大谷翔平(エンゼルス)が前人未踏の規定投球回&規定打席到達を果たし、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)はア・リーグ新記録となるシーズン62本塁打。さらに今シーズン限りで引退するアルバート・プホルズ(カージナルス)は史上4人目となる通算700本塁打到達など、いずれは「あの年はすごかった」と、誰もが語るであろう2022年のMLBレギュラーシーズンは、現地時間10月5日に全日程が終了。いよいよワールドシリーズに向けてのポストシーズンがスタートする。

 今季からポストシーズンに進めるチームの数が12に増え、ワイルドカードは3戦2勝方式に変更。試合は上位シードのホームですべて開催されることになった。そしてワイルドカードを勝ち上がったチームは、上位シードと地区シリーズで対戦する。まずは現地10月7日から行なわれる、ワイルドカードに出場する8チームを紹介したい。


 

<アメリカン・リーグ>

チーム状態は絶好調

◎クリーブランド・ガーディアンズ(第3シード)/92勝70敗

【先発予想】
Game1:シェーン・ビーバー
Game2:トリストン・マッケンジー
Game3:カル・クァントリル

 9月4日以降、MLBトップの23勝(7敗)という驚異的な数字を残し、絶好調のままワイルドカードへ突入。

「クリーブランドの永久欠番になりたい」と、開幕直前に7年契約を結んだホセ・ラミレスを中心に、攻守両面で成長したアンドレス・ヒメネス、今季メジャー2位となる1試合3安打を17回記録したアーメッド・ロザリオ、4月と9月にア・リーグ月間最優秀新人を受賞したスティーブン・クワンなどの成長した若手が揃う。

 長打力のある打者は少ないながらも、リーグ2位の盗塁数を誇る機動力も絡ませて、ア・リーグ打点2位のホセ・ラミレスの前に走者をためることができるかがカギとなる。

 投手陣は、エースのシェーン・ビーバーを筆頭に、今季急成長し後半戦絶好調のトリストン・マッケンジーといった先発陣に、セットアップを務めるジェームズ・カリンチャック、そして平均100マイルのカッターを投げるクローザーのエマニュエル・クラッセまでつなげば、固い守備陣もバックに勝利を呼び込むことができるだろう。

ケガ人続出も試合巧者ぶりを発揮

◎タンパベイ・レイズ(第6シード) /86勝76敗

【先発予想】
Game1:シェーン・マクラナハン
Game2:タイラー・グラスノー
Game3:ジェフリー・スプリングス

 4年連続ポストシーズン進出もケガ人が続出。正捕手のマイク・ズニーノや外野の中心ケビン・キアマイアーがいないなか、チームをやり繰りしながらなんとか最終スポットを手に入れた。

 ただ投手陣は9月のチーム防御率がリーグ3位と好成績。サイ・ヤング賞候補にも名を連ねた2年目シェーン・マクラナハン、トミー・ジョン手術から間に合いそうなタイラー・グラスノーといった予定されている先発陣が好投すれば、かつてガーディアンズのテリー・フランコーナ監督のもとでコーチをしていたケビン・キャッシュ監督が、さまざまな策を用いて少ないチャンスをものにするだろう。

 打撃陣の期待は右手首を痛め、夏に約2カ月欠場したワンダー・フランコ。復帰以降は打率3割2分台をキープ。10月3日には久しぶりのホームランも放った。

 レイズは強打者が揃うブルージェイズを避けてガーディアンズとの対戦を選び、さらにそこを勝ち抜けば戦い慣れているヤンキースが待つ第6シードをあえて選んだ(ゆえに終盤は負けが先行)のでは......との情報も。


昨年、大谷翔平とMVPを争ったウラディミール・ゲレーロJr

菊池雄星のロースター入りは?

