3月にはWBCが開催。狙い目は…?

 日銀利上げ開始で“波乱の年”となっている株式相場。しかし、2023年の株式相場について、経済アナリストの馬渕磨理子氏は、上昇を見込んでいる。

「米国のインフレ次第ですが、利上げピッチが鈍化すれば、株式市場は底堅さが期待できます。

 また、米大統領選挙の前年は、歴史的に株高傾向であることを踏まえて、日経平均は3万円を回復し、その後は年末にかけて、株高3万2000円の可能性もあるでしょう」

 では、いつ、どんな銘柄を買うべきなのか。「兜町カタリスト」編集長の櫻井英明氏に聞いた。

「今年予想されている、あるいは起こり得るイベントの前に、関連銘柄を仕込むのです。

 たとえば、4月1日の『こども家庭庁』の発足や、6月13日のゲーム見本市に向け、西松屋やソニーといった関連銘柄を買ってみてはいかがでしょうか。イベントに向けて、西松屋は現在の株価から2倍、ソニーは1.5倍の値上がりが期待できます」

 現在の株価から計算すると、西松屋なら15万円、ソニーでは55万円も儲かる可能性があるわけだ。話題が先行すれば、イベント当日には株価がピークを過ぎてしまっていることもある。売買のタイミングは自己責任で。

 以下、2人に金融アナリストの三井智映子を加えた、名だたる経済評論家たちがおすすめする銘柄を、年間を通して紹介!(銘柄のカッコ内はコード名と市場)

【1月 全国旅行支援再開】

三井氏おすすめ
・エアトリ(6191 東証PRM)
1月10日から再開された全国旅行支援で、総合旅行プラットフォームの「エアトリ」を運営する同社に恩恵が見込める。航空券のインターネット取扱高No.1で、コスト競争力や知名度も強み

【1月22日 春節】

三井氏おすすめ
・三越伊勢丹ホールディングス(3099 東証PRM)
中国が春節の大型連休に入ることで、都心部の百貨店を中心に“爆買いニーズ”への期待が。大幅に低迷していた中国人をはじめとする訪日客数の回復から、百貨店への恩恵は今年中は継続しそうだ

【2月12日 次期基幹ロケット「H3」打ち上げ】

櫻井氏おすすめ
・三菱重工業(7011 東証PRM)
主力事業は造船、原子力発電所、産業機械、航空機、ロケット、兵器。H3ロケットは同社とJAXAが共同で開発している

・セック(3741 東証PRM)
宇宙分野や車両自動走行のソフトウェア開発。H3ロケットの発射設備の一部設計や製作、種子島宇宙センターへの据付工事を担当

【3月5日 東京マラソン2023】

三井氏おすすめ
・アシックス(7936 東証PRM)
ランニング事業が主力のスポーツ用品大手。東京マラソンのメジャーパートナーでもある。グローバルでスポーツ需要の高まりが継続しており、通期予想を上方修正。アジアで特に販売好調

【3月 WBC開催】

馬淵氏おすすめ
・ミズノ(8022 東証PRM)
WBCでは、日本代表のユニホームを手がけるスポーツ用品大手。サッカーでも知名度が向上しており、海外事業も拡大中だ

【1月〜3月 春闘】

三井氏おすすめ
・コメ兵ホールディングス(2780 東証STD)
2023年の春闘で賃上げがあれば高級品の購買意欲に繋がるほか、インフレやESGの観点からリユース品への注目度も高まっている。ブランド品を中心に扱うリユースショップを展開する同社に追い風

【4〜9月 中国人観光客のインバウンド需要】

馬淵さんおすすめ
・寿スピリッツ(2222 東証PRM)
土産やギフト用に、全国で地域限定ブランド菓子を展開。すでに顧客数は会社想定より回復し、中国人観光客のインバウンド需要も

・高島屋(8233 東証PRM)
高額商品の売り上げが好調で、円安の恩恵で海外店舗も順調。さらなるインバウンド需要が期待でき、業績の回復が進む

【4月 デジタル給与解禁】

三井氏おすすめ
・TIS(3626 東証PRM)
給与をデジタルマネーで支払うサービスを提供。KDDI株式会社でも採用されている。マイナンバーカード1枚で、本人確認手続きをデジタル上で完結することができるサービスなども提供している

