新宿駅「車内に刃物男」でパニック、「私は料理人」なら銃刀法違反にならない?
2023年6月25日16時ごろ、JR山手線外回りの車内で「刃物を振り回している人がいる」と110番があった。停車した新宿駅(東京都新宿区)のホームに乗客が一斉に逃げ出し、警察が出動するなどの騒動となった。
報道によると、車内の座席で布のような物で包まれた刃物2本が発見されたという。そばに座っていた男性は、警察の事情聴取に対し、自身を料理人と説明。「勤め先の飲食店を辞めるので包丁を持ち帰った」などと話したという。刃体は長さ25〜27センチ程で刃先が一部見える状態だったようだ。
男性が振り回した事実は確認されておらず、刃物による負傷者も把握されていないようだが、電車への刃物の持ち込みは問題なかったのだろうか。
●「本当に料理人」かどうかがカギ
銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)は、包丁やカッターなどの刀剣類に当たらない刃物について、刃体(刃渡り)が6センチを超える刃物の「携帯」を原則禁止としている(22条)。違反した場合の罰則は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」となっている(同法31条の18第2項2号)。
携帯とは、自宅や居室以外の場所で、刃物を手に持ちあるいは身体に身に着けるなどして、直ちに使用し得る状態で一定時間身辺に置き続けることをいう。
「業務その他正当な理由」が認められる場合(銃刀法22条)や、刃体が8センチ以下のはさみや折りたたみ式ナイフなどの場合(銃刀法施行令37条)は、例外的に携帯が認められている。
「業務」とは社会生活上の地位に基づき、反復継続して刃物を使用することがその人にとって仕事に当たる場合をいい、「正当な理由」とは社会通念上正当な理由が存在する場合で、たとえば店舗で買った刃物を持ち帰るケースが当てはまる。
今回のケースでは、男性が本当に料理人で、辞めるタイミングで包丁を持ち帰っていたならば、「業務」に当たり、銃刀法違反にはならない可能性がある。
なお、軽犯罪法では、正当な理由なく、刃物を「隠して携帯する」ことが禁止されている(軽犯罪法1条2号)。仮に銃刀法違反でないとしても、状況次第では取り締まり対象になるおそれはある。
●JRのルールが定める「梱包されたもの」だったか
JRのルールに違反している可能性もありそうだ。
JR東日本では、「他の旅客に危害を及ぼすおそれがないよう梱包されたもの」を除き、刃物の車内持ち込みを禁止している(旅客営業規則307条1項但書2号)。
利用客が刃物を持っている可能性がある際、JR東日本は、客に立会いを求め、手回り品の内容を点検できる(同規則307条2項)。点検の求めに応じない場合は乗車できない(同規則307条5項)。
刃物は布のような物で包まれた状態だったと報じられており、実際に刃先が一部見える状態だったとすれば、「梱包されたもの」に当たらないおそれがある。
JRのルールに違反したからといって罰則が科されることはないが、しっかり梱包されていない刃物は走行の揺れや急停止などで不意に誰かを傷つけるおそれがある。持ち運びには細心の注意が必要だ。