仮ナンバーは市区町村が発行するものであり、誰でも簡単に申請可能です。「うっかり車検を切らしてしまった!」そのような場合でも仮ナンバーを使えば自走して車検が受けられます。

ただし、仮ナンバーを利用には多くの制約と注意点があるため、それらをよく知っておく必要があります。

仮ナンバーとは?

仮ナンバーとは、車検切れなど理由で法的に公道走行ができない車に対して、一時的に公道を走行する権限を与えるためのナンバーです。正式名称は「臨時運行許可番号標」といい、申請が通ると赤い斜線が付いたナンバープレートが発行されます。

仮ナンバーの申請許可が降りる車の使用目的は「車検切れの車が継続検査を受けるため」のほか「未登録車の新規検査登録を受けるため」「ナンバープレート盗難による再登録のため」など、特定の用途に限定されます。

申請後は、発行された仮ナンバーと自動車臨時運行許可を掲示することで、車検が切れた状態でも最大5日間に渡り公道を走行できるようになります。ただし、この制度を利用するためには、多くの制約と注意点があることを理解しておかなくてはなりません。

車検切れを起こしたときの仮ナンバー取得・申請方法

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車検や自賠責保険が切れた状態で公道を運転した場合は、非常に重い処分が下されます。仮ナンバーによる臨時運行許可制度はこうしたトラブルを避けるための制度であるため、積極的に利用しましょう。

■仮ナンバーの申請方法

仮ナンバーの申請手続きは、最寄りの市区町村役場で行えるほか、自宅から整備工場までなど申請する経路上の行政機関でも行えます。

申請するタイミングは車を移動させる当日もしくは前日です。行政機関が休みの場合は、休日の前日でも申請を受付けてくれます。

窓口で渡される「自動車臨時運行許可申請書」に住所・氏名・車名・形状・車台番号・運行目的・経路・必要事項・自賠責保険情報を記入し、印鑑を押して提出しましょう。

書類確認と手数料を支払い終えれば、申請後すぐに仮ナンバープレートと、紙面による自動車臨時運行許可証が発行されます。有効期限もその際に通達され、移動地の距離に応じて3日から5日(土・日・祝を含む)の間で決定されます。

・仮ナンバー申請時の必要書類

自動車臨時運行許可申請書(窓口もしくはインターネットからのダウンロード) 自動車の車名や形状、車体番号を確認できる書類もしくはコピー(自動車検査証・抹消登録証明書など) 本人確認書類(運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなど) 警察で発行される盗難届受理番号(ナンバープレート盗難の場合) 自賠責保険証の原本 印鑑(シャチハタは不可) 手数料750円(1件あたり)

仮ナンバーの取得・取り扱いに関する注意点

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■仮ナンバーは車検や新規登録以外での使用は禁止!

仮ナンバーは決められた用途でしか使えません。サーキットやイベントなどでナンバーなし車両を移動させるだけの目的や、日常生活での移動など、制度の趣旨にそぐわない理由での仮ナンバー取得は禁止されています。

また申請ルートを大きく外れた場合や、申請した車両以外の車で使用した場合、虚偽の申請をした場合には違法行為として罰則が科されます。これら違反行為には1年以内の懲役、もしくは50万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。

■ユーザー車検に通らない!仮ナンバー有効期限の延長はできる?

ユーザー車検では、検査に通らず車検手続きに時間がかかる場合があります。そういった場合でも仮ナンバーの有効期限は延長できません。

期限までに車検・登録手続きが終えられない場合は、一度仮ナンバーを返却し、検査時に再度仮ナンバー申請をする必要があります。

■仮ナンバーの有効期限・返却期限までに返さないとどうなる?

仮ナンバーの有効期限は、移動地の距離に応じて3日から5日(土・日・祝を含む)と定められています。使用を終えた仮ナンバーは、許可有効期限終了から5日以内(5日目が土・日・祝の場合は休み明け)に借りた行政機関に返納しなくてはなりません。

返却を怠ると、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科される場合があります。

■郵送返却はできる?

やむを得ない理由により、直接返却ができない場合は郵送での返却も許可されています。

郵送返却をする場合は、事前に郵送での返却になる旨を電話連絡し、送付先の部署などを確認しましょう。郵送および直接返却ともに、ナンバーが汚れている場合は清掃して返却するのがマナーです。

■盗難や紛失の場合はどうすればいい?

仮ナンバーが盗難に遭った場合や、紛失してしまった場合は、最寄りの警察署に遺失届出書を提出し、その際に発行される受理番号を申請した行政機関に伝える必要があります。

さらに、行政機関で紛失届を記入して提出し、仮ナンバー製作費用として1,700円程度を弁償しなくてはなりません。

リアの封印はどうする?仮ナンバーの取り付け方

申請が通ると、前後用の2枚の仮ナンバーが発行されます。フロントは、本ナンバープレートを留めているネジを外し、仮ナンバーに付け替えるだけで装着できます。

封印が施された普通車のリアナンバープレートは、封印は外さず本ナンバーと仮ナンバーを重ねて片側のネジで固定します。ネジ留めできない反対側は、剥がしても跡が残りにくい養生テープなどで固定するとよいでしょう。

軽自動車はもともと封印が施されていないため、ネジを外して本ナンバープレートと付け替えるだけで取付けられます。走行時は臨時運行許可証をダッシュボード上に掲示するのも忘れないようにしましょう。

仮ナンバーで走った場合の保険はどうなる?

仮ナンバー時の走行でも自賠責保険は有効です。そもそも、仮ナンバーの申請には自賠責保険証の原本が必要であるため、自賠責保険未加入の状態では仮ナンバーを取得できません。

そのため、自賠責保険が切れている場合は再加入が必要です。自賠責保険は1ヵ月単位で加入できるため、廃車にするなら最短の1ヵ月で契約し、継続車検を受けるなら長期で契約しましょう。

ただし、自動車の自賠責保険は、バイクのようにコンビニでの手続きは行なえないため、自賠責保険を取り扱う保険会社の支店や窓口におもむく必要があります。

■任意保険は契約できる?

原則として車検が切れた状態では、任意保険の新規加入や更新をすることはできません。ただし、一部の保険会社では例外的に仮ナンバー状態での保険加入を認める場合もあるようです。仮ナンバーで任意保険に加入したい場合は、保険窓口への事前確認が必須です。

1日限定の自動車保険は仮ナンバーの対象外です。1日自動車保険は、そもそも本人名義の車には保険がかけられない仕組みになっているため加入できません。

保険会社によっては、任意保険が契約期間中であれば、車検切れの車でも保険金が支払われる場合があります。こちらも会社によって補償内容が異なるため、契約中の保険会社窓口へ確認してみましょう。

車検切れを起こした際、仮ナンバー取得以外の対処方法はある?

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車検切れの状態は、公道への接地自体が認められていないため、仮ナンバーを掲示しなければ車両による牽引はもちろん、レッカー車による移動もできません。

そのため、仮ナンバー取得する方法以外で車検切れの車を移動させるには、車をまるごと載せられる積載車で運搬する必要があります。積載車の手配には、近隣の移動でも2万円から3万円ほどの費用がかかります。自走できる車は仮ナンバーの取得申請をし、自走できない車は陸送で運搬してもらいましょう。

平日の仮ナンバー取得手続きができない場合は、申請を代行してもらう方法もあります。自動車整備業者に車検や廃車の手続きを依頼すれば、費用はかかるものの、車の状態に応じて仮ナンバー取得や積載車の手配をしてくれます。