【4月1日 こども家庭庁発足】

三井氏おすすめ
・幼児活動研究会(2152 東証STD)
子供に関係するさまざまな事業を手がけている企業。幼児向けの体育指導や教育のレベルの高さが評価されており、幼稚園・保育園向けの経営コンサルティングでは提案力に強みがある

櫻井氏おすすめ
・西松屋チェーン(7545 東証PRM)
マスコット「ミミちゃん」は干支のうさぎ。ベビー・子供衣料と生活雑貨のロードサイド大型店を展開。低価格のPB商品に強み

【4月9日、23日 統一地方選】

櫻井氏おすすめ
・TOA(6809 東証PRM)
事業の柱は構内放送設備とセキュリティシステムで、海外でも商品企画から販売までおこなう。選挙演説用のスピーカーも取り扱う

・ムサシ(7521 東証STD)
自社開発の選挙用機材、とくに投票用紙分類・計数機器で圧倒的なシェアを誇る。貨幣処理機器でも業界2位だ

【5月15日 Jリーグ30周年】

三井氏おすすめ
・キリンホールディングス(2503 東証PRM)
冠大会「キリンカップ」など、今日の日本サッカー界の発展にもっとも寄与してきた企業といえる。コスト高が重しも、販売数量の増加や販促費の減少、オセアニアの売り上げが寄与して増益に

【5月19〜21日 G7広島サミット】

櫻井氏おすすめ
・マツダ(7261 東証PRM)
今年のサミット開催地・広島地盤の自動車メーカー。低燃費で動力性能が高いエンジンが強み。11年ぶりにロータリーエンジンが復活

・エフピコ(7947 東証PRM)
食品トレーや弁当・惣菜容器で業界1位。新素材開発など技術力が高く、リサイクルにも積極的。広島県福山市に本社を置き、要注目

【6月 「骨太の方針」閣議決定】

三井氏おすすめ
・ヴィス(5071 東証STD)
2022年の「骨太の方針」で打ち出された「人への投資」。この方針が続けば、デザイナーズオフィスの設計やレイアウト事業を提供する同社に注目。売上高、営業利益ともに前年同期比で100%超の成長企業

【6月13日 ゲーム見本市「E3」】

櫻井氏おすすめ
・ソニーグループ(6758 東証PRM)
「E3」は、米ロサンゼルスで催される世界的なゲーム見本市。今年は2年ぶりに復活し、ソニーも参加。「プレステ5」が販売好調

・フリュー(6238 東証PRM)
プリントシール機シェア9割。シール販売やアプリ有料会員事業で稼ぐ。好調の映画『ゆるキャン△』をサブスクで配信している

9月〜10月 ラグビーW杯(写真・共同通信)

【9月〜10月 ラグビーW杯】

馬淵氏おすすめ
・ゴールドウイン(8111 東証PRM)
アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」が人気。「カンタベリー」ブランドで、ラグビー日本代表の試合用ジャージーも扱う

・ハブ(3030 東証PRM)
英国風パブ「HUB」を展開。昨年のサッカーW杯時にも、株価が急騰した。今年もWBCやラグビーW杯で、多数の集客が予想される

【10月1日 消費税のインボイス制度開始】

三井氏おすすめ
・ラクス(3923 東証PRM)
経費精算システムの「楽楽精算」などを展開。業務効率化に寄与するクラウドサービスを複数提供できていることに強みがあり、CMで知名度も向上している。「楽楽精算」はインボイス制度に対応予定だ

櫻井氏おすすめ
・インフォマート(2492 東証PRM)
外食業界向けの受発注や請求書システムを運営し、電子インボイスの国内規格「JP PINT」に対応予定。ラクス(3923)とともに注目

【10月上旬 ノーベル賞】

櫻井氏おすすめ
・キャンバス(4575 東証GRT)
今年は日本人の医学生理学賞受賞を期待し、創薬ベンチャーを3社紹介。同社は抗がん剤開発に特化。難治の膵臓がん3次治療の臨床試験で「薬効あり」のデータを得た

