残業207時間、過労自殺した若手医師の遺族「労災認定受けても息子は帰って来ない」嘆願書提出
神戸市の病院に勤めていた若手医師(当時26歳)の自殺が労災認定されたことをめぐり、遺族は8月31日、労働基準法違反に関する調査や是正、労働環境の改善などをもとめる嘆願書を加藤勝信厚労相あてに提出した。その後、遺族は都内で記者会見を開いた。
●遺族側代理人「認められて当然の事案だ」
亡くなったのは、神戸市東灘区の甲南医療センターに勤めていた高島晨伍(しんご)さん。2020年4月に研修医として採用されて、2022年2月から消化器内科に配属。同年4月に専門医をめざす「専攻医」となっていたが、同5月17日に自宅で自殺した。
高島さんは両親に向けて「本当に感謝しています」「知らぬ間に一段ずつ階段を昇っていたみたいです」「おかあさん、おとうさんの事を考えてこうならないようにしていたけれど限界です」などと書いた手紙を残していた。
西宮労働基準監督署は6月5日、長時間労働による精神疾患が原因だったとして、労災認定した。
遺族側代理人の波多野進弁護士によると、亡くなる前の1カ月の時間外労働は207時間50分、2カ月前は169時間55分、3カ月前は178時間29分という「長時間労働」が認定された。また、亡くなる前の3カ月間は100日連続で休みがなかったという。
精神疾患の労災認定基準では「発症前1カ月におおむね100時間」とされているが、それを上回る時間外労働が認定されたことになり、波多野弁護士は会見で「今回のケースは、認められて当然の事案だ」と述べた。
●母「同じことが二度と起きないように切に願う」
一方で、報道によると、甲南医療センターは8月17日の記者会見で「過重な労働をさせていた認識はない」「(労基署が認定した時間外労働には)自己研鑽の時間も含まれている」などと反論している。
2024年4月から、時間外労働の規制などを含む「医師の働き方改革」がスタートするが、若手をはじめとした医師の労働環境は依然として厳しい状況にあるとされる。母の淳子さんはこの日の会見で次のように述べていた。
「労災認定を受けても、あの優しい大事な息子は私たち家族のもとには帰ってきません。甲南医療センターにとって医師の代わりはいくらでもいるのでしょうが、私たち家族にとっては、泣いて笑って大切に育てた、かけがえのない、宝物なのです」
「今後同じことが二度と起きないように、また医療全体の問題として、医療、行政、社会が手を取り合い、病院の労務管理の改善が今後履行され医師らの労働環境が改善されることを切に希望します」