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困っている依頼者にとって、弁護士はたのもしくみえやすい。一方で、依頼者からのそうした感情を弁護士が恋愛感情と思い込むなどして、ハラスメントを招くケースも報告されている。

弁護士ドットコムが会員弁護士に対して、依頼者との恋愛の是非をたずねたところ、100人から回答があり、9割近くが否定的な見方を示した。

●「海外では禁止されていることも」

アンケートは5段階で実施。選択肢と回答結果は次のようになった。「問題があるかないか」という聞き方なら、違った結果が出た可能性もあるが、多くの弁護士が「しないほうが良い」と考えている。

問題ない:2%
あまり問題ない:2%
どちらともいえない:9%
あまりすべきでない:21%
すべきではない:66%

自由回答をみてみよう。まずは倫理的に問題だという考え方から。

「倫理上の問題。海外では明文で禁止されていることもある」

「うまくいくはずがないし、一時的な歓楽が狙いだったら不道徳だ。恋愛して良い理由は見つからない」

「態様次第では弁護士倫理に抵触し得る。抵触しないとしても李下に冠を正さず」

背景には、ピンチに陥った依頼者が「吊り橋効果」によって好意を寄せているにすぎない、交際に発展しても弁護士の立場が上になり、対等な関係にはなりがたいといった考えがあるようだ。弁護士側が一方的に恋愛感情だと思い込んでしまう危険性もあるだろう。

「当該案件に私情を挟みかねず、質が落ちかねない。プロとして失格」

「事件処理に私情が挟んで客観的な判断ができなくなる」

「公私を分けずに接すると、依存されるし、仕事自体もやりにくくなる」

など、仕事の質に影響するという見方も多かった。

●依頼者との恋愛はハイリスク

弁護士の多くは、依頼者との交際はかなりのハイリスクと考えているようだ。

「運・不運もあるとはいえ、弁護士に頼るくらいなのでトラブルに巻き込まれやすい相手の可能性がある。自分とはトラブルにならないというのは大きな勘違いだと思う」

一度恋愛関係にトラブルが発生すれば、「委任関係のトラブルにも繋がるおそれがありリスキー」、「プライベートで揉めることで懲戒リスクも増える」といった見方が多かった。

このほか、「費用以上の弁護活動を得たいなど、依頼者に下心がある可能性もあり、後日トラブルの原因になるおそれがある」といった意見もあった。

●恋愛は自由だけど…本当に自由意思と言える?

べき論としては「すべきでない」がほとんどであったが、交際することの自由自体は否定しがたいという意見もあった。

「双方が合意するのであれば第三者が口をはさむことではない」

「事件処理が感情で歪まないよう注意が必要だが、両想いであれば自然な感情を問題とは言えない」

落とし所として、事件終結後であれば、許容できる余地があるとする考える弁護士もいた。

「業務終了後で、関係性の良し悪しが業務に影響を及ぼすことがない状態で、弁護士が元依頼者と交際することの危険性を十分認識しつつ、それでも交際を選ぶのであれば仕方がないと思う」

「好きになったらしょうがない。しかし、事件続行中はダメ。自由意思による恋愛とは言い難い面があるかもしれず、あとで苦情、懲戒請求等をされる理由にもなりかねない」

「恋愛自体は当事者間の自由意思によって決めることなのでよいと思うが、事件受任中であれば、弁護士と依頼者との関係は通常恋愛の判断でする必要のない利害判断が入るので、そもそも自由意思に基づくものとは言いにくいと思う。

したがって、受任中であれば『すべきではない』、事件終了後であればそれでも受任中の利害が判断に影響している可能性があるので『あまりすべきではない』と思う」

その恋愛感情が自由意思に基づいているかどうかがポイントになりそうだが、アンケート結果からすると、そうとは言いがたいと考える弁護士が多いようだ。