最強の復しゅう者である“傷の男”スカーを演じた新田真剣佑。

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 数々の作品で強い存在感を示している俳優の新田真剣佑は、『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』(5月20日公開)と『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』(6月24日公開)で、山田涼介演じる主人公エドの前に立ちはだかるスカーとして強烈なヴィラン(悪役)ぶりを発揮している。近年、『るろうに剣心 最終章 The Final』でも、佐藤健演じる緋村剣心の敵を演じた新田。そんな彼が、悪役の魅力や演じるうえで心掛けていることなどを語った。

 世界中に多くのファンを持つ、荒川弘の人気漫画を実写映画化した『鋼の錬金術師』の続編にして完結編となる二部作で、新田が演じるスカーは、アメストリス軍に滅ぼされたイシュヴァールの民の復しゅうのために、すべての国家錬金術師の抹殺を誓う男だ。

 スカーという役について「ただの悪じゃないところが魅力なんです」とキャラクターのバックグラウンドに触れると「ちゃんと背負っているものがあり、過去にあった出来事が心の傷になり、それが復しゅう心に火をつけてしまっている。やり方に賛否はあるかもしれませんが、ブレずにその思いを全うする姿というのは、とても尊い」と共感できるキャラクターであることを強調する。

 新田と言えば、本作のような主人公の敵を演じることもあれば、ヒーロー然とした役柄を演じることもある。そんな彼にとって、悪役を演じるということはどういうことなのだろうか。

 「まず演じ方は全く違います」と切り出すと「悪役はヒーローを立たせるためにいる。もちろん内容にもよりますが、基本的には自分は立ってはいけない。でも主役に対して強い敵であればあるほど、憎たらしければ憎たらしいほど、主役が輝くので、そのさじ加減は難しい。その意味で、ものすごく重要な役割だと思います」

 特に今回演じたスカーは、相手を倒すための動機がしっかりしている。そこが深ければ深いほど、演じがいがあるという。スカーは、アクションを通して怒りや悲しみが想起されるキャラクターだ。新田は「技術はとても重要です」と前置きすると、向上させるには日々の鍛錬はもちろん、もっとも重要なのは「作品を積み重ねて、課題を見つけること」だという。その意味で、本作でメガホンを取った曽利文彦監督との撮影は刺激的だった。

 新田は「曽利監督は海外でも活躍されている方なので、いまのハリウッド事情など、僕の知らない海外の話がすごく興味深かったです。そうした曽利監督の嗜好が、日本映画に注がれていく瞬間を経験できてとても楽しかった。特に僕が海外に行く前の撮影だったので、ワクワクが止まらなかったです」と撮影を振り返った。

 実際撮影現場では、CGでの表現が予定されていたシーンを、急きょ新田が実際に演じることになった場面もあった。「できるのであればやりたい」というのが新田の希望であり、瞬時に「できるか、できないか」を判断できるのも、曽利監督のイメージを共有する手腕の高さだという。「どうしてもグリーンバックの撮影が多い作品というのは、想像力が問われる。そこを非常にスムーズかつリアルに説明していただけるので、イメージがしやすかった」と曽利監督に全幅の信頼を置いていたという。

 “海外”という言葉は、新田にとって非常に興味深いキーワードだという。「日本という小さな島国で撮った作品が、世界に注目してもらえるかもしれないということは、最高のワクワク感です」と目を輝かせると「『ONE PIECE』など実写不可能と言われていた原作が、いまハリウッドで次々に実写化されています。10年前だったらあり得ない話。日本のコンテンツがどんどん映像化されることは、同時に日本の映像界も注目される大きなチャンスだと思うので、この作品を通じて『日本もこれだけ面白い作品があるんだぞ』ということを伝えていければ」と熱い胸の内を明かした。(取材・文:磯部正和)