地球の表面はプレートと呼ばれる硬い岩盤からなっており、さまざまなプレートが互いに動くことで大陸が移動したり新たに作られたりすると考えられています。科学者らは、約2億5000万年後にパンゲア・ウルティマ大陸という超大陸が形成されると、地球上のほ乳類の大半が絶滅する可能性があるという研究結果を発表しました。

Climate extremes likely to drive land mammal extinction during next supercontinent assembly | Nature Geoscience

https://www.nature.com/articles/s41561-023-01259-3



Mammals may be driven to extinction by volcanic new supercontinent Pangaea Ultima | Live Science

https://www.livescience.com/planet-earth/mammals-may-be-driven-to-extinction-by-volcanic-new-supercontinent-pangaea-ultima

The Next Supercontinent Formation Could Wipe Out Most Mammal Life : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/the-next-supercontinent-formation-could-wipe-out-most-mammal-life

‘Supercontinent’ could make Earth uninhabitable in 250m years, study predicts | Geology | The Guardian

https://www.theguardian.com/science/2023/sep/25/supercontinent-could-make-earth-uninhabitable-in-250m-years-study-predicts

地球上では過去数十億年にわたり、マグマの対流によりプレートが動くことで大陸の分裂や合体が繰り返されており、時には超大陸と呼ばれる非常に広大な大陸が形成されてきました。約3億年前にはパンゲア大陸という超大陸があったことがわかっているほか、約2億5000万年後には赤道付近で複数の大陸が衝突し、新たにパンゲア・ウルティマ大陸という超大陸が形成されるとみられています。

新たな超大陸の形成は地球の環境を大きく変えると思われますが、具体的に超大陸が気候にどのような影響を及ぼすのかはあまり知られていません。そこでアメリカ・イギリス・中国・スイスなどの国際的研究チームは、過去に存在したパンゲア大陸をケーススタディとして、パンゲア・ウルティマ大陸の形成により気候がどうなるのかを調べる研究を行いました。



研究チームは、イギリス気象庁の気候モデルとブリストル大学のスーパーコンピューターを使用し、パンゲア・ウルティマ大陸の地表面温度の変化を予測しました。また、太陽からの放射線量や二酸化炭素濃度の上昇といった要因も考慮して、将来の気候がどのようになるのかを研究しました。

かつてパンゲア大陸が存在した約3億3400万年前〜約2億5500万年前には、地球上の二酸化炭素濃度は最大2100ppmにまで上昇したとのこと。現代の地球上の二酸化炭素濃度は約416ppmであり、産業革命前から49%近く増加しているものの、それでもパンゲア大陸があった時代と比べて圧倒的に低濃度です。こうした環境もあり、特に約1億4500万年〜6500万年前の白亜紀の平均気温は現代よりもセ氏10度ほど高く、北極や南極にも氷はなかったと考えられています。

研究チームは、遠い未来にパンゲア・ウルティマ大陸が形成された際にも同様の気象変化がもたらされ、平均気温が大幅に上昇する可能性が高いと報告しています。超大陸では海岸沿いの湿度が現代よりも高くなる一方、内陸部の大部分は非常に乾燥した砂漠地帯となり、産業革命前と比較して平均気温が15度近く上昇するとみられています。

以下の図は、二酸化炭素濃度が1120ppmに達するシナリオにおける、パンゲア・ウルティマ大陸の地表面温度を予測したもの。内陸部の一部では地表面温度が50度を超え、非常に暑い気候であることがうかがえます。最悪のシナリオをモデル化した場合、パンゲア・ウルティマ大陸の平均気温は高い月だとセ氏46.5度に達する可能性もあるそうです。



現代の地球に生息しているほ乳類は高い気温にも対処する能力をもっていますが、気温が乾燥した状態でセ氏40度、湿度の高い状態でセ氏35度を超えると体の温度調節機能がうまく機能しなくなります。そのため、パンゲア・ウルティマ大陸が形成される頃の地球では、多くのほ乳類が絶滅してしまう可能性があるとのこと。

以下の図は、二酸化炭素濃度が1120ppmのシナリオにおける、パンゲア・ウルティマ大陸でほ乳類が生息できる場所を緑色で示したもの。低・中緯度帯でほ乳類が生存することはほぼ不可能となっており、高緯度地域の面積にしてわずか8%未満の地域でのみほ乳類は生息できると推測されています。



非常に気温が高くなったパンゲア・ウルティマ大陸で生き延びられるのは、「日中は地面に掘った穴で過ごす夜行性のほ乳類」「季節に応じて『渡り』をするほ乳類」などとみられています。しかし、高温は熱の直接的なダメージをもたらすだけでなく、エサとなる植生にも大きな影響を及ぼすため、食糧供給の問題が生じる可能性もあるとのこと。

ブリストル大学の地質科学者で論文の筆頭著者を務めたアレクサンダー・ファーンズワース氏は、「超大陸は大量絶滅につながる条件を作り出すようです」と述べ、過去の大量絶滅が発生した時期にも超大陸が形成されることが多かったと指摘しています。

さらに今回の研究は、天文学者らが人間の居住可能性がある太陽系外惑星を探す際、以前から注目されていた水や恒星からの距離といった要因に加え、「超大陸の有無」も考慮するべきかもしれないと示唆しています。ファーンズワース氏は、「もしNASAが単一の惑星にしかスペースシャトルを送れないとしたら、私は超大陸がない星を選ぶでしょう。現在の地球のように、複数の大陸が散らばっている方がいいのです」と述べました。