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在宅勤務で身近になったオンライン会議。中には必ずカメラをオンにして会議している人もいると思いますが、弁護士ドットコムには「カメラを自費で購入するよう言われた」という相談が寄せられています。

●【相談】

IT企業に勤めており、在宅勤務をしています。月一で社員全員の集まりがあり、オンライン会議システムにログインしてディスカッションをします。

私のPCは内蔵カメラが壊れているので、カメラ無しで参加しています。ですが、人事から「カメラ無しだとコミュニケーションを取りにくいため、カメラオンで参加するように。カメラを持っていない場合は、(ウェブカメラを)自費で購入するように。応じない場合は、昇給の査定に響く減点をする」と言われました。

私はカメラオフでもなんら支障がありませんし、なぜ企業が私のお金の使い道を決めるのかと疑問です。私は自費でのカメラ購入に応じなければいけないのでしょうか。

●【回答】カメラオンは有効な業務命令(戸田哲弁護士)

そもそも、在宅勤務中の社内会議で、こうした「カメラオン」の指示に従わないといけないのかという相談を受けることがありますね。ここは、費用負担がどちらかを検討する前提となりますので、お話しします。

非対面となる在宅勤務での勤務では、コミュニケーション自体が取りづらく、互いに顔を合わせるという目的も重要です。顔をつき合わせることで、表情・顔色を含めて健康状態を把握できるという面も無視できませんから、会社としては必要な面はありますし、反面、顔を出すだけで大きな不利益があるとは言えません。

在宅勤務でなければ会社では日常的に対面しているわけですし、社内会議の際に「顔を隠したい」という要求は通常あり得ないでしょうから。

ということで、会社の方からカメラをオンにせよとの要求をすること自体は、有効な業務指示・業務命令となります。

もちろん、在宅勤務では自宅内のプライベート空間が映り込むことにプライバシーの問題が生じますから、背景が映らないように設定することはもちろん問題ありません(背景も映るように命令するのなら、それは「リモートハラスメント」です)。

●就業規則に規定しなければならない

さて、問題は、この命令に従う場合に、カメラの費用負担を従業員がするのか、という点ですね。

在宅勤務での費用負担については、法律上の規定があるわけではなく、ここは労使の協議に委ねられていて、できる限りルール化せよというのが厚生労働省が定める「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021年)の趣旨です。

ただ、今回、昇給査定にも響くなどと言っていますし、カメラオン命令は業務命令として、強制の度合いは強いですね。

上記のガイドラインでは、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならない(労働基準法第89条第5号)としています。今回のカメラ修理費用は、会社の業務に必要な「情報通信機器」の負担です。

会社の在宅勤務規則など労働者の費用負担であることを規則で明記しない限りは、その費用は会社が負担しなければならないでしょう。なので、会社に購入してもらうか、負担した費用を請求することができるでしょう。

【取材協力弁護士】
戸田 哲(とだ・さとし)弁護士
千葉県弁護士会 労働問題対策委員会副委員長。労働者側・使用者側の双方の事件を数多く取り扱い、「労働」分野の総合対応を強みとする。労働事件専門講師経験も多数(弁護士会主催研修、社会保険労務士会主催研修、裁判所労働集中部主催労働審判員対象研修等)。Ⓡ労務調査士
事務所名:弁護士法人戸田労務経営
事務所URL:http://roudou.nishifuna-law.com/