サッカー日本代表にさほど興味のない人がこの試合を観たら、リピーターにはなってくれなかっただろう。
 7月24日に行なわれた中国戦である。

 テレビのスポーツ観戦は、リモコンとの「格闘」だ。視聴者はワンタッチでチャンネルを変えることができる。僕自身も退屈さを感じたら、すぐにリモコンのチャンネルボタンを押している。

 では、どんな試合なら視聴者に観てもらえるのか。
 ひとつめは、著名な選手が出ていることだ。名前と顔が一致する選手がいれば、「ちょっと観てみようかな」という気持ちになるものだ。パリSGのツアーは、このパターンに当てはまる。

 ふたつめは、勝負の重みがあることだ。W杯本大会やW杯アジア最終予選などは、誰が出ているのか、どの国と対戦しているのかをひとまず脇に置いても、観てみようかと思わせる価値がある。

 逆に、自分の知っている選手が出ていなくて、馴染みのない大会や試合だとすると、テレビで観続けるのは難しい。今回のE-1選手権は、まさにそんな大会である。

 それでも観てもらうには──スリリングな試合展開でなければならない。
 中国戦の日本は、20本のシュートを浴びせた。中国のシュート数は4本だから、数字のうえでは圧倒したことになる。

 ただ、チャンスの数はそこまで多くない。ビッグチャンスと呼べるのは、後半8分の細谷真大だけだ。

 日本の攻撃からは、シュート数ほどの迫力が感じられなかった。23歳以下の選手を主体とした中国は、5−4−1のブロックを敷いて失点を防ごうとしてきた。日本はブロックのなかへの侵入を試みるが、散発的にしか入り込めなかった。「もっと早くシュートを打てるのに」と思わせる場面もあった。視聴者がスリルを覚える手前で、攻撃を食い止められてしまう。あるいは、自分たちで攻撃をやめてしまう、という場面があったのだ。

 森保一監督の采配が「選手任せ」と言われた。属人的なのは、この大会、この試合に限ったことではない。「選手任せ」というよりも「いつもどおり」の印象がある。今回は即興チームだから、「選手任せ」の印象が強くなるのはなおさらだろう。

 今回のE−1選手権は、結果を求められる大会ではない。カタールW杯のメンバー入りをかけたサバイバルだ。

 だとしたら、システムを揃えるべきではないだろうか。4−2−3−1で戦うのはナンセンス、などと言うつもりはない。W杯はスカウティングの戦いにもなる。オプションは持っておくべきだ。そのうえで言うなら、「海外組を含めたベストのチームに、誰が適応するのか」という視点で選手をチェックするのなら、4−3−3でもプレーさせるべきだろう。

 たとえば、香港戦で2ゴールをあげた西村拓真は、4−2−3−1のトップ下でプレーした。オープンプレーでは町野修斗と2トップのような関係にもなったが、いずれにしても3トップではない。所属する横浜F・マリノスでも、西村はトップ下を任させている。

 3トップならウイングなのか、CFなのか、あるいはインサイドハーフなのか。4−3−3での西村の適性ポジションが、現状でははっきりしないのだ。

 27日に対戦する韓国は、中国、香港を連破している。日本が優勝するためには、勝たなければならない。

 対韓国のノルマとしては、むしろ好都合だ。引分けでも優勝が決まる試合よりも、明らかに見どころはある。サッカーにさほど興味のない人でも、テレビで観てもらえそうな条件が整った。

 勝利を絶対条件としたなかで韓国の強度と向き合い、「個」を発揮する選手は誰なのか。森保監督には4−3−3でプレーする時間も作り、そのなかで選手を見極めてほしい。

 ちなみに、中国戦は10526人の観衆が集まった。

 香港戦と同じナイトゲームでも、豊田スタジアムのほうがアクセスはいい。しかも、名古屋グランパス所属の中谷進之介が先発し、名古屋市出身の宮市もスタメンに名を連ねた。さらに、グランパスの相馬勇紀も、ベンチに控えていた。観客が応援したいと考える選手が、この日は揃っていたのだ。
これで1万人強の観衆を集めたのなら、上出来と言っていい。次の韓国戦は平日のナイトゲームで、中国戦よりも条件は厳しくなる。

 その一方で、勝負の重みは前2試合よりも増す。これでどれぐらいの観衆が集まるのか。韓国戦はスタンドにも注目が集まる。