◎トロント・ブルージェイズ(第4シード)/92勝70敗

【先発予想】
Game1:アレック・マノア
Game2:ケビン・ゴウズマン
Game3:ロス・ストリップリング

 チームの中心ウラディミール・ゲレーロJrや今季ア・リーグ最多安打ボー・ビシェットをはじめ、ジョージ・スプリンガーやアレハンドロ・カークといった打線は、チーム打率・出塁率・長打率・OPSがすべてリーグ1位と超強力。

 投手陣は9月の月間最優秀投手アレック・マノアが第1戦先発は間違いないものの、第2戦先発予定のケビン・ゴーズマンは10月2日の登板で右手中指の爪の近くを切ってしまい3回で降板。決め球スプリットを投げる際に影響するため、完治しているかどうかが気になるところだ。

 絶対的クローザーのジョーダン・ロマノにつなぐセットアップは、2016年の日本シリーズで3勝を挙げた元日本ハムのアンソニー・バスがトレードデッドラインで加入したことにより層が厚くなった。

 今季途中でリリーフ転向となった菊池雄星は、僅差の試合や重要な場面において当初は信頼が薄かったものの、シーズン最終盤で4試合連続無失点、ロースター入りの当落線上にいる状況だ。

 レギュラーシーズンのホームでスウィープされたマリナーズに対しリベンジなるか、それとも苦手意識を払拭できずにいるのか......。

強力投手陣で21年ぶりのポストシーズン

◎シアトル・マリナーズ(第5シード) /90勝72敗

【先発予想】
Game1:ルイス・カスティーヨ
Game2:ローガン・ギルバート
Game3:ロビー・レイ

 今季のブルージェイズ戦はカナダからファンが大挙押し寄せ、「ビジター化」してしまったホームゲームで1勝2敗だったものの、7月のロードでは14連勝中の真っ只中ということもあり4連勝。通算5勝2敗と勝ち越した。

 投手陣はトレードデッドラインで獲得したルイス・カスティーヨが期待どおりの活躍を見せて第1戦の先発に抜擢。10月からカナダの法律が変更となりワクチン未接種でも入国可能となった2021年サイ・ヤング賞投手のロビー・レイ、2年目ながらWAR(勝利貢献指標)が今季チーム投手で1位のローガン・ギルバートといった先発陣は駒が揃っている。

 また「ロス・ボンベロズ(消防士たち)」との愛称がついたリリーフ陣も強力。21年ぶりポストシーズン進出の立役者となった。

 そしてイチローの愛弟子であり、ルーキーとして史上3人目となる25本塁打&25盗塁を達成したフリオ・ロドリゲスが腰痛から10月3日に復帰。健康な状態でワイルドカードに臨めるかがカギとなるだろう。ただ、ベンチから代走や守備で貢献するサム・ハガーティがシーズン終盤にケガでIL入りし、スコット・サービス監督を悩ませている。

<ナショナル・リーグ>

超強力2枚看板は健在

◎ニューヨーク・メッツ(第4シード)/101勝61敗

【先発予想】
Game1:マックス・シャーザー
Game2:ジェイコブ・デグロム
Game3:クリス・バシット

 6月1日の時点で最大10.5ゲーム差をつけて首位にいたメッツだったが、昨季世界一のブレーブスに追い上げられ、9月30日からの直接対決3連戦でスウィープされた。結局、ナ・リーグ東地区では101勝61敗とブレーブスと同率ながら、直接対決の結果によって7年ぶりの地区優勝をさらわれワイルドカードへと回った。

 ただ9・10月は18勝13敗とチーム状態は決して悪いわけではない。昨年のポストシーズン4登板で防御率2.16、キャリアを通じて初のセーブも記録したマックス・シャーザー、そして対パドレスの通算成績は6勝3敗、防御率1.28と相性のいいジェイコブ・デグロムの先発二枚看板が期待どおりの快投を見せてくれれば、突破の期待も高まる。

 今季ナ・リーグ打点王のピート・アロンゾ、そして彼の前を打つ今季ナ・リーグ首位打者に輝いたジェフ・マクニールやフランシスコ・リンドーアを中心とした強力打線も自ずと機能するはず。

 対戦相手であるパドレスと比べて、レベルが上であることは間違いない。これまでポストシーズンで結果を残すことができていない名伯楽、バック・ショーウォルター監督の采配も気になるところ。


