今からハマるのも遅くない!『ゲーム・オブ・スローンズ』が世界的メガヒットした理由
今、世界中で話題となっているファンタジードラマ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』(以下『HOTD』)。全米&ヨーロッパにて米HBO史上最多視聴者数の記録を樹立し、早くもシーズン2の製作が決定している。そのドラマシリーズの原点となるのが、世界的メガヒットとなった大河ファンタジードラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』(以下『GOT』)だ。
2010年代を代表する海外ドラマにして、世界中に社会現象を巻き起こした伝説のドラマシリーズだが、まだ見たことがないという方も当然いるはず。ということで、『HOTD』が盛り上がっている今だからこそ、おさらいとして『GOT』の世界的メガヒットの理由を深掘りしたい。
『ゲーム・オブ・スローンズ』原作は世界的ベストセラーファンタジー小説
『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作は、1996年に発表されて以来、累計7000万部突破(※2018年時点)の世界的ベストセラー小説で、日本では早川書房から出版されている「氷と炎の歌」だ。中世イギリスを思わせるような架空の大陸ウェスタロスを舞台に、大陸を支配する各王家の権謀術数がうごめく覇権争いと戦乱を中心に描き、魔法やドラゴン、そして世界を揺るがす強大な存在との戦いなども盛り込まれた壮大な大河ファンタジー小説となっている。
映画『ロード・ オブ・ザ・リング』の原作「指輪物語」のようなハイ・ファンタジー作品で、現代最高の異世界戦史とも評される「氷と炎の歌」。その著者でもあるジョージ・R・R・マーティンはドラマ版の初期段階から製作に関わっている。
テレビシリーズ『美女と野獣』の脚本や、その他のドラマ作品で製作総指揮なども務めた経験もあり、テレビ業界を知ってもいる。そんな原作者が『GOT』において共同製作総指揮・脚本を務めるということで、原作のエッセンス損なわないクオリティーのあるドラマとなるのは必然だったとも言える。
テレビドラマの枠を超えた製作費で重厚なファンタジー世界を実現
『GOT』は一目見ただけで、そのクオリティーに目を奪われるドラマシリーズだ。それもそのはず、第1章では1話につき600万ドルが投じられ、最終章にいたっては1話につき1500万ドル以上、シーズントータルは1億1500万ドルを越えるというハリウッドの大作映画にも引けを取らない桁外れの製作費が投入されている。
その莫大な製作費によって、重厚なファンタジー世界があたかも存在するのかのようにリアルかつ、細部にわたって緻密に作り上げられている。
北アイルランド、クロアチアのドブロヴニク、スペインやマルタにアイスランドといった中世時代そのままのたたずまいを残す美麗なヨーロッパ各地でのロケーションに、現存する城へセットを追加して実現したウィンターフェル城など巨大で豪華な舞台。様々な民族の衣装や小道具の数々、何百人にも上るエキストラが武器・甲冑をまとって参加する大迫力の合戦シーン。
そして、ドラゴンやホワイトウォーカーといったモンスターをリアルに実現させる一級品のCG技術。その映像は、映画館の大スクリーンでの上映でもなんら問題ないほどのクオリティーとなっている。
個人的には、王家の軍勢とドラゴンが戦う第七章の第4話「戦利品」を初視聴した時に、その圧倒的なスケール感と映像に度肝を抜かれたことを今でも鮮明に覚えている。
シーズン1はファンタジー描写をあえて抑えて、人間ドラマを中心に
映画『ロード・オブ・ザリング』(2001)の世界的大ヒットにより、ファンタジー作品の映像化への道がより開かれたものの、いまだにドラマシリーズでは、現代物ではないSFやファンタジーといったジャンルのドラマを敬遠する方が多いのも事実。
しかし、『GOT』の第一章では、魔法やモンスター、ドラゴンのようなファンタジー要素が抑えめで、各王家の人間たちにフォーカスして、モチーフとしている史実にあった薔薇戦争のような歴史大河ドラマの様相を示しており、またデナーリスといった女性の活躍や奴隷解放などのテーマも盛り込み、多くの登場人物が絡み合う人間ドラマを中心とした作品となっている。
そのおかげで、ファンタジーが苦手な人たちにも比較的に受け入れられ、幅広い視聴者層を獲得することができたのも世界的な社会現象を巻き起こす一因になったと言えるだろう。
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想像を越える衝撃展開の連続とR指定描写で話題作りに成功
『GOT』は物語の展開上、主要人物でも容赦なく死んだり、視聴者の想像を超える衝撃的な展開が次から次へと起こる。そのため、原作とは違う展開もあることから、放送の翌日には次に誰が死ぬのか、鉄の玉座には誰が座るのかなどの話題で持ちきりになるほど社会現象を巻き起こした。
