病気といえるでしょう。
発症の部位は、骨幹部に多く、大腿骨・上腕骨・腓骨・脛骨・骨盤・肋骨などに発生します。
ユーイング肉腫のステージ分類
ユーイング肉腫のステージは、2つの分類方法があります。
1つは、肉腫の多くで使われる外科手術を念頭にした「SurgicalStagingSystem」という分類方法です。これは、肉腫の悪性度・遠隔転移の有無・腫瘍が区画内かどうかという3つの項目を指標としてステージ分類がされています。
これによって原発巣の外科的切除の判断を行うのです。ユーイング肉腫においては整形外科以外の多くの悪性腫瘍治療専門の医師との協力体制が必要であることから、より総合的な判断をするTNM分類も用いられます。TNM分類は以下の判断で行われます。
T:病変の大きさや浸潤の程度
N:病変周辺にあるリンパ節への転移
M:遠隔部位への転移の有無
G:組織学的な悪性度
では、それぞれのステージ分類を見てみましょう。
ステージ1
がんが原発部位である骨の組織にのみ発生していて、周りの組織やリンパ節への転移がない場合がステージ1です。
腫瘍のサイズによってステージ1Aと1Bに分かれていて、5cm以下の場合はステージ1A、それより大きい場合は、ステージ1Bと判断されます。
ステージ2
ステージ1と同様にがんが原発部位にのみ発生しているのですが、周りの組織に転移している場合は、ステージ2と判断されます。
ステージ3
がんが原発部位だけでなく周りの組織に広がり、その広がりがリンパ節まで達している場合は、ステージ3となります。
ステージ4
がんが遠隔部位にまで転移している場合は、ステージ4と判断されます。
ユーイング肉腫の検査
ユーイング肉腫の疑いがある場合は、まず問診・視診・触診といった一般的な検診を受けます。同時に血液検査も行います。
血液検査は、ユーイング肉腫の判断ではなく、全身状態の把握が主な目的です。そのあと必要に応じて、X線・CT・MRIなどによる画像検査が実施されます。
確定診断は、病理検査によって行われます。そのために行われるのが生検です。ではそれぞれの検査について説明します。
画像検査
画像検査として行われるのは、X線・CT・MRIなどです。ユーイング肉腫の場合は、X線検査で骨の異常である弓状の反応性骨形成が見られます。
CT・MRIは、腫瘍の広がりの確認のために実施します。大きさ・部位・内部の状態等を診断するために行われるのが、MRI検査です。肺に転移しているかの判断では胸部CTを利用し、リンパ節転移・骨転移を調べるために、PET-CT・骨シンチグラフィ検査が行われることもあります。
血液検査
肉腫の場合は特徴的な腫瘍マーカーがありません。そのため、血液検査で肉腫の特徴的な異常はでてきません。しかし、LDHの軽度な上昇や血沈値の上昇が見られるときがあります。
病理検査
悪性の腫瘍であるかの確定診断をするために行われるのが病理検査です。腫瘍の一部を部分的に採取して組織を詳しく検査する生検を実施します。
生検には、針生検・切開生検・切除生検といったいくつかの方法があります。ユーイング肉腫においては、外来で行える針生検が多いようです。
より詳細な診断を行う場合には、手術による切開生検が行われます。採取した組織を病理医が調べることによって、良性・中間型・悪性の分類ができ、組織型などが判定されますのでその後の治療に有効です。
ユーイング肉腫の症状
ユーイング肉腫の症状の多くは、かならずしもその患者さんに現れるものではありません。軽度の痛みが一定の期間をおいて生じることがあるとの報告があげられています。
その一方で、全く痛みを感じない硬い腫瘤のみで発症することもあるのです。そのため、成長痛やスポーツによる外傷と判断されるリスクがあります。
病状が進行するとでてくる症状としては、発熱・疲労・体重減少などです。また、発症した部位が脊椎の場合は歩行障害になりやすいといわれています。
胸部に発症した場合は、胸に水がたまるがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する可能性が報告されています。このように発症する部位によって症状も変わる可能性があるのが特徴的です。
ユーイング肉腫の治療
ユーイング肉腫の治療は、主に外科手術・化学療法・放射線治療を選択されることが多いです。ユーイング肉腫は、検査では発見できない小さな転移がある可能性が大きいといわれています。
そのため、まず化学療法で、小さな転移に対する治療と腫瘤の縮小化を図るのです。その後で、外科手術や放射線治療で、腫瘍に対する治療を実施します。では、それぞれの治療について説明します。
外科手術
ユーイング肉腫において外科手術が推奨されるのは、四肢に発生した場合です。体幹に発生した場合は、肋骨などの胸壁であれば手術可能ですが、脊椎など切除が難しい場合もあります。
外科手術を行うかどうかの判断は、発生部位により異なります。
化学療法
ユーイング肉腫に対して有効性が高いものとして挙げられるのは、ドキソルビシン・シクロホスファミド・ビンクリスチン・イホスファミド・エトポシド・アクチノマイシンの6種類です。
これらを単一または複数組み合わせて化学療法を行います。
放射線治療
ユーイング肉腫は、放射線治療の効果が出やすいといわれています。そのため、化学療法が発達する前から治療として行われてきました。
放射線治療の線量としては、50~60Gyといわれていますが、個人の症状や設備によって異なります。
また、照射する部位によっても、照射線量は異なるのです。肺転移が認められた場合は、局的な照射ではなく、全体を領域とした放射線照射をする全肺照射が選択される場合があります。
これにより、腫瘍をそれ以上広げない効果があります。しかし、放射線の照射は、肺機能の異常を引き起こす可能性もありますので、注意が必要です。
「ユーイング肉腫」についてよくある質問
ここまではユーイング肉腫のステージ分類・検査方法・症状・治療法を詳しくご紹介しました。ここでは「ユーイング肉腫」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ユーイング肉腫になりやすい人の特徴はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
ユーイング肉腫は患者の約半数が10~20歳で発症しています。小児・若年層がなりやすい病であるといえるでしょう。
また患者間で共通した染色体の異常を発見したとの報告もありますが、まだ詳しい発症原因は解明されていません。誰でも発症し得る病であるといえます。
ユーイング肉腫はどのくらいで治りますか?
甲斐沼 孟(医師)
ユーイング肉腫は骨肉腫などと比べると放射線治療・薬物療法の効果を得やすいとされています。これらを外科手術と併用した場合、約6ヶ月~1年の治療期間を要するでしょう。
ただし発生部位・ステージ・再発リスクなどにより個人差があります。治療に関することは主治医によく相談してください。
編集部まとめ
ユーイング肉腫は、小児や若年層に発症することが多い病気です。
その症状に特徴的なものがなく、発見が遅れやすかったり、別の病気と判断されたりするケースが少なくありません。
健康診断などや普段の生活の中で、違和感があるときには、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
ユーイング肉腫と関連する病気
「ユーイング肉腫」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
骨肉腫メラノーマ
小児がんここに挙げた病気は、小児や若年層に発症することでよく知られているがんや肉腫です。普段から気をつけつつ、なんらかの異常があった場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
ユーイング肉腫と関連する症状
「ユーイング肉腫」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
夜間や運動時の痛み
腫れ
しこり
筋力低下
発熱このような症状が長期的に、あるいは断続的に起きる場合は、すぐに医療機関を受診して判断してもらいましょう。
参考文献
ユーイング肉腫〈小児〉について(国立がん研究センター)
軟部腫瘍診療ガイドライン2020
小児がんについて(国立がん研究センター)
40. ユーイング(Ewing)肉腫(小児慢性特定疾病情報センター)