AppleのA4チップやAMDのZenマイクロアーキテクチャなどに関わったアーキテクトのジム・ケラー氏が、独学で半導体製造を研究するサム・ゼルーフ氏と共に新しい半導体製造企業(ファブ)「Atomic Semi」を立ち上げました。

Atomic Semi • building it ourselves

https://atomicsemi.com/



CPUやGPUなどの半導体チップはシリコン(ケイ素)から作られます。実際にどういう過程で半導体チップが作られるのかについては、以下の記事を読むとよくわかります。

たった99秒で「CPUの作り方」がわかるムービー - GIGAZINE



もちろん半導体の製造にはシリコンの精製や研磨、紫外線と薬品を使った回路パターンの現像など、大がかりな装置や精密機械が必要となります。しかし、ゼルーフ氏は高校時代から独学でシリコンから自作のCPUを製造しており、その様子を自身のYouTubeチャンネルで公開しています。

以下のムービーでは、ゼルーフ氏が自ら設計したトランジスタ数1200のチップ・Z2を実際に自作する工程を見ることができます。このZ2はIntel 4004と同じ製造手法で作られており、設計した集積回路パターンを自宅にある施設や薬品を使ってシリコンウエハーに印刷して現像し、処理を加え、最後に通電してチェックも行っています。

"Z2" - Upgraded Homemade Silicon Chips - YouTube

これら半導体を自宅で作るための設備は一般入手できなさそうなイメージですが、ゼルーフ氏によれば、5nmプロセスルールの半導体を自作するための環境はeコマースサイト・アリババエクスプレスを使えば50万ドル(約6700万円)ほどでそろうとのこと。



そして、このゼルーフ氏と手を組んでAtomic Semiを立ち上げたのがジム・ケラー氏です。ケラー氏はAMDのAthlonやZenマイクロアーキテクチャ、Apple A4などさまざまなチップ開発に携わり、天才エンジニアと高い評価を受けている人物で、記事作成時点ではAIチップ開発のスタートアップであるTenstorrentのCEOを務めています。

そんなケラー氏がどういう経歴でどんな仕事をしていたのかについては、2021年6月に行われた以下のインタビューでも触れられています。

Apple・AMD・テスラ・Intelを渡り歩いた天才エンジニアのジム・ケラー氏へのインタビューが公開中、Intelで一体何をしていたのか? - GIGAZINE



記事作成時点で、Atomic Semiはハードウェアエンジニア・ラボ技術者・機械エンジニア・プロセス開発エンジニアを募集しています。募集要項にはAtomic Semiの説明として、「Atomic Semiは、小型で高速な半導体ファブを建設しています。これは、半導体チップの製造方法について従来の考え方を覆すような多くのプロジェクトの第一歩です。この製造方法は、今日の技術といくつかの簡略化ですでに構築することが可能です。私たちは自分たちでツールを作り、それをより高度な形に仕上げていきます」と述べています。

なお、ゼルーフ氏のツイートによると、Atomic Semiのプロジェクト自体は少なくとも2022年11月から進められていた模様。



Atomic Semiの公式Twitterアカウントは2023年1月10日に初ツイートをしています。