・Delta-Fly Pharma(4598 東証GRT)
既存の抗がん物質を組み合わせ、安全性と有効性を高めた抗がん剤を開発する創薬ベンチャー。2023年度内に米国で白血病薬を発売へ

・オンコリスバイオファーマ(4588 東証GRT)
腫瘍溶解ウイルス技術を使うがん治療薬を柱に、感染症薬も開発。食道がん向け腫瘍溶解ウイルスは、2024年中に承認申請を目指す

【12月 日銀金融政策決定会合】

三井氏おすすめ
・三井住友FG(8316 東証PRM)
2022年12月の金融政策決定会合で、長期金利の変動幅が0.5%程度に引き上げられた。金利上昇による利ザヤの改善の期待から、銀行株に注目。同社は長期割安銘柄で利回りも高く、業績も好調だ

【12月 従来型NISA終了】

三井氏おすすめ
・大和証券グループ本社(8601 東証PRM)
2024年からのNISA拡充で投資を始める人が増える見込みで、個人向けの投資商品販売に強い同社に恩恵がありそう。利回りも4%超あり、年2回のカタログギフトがもらえる株主優待も魅力

【12月 リセッション(逆業績相場入り、暴落)の可能性】

三井氏おすすめ
・いちごグリーンインフラ投資法人(9282 東証REIT)
グリーンインフラ(太陽光)に投資する新しいREIT(不動産投資信託)。利回りは5.76%と高く、業績に安定感があり、老後資金や子供の学費のための投資でも選択肢になる銘柄。暴落は買いチャンスか

10月上旬、ノーベル賞発表

 日本株以外にもおすすめはある。三井智映子氏がまず挙げたのは、NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(1570)。

「普通の株と同じように、手軽に購入できるETF(上場投資信託)のなかでも、特に売買高が多い商品です。日経平均の2倍の値動きをするのが特徴で、暴落時に投資すれば“てこの原理”で、より大きなリターンを狙えます」

 さらに三井氏は、One ETF 高配当日本株(1494)も推薦する。

「TOPIXの構成銘柄のうち、10年以上毎年増配しているか、安定した配当を維持している40〜50銘柄の株価指数を指標とするETFです。安定投資をしたい方や、積み立ての選択肢におすすめです」

 櫻井英明氏は一昨年、日本企業として21年ぶりに米NASDAQに新規上場を果たしたメディロムを推す。

「日本国内でヘルスケアスタジオの『Re.Ra.Ku』などを運営する会社です。充電不要で、24時間365日動く活動量計 『MOTHER』を開発して注目されています」

 いっぽう、経済評論家の山崎元氏は「買ってはいけない金融商品」についてこう語る。

「2023年の世界は『金利高→景気減速』。でも、長期、積立投資の観点では今は株式や、株式を投資対象とする投資信託の『仕込みどき』です。ただし、投資信託は手数料の安いインデックスファンド以外はすべてダメです。ドル預金もダメです。4月に日銀が新体制になって金融緩和の縮小が意識されると、年後半にかけて円高が進む可能性があるからです。

 マンション投資は、そもそも業者が用意した個別物件だと、業者の利幅が大きすぎてダメ。また、“金利のある世の中”になった今、金利のない暗号資産やコモディティ(金などを含む商品)など、金利のつかないものの相場は低迷するでしょう。サッカーでいう“我慢の時間帯”です」

櫻井英明氏
日興証券で運用トレーダー、「株式新聞Weekly」編集長などを経て、「兜町カタリスト」編集長。幅広い情報チャネルとマーケット分析、独特の未来予測に定評がある

馬渕磨理子氏
日本金融経済研究所代表理事。マーケティングアナリスト・渡辺広明氏との共著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)が1月24日発売

三井智映子氏
株式会社オフィスはる代表。全国各地でセミナー登壇、企業IR支援をおこなう。投資教育をライフワークとしている。多数の連載、メディア掲載の実績を持つ

山崎元氏
経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員。マイベンチマーク代表取締役。資産運用を中心に、広く発言