今シーズン自己最多タイの16勝を挙げたダルビッシュ有

健闘光るNPB経験組

◎サンディエゴ・パドレス(第5シード)/89勝73敗

【先発予想】
Game1:ダルビッシュ有
Game2:ブレイク・スネル
Game3:ジョー・マスグローブ

 フェルナンド・タティースJr.は開幕前にバイク事故で長期離脱、さらに復帰直前の薬物陽性反応で出場停止。またトレードデッドラインでホアン・ソト、ジョシュ・ベル、ジョシュ・ヘイダーを一気に獲得し、後半戦の主役に躍り出るかに見えたものの、全員が揃って絶不調......。

 それでも先発投手陣では9月の月間最優秀投手に選出されたダルビッシュ有とジョー・マスグローブが安定した投球を見せ、ブルペン陣はニック・マルティネスやロベルト・スアレスのNPB経験組を中心に全員が奮闘。9月に入って移籍組も持ち直し、なんとか第5シードを手にした。

 メッツの超強力先発陣を崩すには、開幕から攻守ともに気を吐いていたマニー・マチャドの前に、フアン・ソトをはじめ、前を打つ打者がどんな形であれ出塁することがカギとなる。

 ワイルドカードではロングリリーフ役を任される予定だったマイク・クレビンジャーがレギュラーシーズン最終戦の先発登板を回避し故障者リスト入り(コロナ陽性の可能性もあり)、それによるブルペン陣への負担が気になるところ。

レジェンドたちの最後の勇姿を見逃すな

◎セントルイス・カージナルス(第3シード)/93勝69敗

【予想先発】
Game1:ホセ・キンタナ
Game2:マイルズ・マイコラス
Game3:アダム・ウェインライト

 ポストシーズンでフィリーズと対戦するのは2011年のディビジョンシリーズ以来。その時は3勝2敗で勝利した。それで勢いに乗ったチームは、一気にワールドシリーズまで勝ち上がり、5年ぶり11度目の世界一に輝いた。

 その時のメンバーだったアルバート・プホルスがチームに復帰。また同じく当時のメンバーだったヤディアー・モリーナとアダム・ウェインライトが揃ってラストイヤーを飾る(ウェインライトはまだ引退を明言せず)。カージナルスファンにとっては、このポストシーズンの戦いは目に焼きつけておきたいはず。

 三冠王に迫る成績を残したポール・ゴールドシュミット、またWAR(勝利貢献指標)はチームトップのノーラン・アレナドを中心に役者が揃う。また今季は打撃も好調だった内野守備の名手トミー・エドマン、WBC日本代表入り資格保持者でもあるラーズ・ヌートバーといった若手も追随する形で、チーム伝統の堅実な野球を遂行して得点を稼ぐ。

 ただクローザーを務めるライアン・ヘルスリーは10月4日の登板で右手中指を痛め降板。どこまで回復しているのか、状態が気になるところ。

監督解任後から怒涛の快進撃

◎フィラデルフィア・フィリーズ(第6シード)/87勝75敗

【先発予想】
Game1:ザック・ウィーラー
Game2:アーロン・ノラ
Game3:レンジャー・スアレス

 6月2日の時点で22勝29敗、ジョー・ジラルディ監督が解任され、後任として監督代行に就任したのがヤンキース時代からジラルディの参謀を務めていたロブ・トムソン。選手たちとの対話を重視し、「我々はロブについていく」とチームがまとまった結果、勝率6割超えの好成績を挙げ、11年ぶりのポストシーズン進出をつかんだ。

 たび重なるケガから8月下旬に復帰した主砲のブライス・ハーパーは、MVPを獲得した昨季同様の活躍を見せた。またメジャーデビューから11年目にしてポストシーズン初出場を果たしたジーン・セグラ、同じく9年目にして初出場のJ.T.リアルミュートのベテラン勢の活躍も期待できる。

 東京五輪でアメリカ代表として活躍し、今夏のトレードで加入(=出戻り)した37歳のクローザー、デヴィッド・ロバートソンもフル回転の働きでチームの勝利に貢献した。

 相手は、今季レギュラーシーズンで4勝3敗と勝ち越しているカージナルスだが、チーム最後のポストシーズン出場となった2011年ディビジョンシリーズで惜敗した因縁の相手でもある。

 2016年にカブスでワールドチャンピオンを経験し、今季の本塁打王カイル・シュワーバーは「ポストシーズンはレギュラーシーズンとはまったく別物だ」と発言。第6シードからの下剋上なるか注目だ。