さらに、R15指定作品ということで、官能的なセックスシーンや残虐なシーンなど刺激の強い描写が満載となっており、有料チャンネルであるHBOらしさが存分に現れている作品にもなっている。その結果、普段テレビドラマに興味がないという人々も惹きつけることに成功した。
特に、第一章の第9話「ベイラー大聖堂」での主人公と思われたエダード・スタークに待ち受ける運命や、第三章の第9話「キャスタミアの雨」での“釁(ちぬ)られた婚儀/レッド・ウェディング”と呼ばれるシーンはあまりにもショッキングで放送後には大きな話題となった。当時のアメリカ大統領で、『GOT』のファンを公言していたバラク・オバマが“釁られた婚儀”をスピーチのジョークに用いたというエピソードもあるほどだ。
個人的には、第四章の第8話「山と毒蛇」でオベリン・マーテルがマウンテンにXXされるシーンの描写がダントツにエグイと思っていますが(笑)
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演技派俳優たちが生み出す重厚感と『GOT』俳優のブレイク
出演者はというと、メジャーな人気俳優はエダード・スタークを演じたイギリスの名優ショーン・ビーンぐらいではあるが、タイウィン・ラニスター役のチャールズ・ダンス、ジョラー・モーモント役のイアン・グレン、サーセイ・ラニスター役のレナ・ヘディ、ジェイミー・ラニスター役のニコライ・コスター=ワルドーといった英国や欧州の演技派俳優が多数顔をそろえている。中世イギリスをモチーフとしている世界観だけに、このこだわりのキャスティングがドラマとしての重厚感と説得力を生み出しているのは間違いない。
加えて、それまでメジャーではなかった『GOT』俳優たちが次々とブレイク。ジョン・スノウ役のキット・ハリントンがマーベル映画『エターナルズ』への出演や『ガンパウダー』に主演、オベリン・マーテル役のペドロ・パスカルは『ナルコス』への出演や『マンダロリアン』に主演、カール・ドロゴ役のジェイソン・モモアはアクアマン役でDC映画『ジャスティス・リーグ』や『アクアマン』に出演。
米国映画サイトTC Candlerの2013年「世界で最も美しい顔100人」ランキングで1位に輝いたエミリア・クラークは、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』や『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』に出演。『GOT』への出演をきっかけにスターダムへとのし上がる俳優たちが続出し、ますます『GOT』の人気に拍車をかけることになった。
エミー賞受賞でさらに話題に。史上最多通算59賞受賞
ファンタジードラマとしては異例づくしとも言える『GOT』。エミー賞でも、第一章がスタートとした2011年の第63回エミー賞では作品賞(ドラマ部門)のノミネートと、ティリオン・ラニスター役の個性派俳優ピーター・ディンクレイジが助演男優賞を受賞することで話題となった。
そこを皮切りに『GOT』は毎年エミー賞の常連となり、最終章が放送された2019年の第71回エミー賞ではエミー賞史上最多の32部門ノミネートと、第五章での最多受賞と並ぶ12部門受賞を果たし、作品通算でも59賞受賞というエミー賞史上最多受賞の記録を打ちたて、その人気を不動のものとしたのだった。
2019年に完結して一旦は幕を閉じたが、ターガリエン家の内乱“双竜の舞踏”を描く前日譚『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』が好スタートを切り、再び注目を浴びる『GOT』。さらには、ジョン・スノウを主人公とした後日譚となるスピンオフ『SNOW(仮原題)』のほか、『Game of Thrones: Dunk and Egg(原題)』、『10,000 Ships(原題)』、『9 Voyages(原題)』といったスピンオフの企画も進行しており、『GOT』ワールドはさらに広がり続けている。
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『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の盛り上がりで『ゲーム・オブ・スローンズ』を初めて知ったという人も、今からハマるのも遅くないので、この史上最高の大河ファンタジードラマをぜひ視聴してみてはいかがだろうか。
『ゲーム・オブ・スローンズ』は、U-NEXT(ユーネクスト)にて独占配信中。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は後半戦に突入。毎週月曜日に1話ずつ配信。
(豹坂@櫻井宏充)