転倒後、運び出されるだんじり(写真・共同通信)

 大阪府堺市で4月16日、だんじりが倒れ、11人が重軽傷を負う事故が発生した。事故が起きたのは堺市南区の交差点で、勢いよく角を曲がる「やりまわし」の際に、だんじりがバランスを崩して転倒。10代から40代の男性11人が下敷きになり、そのうち6人が足や腕の骨を折るなどの重傷を負った。

 だんじりは、山車を勢いよく曳きまわす勇猛な祭りで、有名な岸和田だけでなく、近畿地方を中心に、西日本各地でおこなわれている。その迫力が人を惹きつけてやまないが、危険度が高く、これまでに多くの事故が起きているのも事実だ。

・2013年4月:兵庫県南あわじ市でだんじりのタイヤに頭部をひかれた中学2年の男子生徒が死亡
・2014年10月:兵庫県三田市でだんじりがぶつかった建物が倒壊、見物していた女性1人が死亡、16人がけが
・2015年9月:兵庫県淡路市でだんじりが転倒。男性1人が死亡
・2015年10月:大阪府泉佐野市でだんじりに引きずられ、男性1人が死亡
・2016年4月:大阪府岸和田町でだんじりと街灯に挟まれた男性1人が死亡
・2016年10月:大阪府忠岡町でだんじりとガードレールに挟まれた男性1人が死亡
・2019年8月:兵庫県尼崎市でだんじりが転倒。男性1人が死亡
・2022年10月:大阪府富田林市でだんじりが転倒。男性1人が死亡、3人が重傷

 過去10年だけでも、8件の死亡事故が発生。コロナ禍による中止を考えれば、毎年のように死亡事故が起きている状況だ。

 そんななか、SNSではだんじりをめぐって “論争” が起きている。特に注目を集めているのが、《だんじりは本当に時代に合わせた物にするか、廃止にすべき》とするツイートだ。このツイート主は、《だんじり規制すべき理由》として、

・いかつい若い男性が寄付を求め、家に押しかける
・2〜3カ月、太鼓の練習の音で悩まされる
・毎晩のように酒を飲んで騒ぐ
・だんじりの事故で亡くなった子供の親が自治体に謝らなければいけない
・祭りに協力しないと村八分になる

 などとしている。2019年10月30日の「朝日新聞デジタル」には、同年8月に兵庫県尼崎市で起きた死亡事故に関連し「死傷事故相次ぐだんじり 息子亡くしても『近所に謝罪』」という記事があり、地域の特殊な事情があることを伺わせている。

 このツイートに対し、多くのコメントがあり、

《言わせてもらうけど、参加者は承知で乗ってるし引いてるのよ。死者が出ようがなんだろうが承知で続けてるのよ。そこを理解せずにやめろっていうのはそれこそやめてもらいたい》

《そもそも祭りってのは男の文化圏だから危険なのは当たり前だし、承知の上で参加してるんだよ》

 などの反対意見が。ほかにも、

《嫌なら相手を変えようとするのでなく、自分が引っ越せばいい。だんじりやらない地域なんて腐るほどある》

 との声も。一方、賛同する声も多く、

《昔だんじりの練習場のすぐ近くに住んでたんだけど、祭り近くなると夕方から夜遅く、朝早くから馬鹿みたいに太鼓鳴らしたりでうるさくて仕方なかった。ノイローゼなって引っ越した人もいるし、苦情言ってもやめられない、って太々しく返された、本当に非常織なヤツらだった》

《日本文化を後世に伝えていく為には、確かに様々な観点から見て、考えて、修正していく必要性は感じますねぇ…》

 などの意見が。なお、前述の《だんじり規制すべき理由》とのツイート主は、追記として《前提として規制は必要です。何でもかんでもでは無く必要な規制。廃止前提では無い。共存が大切》と、あくまで廃止ではなく、何らかの規制が必要ではないかと訴えている。

 元大阪府知事の橋下徹氏は、4月17日の『めざまし8』(フジテレビ系)に出演し、この事故に言及。府知事時代に議論になったことがあるとして、「行政や警察が介入してしまうと祭りが成立しなくなってしまう。祭りを守っていくため、地元の人たちに安全は絶対に守ってくださいね、ということで、介入せずちょっと引いたようなところもあった」と説明している。

 文化か規制か――難しい問題だ。