液晶一体型の「iMac」が、アップルの最新チップ「M3」を搭載して一新しました。カラフル&シンプル&スリムな外観はM1モデルと同じですが、M3搭載によりWindowsゲーミングPCに匹敵する性能になったうえ、Windowsゲームを移植しやすくする環境も整えられ、Macでゲームを楽しむ環境が大幅に向上しました。性能を高めながらもM3チップの省電力性能のおかげで、重量級ゲームをプレイしても騒音はほぼナシ。M3搭載iMacの登場で、「ゲームを遊ぶならMac」の認識がグッと広まりそうです。

M3チップ搭載で性能を底上げした新しいiMac。スリムボディ&無騒音なのに、迫力のある大画面でさまざまな重量級ゲームを楽しめる点が、すでにMacを使っているユーザー以外にも響きそうだ。11月7日から販売を開始する

○外観はM1モデルと同じ、M3搭載でもスリムボディを継承

24型の4.5K Retinaディスプレイを搭載したiMacは、2021年5月にM1チップを採用してフルモデルチェンジしたばかりということもあり、今回の改良は発表されたばかりのM3チップをいち早く搭載したのが最大のポイント。鮮やかで明るい7色のカラーをまとったスリムなボディはそのままで、外見でM1モデルとM3モデルを見分けることはできないほどです。

M1搭載のタイミングで一新したスリムボディを継承。今回試用したのはパープルのカラーで、7色のカラーバリエーションはそのまま据え置かれた

こちらは従来のM1搭載モデル。見た目はまったく変わっていないのが分かる

評価できるのが、M1チップと比べて大幅に高性能化したM3チップを搭載しても、ほぼファンが回らない静粛性を継承したこと。見苦しい排気口すらなく、見た目も耳もスマートに使えます。後ろから見ても美しいというのは、Windowsの液晶一体型デスクトップや一般的な液晶ディスプレイではほぼ存在せず、アップルシリコンの省電力性能がもたらした魅力だと感じます。

前面パネルよりも濃い色で彩られた背面。無粋な排気口は一切なく、とても美しい仕上がりだ

ただ、付属のMagic KeyboardやMagic Mouse、Magic TrackpadもM1モデルと同じで、内蔵バッテリーの充電にLightningケーブルを接続するタイプとなっています。iPhoneを筆頭に、Apple PencilなどでUSB-C化を積極的に推し進める最近のアップルのトレンドからすると、ややちぐはぐな印象を受けます。M3搭載モデル登場のタイミングで、USB-C接続モデルに切り替えてほしかったと感じました。もちろん、キーボードやマウスを自由に交換できるのがデスクトップ型Macの魅力なので、好みに合った製品にカスタマイズして使うのもオススメです。

従来と同じく、本体のカラーに合わせたMagic KeyboardとMagic Mouse、Magic Trackpadが付属する。Magic KeyboardはTouch IDに対応したiMac専用版だ

いずれも、Lightning端子経由で充電する従来タイプとなる。USB-C充電に対応した新バージョンが登場してほしかった

キーボードやマウスは、Windowsパソコンで使っていたものも問題なく利用できる。「テンキーが欲しい」「カチカチとした明確なタイプ感がいい」という好みに合わせて、ぜひ導入したい

○macOS SonomaとM3への更新でゲーム環境が大幅に改善

今回、M3チップに一新したことで、これまでのM1搭載モデルと比べて処理性能は最大2倍になりましたが、進化したのは処理性能だけではありません。見逃せないキーワードは「ゲーム環境の大幅改善」です。

M3チップでは、GPUの世代を更新してグラフィックス性能を大幅に向上させたほか、ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシングとハードウェアアクセラレーテッドメッシュシェーディングという機能を新たに搭載し、よりリアルな3Dグラフィックスの描写が可能になりました。つまり、ゲームの描画性能が大幅に向上するのです。とても高価なグラフィックスカードに大枚をはたく必要なく高い描画性能が得られるのは、ゲームファンにとって大きな魅力となるでしょう。

さらに、Macのゲーム環境にとって追い風となるポイントがもう1つあります。最新のmacOS Sonomaで「Game Porting Toolkit」が追加されたことです。Game Porting Toolkitは、Windows用のゲームをより簡単にMacに移植するためのツールで、2023年6月に開かれたWWDCで発表された際は、ゲーム開発者から「待ってました」との声が上がったほどです。ゲームの描画性能が底上げされたM3チップの搭載と相まって、今後Windowsで人気のゲームタイトルのMac版が続々登場することが期待されます。

2023年のWWDCで発表されたGame Porting Toolkit。既存のWindows用ゲームがより簡単にMacに移植できるようになる、ゲーム開発者が待ち望んでいたツールだ

アップルシリコン搭載Mac専用タイトルとして2022年10月に登場した、カプコンの「バイオハザード ヴィレッジ」。Game Porting Toolkitの登場により、このような大型タイトルのMacへの移植が急速に進みそうだ

オリジナルのゲームが続々と追加されているApple Arcadeの存在や、フルスクリーンでゲームを表示した際にCPUやGPUを最優先でゲームに割り当てるとともにワイヤレスゲームコントローラーやワイヤレスイヤホンの遅延を抑えるゲームモードの存在もあり、ゲームのプラットフォームとしてMacの注目度が高まるのは間違いないでしょう。

オリジナルのタイトルが毎月定額でプレイできるApple Arcadeのゲームは、iPhoneやiPadだけでなくMacでも遊べる。画面は、ハローキティなどのサンリオキャラクターが登場する「Hello Kitty Island Adventure」

ちなみに、コーレルの仮想化ソフトウエア「Parallels Desktop 19 for Mac」を使えばWindows 11が簡単にインストールでき、Windows版のSteamも利用できます。ただ、カプコンの「Capcom Arcade Stadium」のような比較的ライトなゲームは問題なく動作したものの、3Dグラフィックス性能が求められるカプコンの「Street Fighter 6」(Demo版)は起動しませんでした。重量級タイトルへの対応は、Parallels Desktopではやはり限界があるようで、Game Porting Toolkitでのネイティブ移植に期待が高まります。

「Parallels Desktop 19 for Mac」(年間ライセンスは10,400円から)を導入すれば、手間をかけずにiMacにWindows 11がインストールできる。動作も軽快で、接続した周辺機器も問題なく使える

Windows版Steamで「Capcom Arcade Stadium」を起動したところ。ゲームは問題なくプレイでき、グラフィックスがカクつくこともなかった。macOSがPS4用のDUALSHOCK 4をサポートしているので、ワイヤレスで接続してさまざまなゲームで使える

○“スマートなゲーミングPC”として存在感

M3搭載iMacの価格は198,800円からで、昨今の円安の影響を受けてM1モデルから若干高くなったものの、M3チップを搭載する14インチMacBook Proが248,800円からの価格であることを考えると、M3の環境がもっとも安く手に入るのは注目できます。

Macといえばクリエイティブに強い、というイメージが定着していますが、M3搭載iMacの登場で「ゲームもMac」という印象がグッと強まりました。「ゲームを遊びたいけど、パーツの相性問題などが面倒くさいので自作はちょっと…」「ゲーム=光るパーツ、という認識がオシャレじゃない」「そもそも大きなケースのパソコンを置く場所がない」などと考えるゲームファンに響く1台となりそうです。