森粼浩司が選ぶ、J1おすすめの11人

10月1日から再開されるJ1は、各チーム残り4〜5試合のラストスパートの状態だ。激しい優勝争い&残留争いのなかで、注目の選手は誰か。今回はサンフレッチェ広島のアンバサダーで解説者の森粼浩司氏に、今シーズンのラストで見ておくべき、おすすめの11人を紹介してもらった(データは9月18日終了時点)。

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「どこにでもいる」と思わせる運動量を誇る、セレッソ大阪のMF奥埜博亮

今季キャリアハイの出来

西川周作(GK/浦和レッズ)

 浦和レッズは今季ここまで最少失点で、その大きな要因の一つに西川周作選手の存在があります。J1通算無失点試合数歴代1位も達成して、パフォーマンスを見ても非常に充実したシーズンになっていると思います。

 決定機を止めるGKとしての能力が高いのはもちろんですが、何より足元の技術の高さ。彼の左足のキック一本で状況を一気に変えられる攻撃的なGKというところが、個人的には一番インパクトがあります。

 GKコーチが変わって、練習の質や量が変わったということですが、新しい取り組みをしながらこれだけのパフォーマンスを発揮して、いまなお進化している。日本代表になぜ選ばれないのだろうと思うくらいの活躍に注目してもらいたいですね。

佐々木翔(DF/サンフレッチェ広島)

 サンフレッチェ広島の選手ですが、今季の佐々木翔選手はキャリアハイのパフォーマンスを見せてくれていると思います。もともと1対1の強さ、上背は高いわけではないですけど、ヘディングの強さは彼のストロングポイントです。

 それにプラスアルファで、今季はビルドアップ能力が図抜けていますね。彼から出る、決定機の一つ前のチャンスメイクのパス精度が高くて、柏好文選手や満田誠選手などと絡んでくると、非常に分厚い攻撃につながっています。

 今季は過密スケジュールでコンディションの維持が難しかったわけですが、そのなかでも彼はパフォーマンスが落ちませんでした。体の強さやコンディショニング、精神的な強さ、攻守の貢献度は、今の広島の好調を支えていると思います。

存在感のあるDFたち

ジェジエウ(DF/川崎フロンターレ)

 ほかにアレクサンダー・ショルツ選手(浦和)や谷口彰悟選手(川崎)など候補がいましたが、ケガから復帰したジェジエウ選手の存在感の大きさは、広島との試合で見せつけられました。

 川崎としては裏へのロングボールの怖さがぐっと減って、高いDFラインを保つ上で、彼の幅広くカバーできるスピード、圧倒的な対人能力が欠かせないことを改めて実感しました。GKチョン・ソンリョン選手との連携もスムーズで、谷口選手と2人が揃った時の安定感はJでも屈指の守備ラインだと思います。

 横浜F・マリノスとの第24節では、アディショナルタイムに劇的な決勝ゴールを決めるシーンがありました。ああいったラストワンプレーだったり、難しいゲームだったり、そういうところでの勝負強さや攻撃での期待値も含めて、彼が帰ってきたのは本当に大きかったと思います。

山原怜音(DF/清水エスパルス)

 左サイドバック(SB)は、セレッソ大阪の山中亮輔選手とも迷ったんですが、清水の山原怜音選手を選びました。山原選手はオールラウンダーで、ドリブルの推進力やスピードのあるSBだと思います。そのなかでも、キックの質の高さは目を見張るものがあります。

 両足で蹴れるのも魅力で、左サイドから多くのチャンスメイクをしていますし、セットプレーでも彼のキックは武器で、実際に7アシストと数字も残しています。

 守備面でも体が強く、1対1の場面でも止められるので安定しています。ドリブル突破や高精度のキックなど、見ていてワクワクするし、何かやってくれそうな雰囲気を持っていて、個人的に日本代表で見てみたいSBです。

岩田智輝(DF/横浜F・マリノス)

 岩田智輝選手は、横浜FMではCBやボランチがメインのポジションになりますが、彼の最大の特長である攻撃力というところで、右SBとして選びました。

 タイミングのいいオーバーラップは安定しているし、インターセプトをしてからそのままの勢いで持ち上がり、後ろから数的優位の状況を作ることもできる。ビルドアップ能力も高く、状況判断がよくて簡単にボールを失わない技術もあります。

 もちろん、守備の能力も非常に高い。準備がいいし、どこにパスが出てくるかを的確に予測して、相手の前に入ってインターセプトするシーンはよく目にします。ボールを奪いきる能力も優れていて、攻守に横浜FMにとって欠かせない選手だと思います。

J1屈指の運動量

野津田岳人(MF/サンフレッチェ広島)

 背番号7を受け継いでくれたことで個人的に愛着のある選手ですが、今季ボランチとして能力が開花し、飛躍した今のパフォーマンスはぜひ見ていただきたいと思います。彼がいるのといないのとでは、チームの力が全然違うほど存在感があります。

 もともと攻撃の能力に長けていますが、今季、より際立つのは守備力です。とくにボール奪取の部分は非常に成長を感じさせてくれています。それに加えて毎試合チームで一番走っていて、運動量は抜きん出ています。

 攻撃になれば彼の展開力によって中盤の底から起点になれるし、左足のパンチ力はミドルシュートやFKで相手の脅威になっています。攻守にチームのバランスを取れる存在になったのも今季の大きな成長です。

