「DLsite」を訴えていた同人作家が敗訴 モザイク処理トラブルめぐり
同人販売サイト「DLsite」のユーザー資格を取り消されたのは不当だとして、同人作家が運営会社に損害賠償をもとめた裁判で、東京地裁(㑨木泰治裁判官)は3月24日、作家の請求を棄却する判決を言い渡した。
成人向け作品のモザイク処理をめぐり、作家とサイトとの間でトラブルが生じていた。作家はネット掲示板やSNSに、従業員の氏名や個人情報を晒す形で、一連のやりとりを公開し、「地獄に堕ちろ!」などと投稿していた。
判決は、この取消処分は適法だったと判断し、また、資格取消を定めた利用規約は、ユーザーに過度に不利なものではなく、サイトの適正な運営の実現に必要なものというべきと指摘した。(編集部・塚田賢慎)
● DLsiteへの不満をネットでぶちまけ…「規約違反にあたる」東京地裁
DLsiteで作品を販売してきた同人作家の男性は2021年12月、成人作品の登録にあたり、サイト側からモザイク処理の対応を求められたが、その際のやりとりを不満として、サイトの掲示板や自身のTwitterに、従業員とのメール全文や「悪質行為を働いた二名をさっさとクビにしろ!」などと名指しで投稿した。
その後、サイト利用規約に基づき、ユーザー資格を取消されたことは違法だとして、慰謝料など約150万円を求めて、DLsiteを運営するエイシス(東京都千代田区)を相手に裁判を起こしていた。
作家側は、サイト従業員の修正指示に曖昧な点があり、不毛な対応を強いられたことから、その是非を問うため意見表明をしたなどと主張。
一方、サイト側は、モザイク処理方法を具体的に指示し、処理をもとめたのに、作家は指示に従わなかったと反論。規約の遵守を拒否し、サイト側と従業員に不法行為を犯しながら、サイト利用の権利があると主張する原告の作家に、利用資格を与える義務はないと反論していた。
東京地裁は判決で、作家の行為は、従業員の人格権を侵害する可能性が高い不適切なもので、サイト運営に支障を生じさせ、その内容に照らして投稿の必要性も正当性も認め難いとした。
それを踏まえて、作家の行為は利用規約で定められた禁止条項や資格取消条項に該当するもので、ユーザー資格取消は適法だとする考えを示した。
●「資格取消」は適切なサイト運営に必要、ユーザー側に不利とも言えない
また、作家側は、DLsiteが実質的なデジタルプラットフォームとして、優越的な地位にあることから、資格取消などの措置はサイト側に具体的な支障を生じさせた場合に限るべきだと主張していた。
判決は、こうした作家側の主張を採用しなかった。
規約の資格取消条項は、サイト側に無条件の契約解消権を与えるものではなく、一方的に有利な内容とはいえず、むしろ、適正で円滑な運営を実現するために必要なものというべきだとした。また、登録・利用が無償であることからも、ユーザー側に過度に不利益な内容ともいえないとしている。
「デジタルプラットフォーム事業者であり、一定のシェアを持ち、原告との関係で優位な立場にあることを前提としても、禁止条項や資格取消条項について、原告が主張するように厳格な解釈をする必要があるとはいえない」(判決文から)
編集部では、双方に意見を問い合わせており、返信があれば追記する。