 スキッベ監督によってボランチの才能を見いだされ、ようやく自分の生きる道、居場所を見つけることができたと思います。

奥埜博亮(MF/セレッソ大阪)

 奥埜博亮選手は、今季ボランチのポジションを選出する上で外せない存在だと思います。試合を見ていると「どこにでもいるな」と思うほど、本当に攻守に広い範囲をカバーしていますよね。数字としても毎試合走行距離が12kmを超えていて、運動量はJリーグのなかで群を抜いています。

 守備では危ないところを必ず彼がカバーして潰してくれますし、奪ったボールを的確に展開しながらスルスルと上がって、FWを追い越してゴール前まで入って得点も奪ってしまう。それを可能にしている戦術眼もすばらしく、現代のボランチの一つの理想的な選手だと思います。

 それだけのパフォーマンスを90分間途切れずに続けられるし、この試合はよくて、この試合はダメだったということもない。その抜群の安定感とハイパフォーマンスが今季のC大阪の好調を支えていると思います。

鈴木優磨(MF/鹿島アントラーズ)

 トップ下には、本当にたくさんの候補がいて非常に悩みました。そのなかで本来はFWですが、鈴木優磨選手を選出しました。

 彼は「鹿島を勝たせたい」という思いが誰よりも強くて、強烈なメンタリティによってチームを牽引しています。得点能力はもちろん高いものがありますが、それよりも目を引くのはアシストのところ。

 7得点9アシストと、アシストランク1位の数字からもわかるとおり、ラストパスの精度が際立っています。

 気持ちが強すぎて相手とひと悶着あったり、レフェリーの判定になにか言ったりということもありますが、彼がボールを持つとなにかやってくれそうな雰囲気があって、どんなプレーをしてくれるのかいつも期待してしまいます。

ヘディングではJリーグで抜けた存在

家長昭博(FW/川崎フロンターレ)

 今の家長昭博選手のクオリティは、誰もマネできないレベルだと思います。ボールキープ力は間違いなくJナンバーワン。体がそれほど大きいわけではないですが、体の強さと腕の使い方、体幹の強さは圧倒的で、誰がボールを取りに行っても取れないですよね。

 彼にボールが入ると、スピードの変化や相手の守備網にギャップを作るなど、攻撃に変化を加えてくれるので、相手からすると非常に厄介な選手です。また、ボールを失わない信頼の下、周りの選手は安心して動き出せて、とくに山根視来選手とのコンビネーションは抜群です。

 また、対角へのクロスも精度が非常に高く、逆サイドの選手を生かすこともできます。今季は得点も二桁取っていて、自ら決定的な仕事もしているので、ちょっと手がつけられないですね。

マルシーニョ(FW/川崎フロンターレ)

 横浜FMのエウベル選手やFC東京のアダイウトン選手とも迷いましたが、マルシーニョ選手の突破力というところで選びました。やはり一番の武器はスピードだと思います。彼のところで1対1の局面を作られると、相手は簡単には止められません。

 また、チームに馴染んでいくことで、単独の突破だけでなく、周りとのコンビネーションで打開する場面も増えてきました。彼も家長選手同様に得点力もあって、自ら決定的な仕事もできる選手です。

 家長選手のキープと展開力、マルシーニョ選手の突破力という非対称な両翼の活躍が、川崎の3連覇のためのキーになると思います。

チアゴ・サンタナ(FW/清水エスパルス)

 清水エスパルスは残留争いのなかにいてチームとしては正念場ですが、チアゴ・サンタナ選手個人としては得点ランキング1位で、今もっとも怖いFWだと思います。

 体が非常に強くて、ボールがしっかり収まるし、彼が攻撃の起点になることで清水の攻撃が始まっていると言っても過言ではないです。今の彼はDFが1人で止めるのは難しく、ボランチのプレスバックなど複数での対応が必要になります。

 フィニッシュの場面になると横から入ってくるボールに対して無類の強さがあり、クロスやセットプレーでのヘディングの脅威はJリーグでは抜けた存在だと思います。また左足のミドルシュートも強力で、どこにいても怖さを感じる選手ですね。

<森粼浩司氏が「とても悩んだ!」その他のベストイレブン候補>

谷晃生(GK/湘南ベルマーレ) 
大迫敬介(GK/サンフレッチェ広島) 
谷口彰悟(DF/川崎フロンターレ) 
アレクサンダー・ショルツ(DF/浦和レッズ) 
山根視来(DF/川崎フロンターレ) 
酒井宏樹(DF/浦和レッズ) 
毎熊晟矢(DF/セレッソ大阪) 
山中亮輔(DF/セレッソ大阪) 
脇坂泰斗(MF/川崎フロンターレ) 
松木玖生(MF/FC東京) 
樋口雄太(MF/鹿島アントラーズ) 
山岸祐也(MF/アビスパ福岡) 
森島司(MF/サンフレッチェ広島) 
満田誠(MF/サンフレッチェ広島) 
エウベル(FW/横浜F・マリノス) 
アダイウトン(FW/FC東京) 
町野修斗(FW/湘南ベルマーレ) 
細谷真大(FW/柏レイソル) 
アンデルソン・ロペス(FW/横浜F・マリノス)