米Mozillaは5月3日(現地時間)、Webブラウザ「Firefox 100」の安定版の提供を開始した。

1998年にNetscapeが公開したソースコードの共同開発プロジェクトから誕生したFirefox。ITバブル崩壊後の2004年11月に「Firefox 1.0」が登場し、「インターネットをオープンですべての人がアクセスできる場にする」をミッションに、独自の立場からWeb市場に影響を与え続けてバージョン100に到達した。



Firefox 100はメディア体験を改善するアップデートになっている。例えば、ピクチャー・イン・ピクチャー(PiP)がYouTube、Amazon Prime Video、Netflixの字幕に対応する。これは今年初めに開始したMozilla Connectで、コミュニティからフィードバックが寄せられていた機能。これまではPiPに切り替えるとビデオプレーヤーでオンにしていた字幕が失われたが、Firefox 100ではPiP内でも字幕が表示される。また、時間指定されたテキストトラックを表示するWebVTT(Web Video Text Track)形式の字幕やキャプションもPiPでサポートする。

Windows版でハードウェアアクセラレーションによるAV1ビデオエンコーディングが、対応するGPUを搭載したPCで有効化される(AV1 Video Extensionのインストールが必要)。また、IntelのGPUでビデオオーバーレイが有効になり、ビデオ再生時の消費電力が削減される。

Mac版がHDR(ハイダイナミックレンジ)ビデオに対応、macOS Big Sur以降で動作するHDR対応のMacで、YouTubeから利用できるようになる。HDR向けの設定は不要だが、バッテリーの環境設定が「バッテリー使用時のビデオストリーミングを最適化」に設定されていると標準ダイナミックレンジでの再生になる。

言語サポートも強化点の1つ。インストール後の初回起動時に、OSの言語とFirefoxの言語が一致しない場合に、ユーザーがFirefoxの言語を選択できるようにした。また、言語パックを追加することで、スペルチェックで複数の言語を利用できるようになる。言語パックは、テキストフィールドでテキストを選択し、コンテキストメニューで「スペルチェックを行う」にチェックマークが入った状態で「言語」→「辞書に追加…」を選択して追加する。

セキュリティ面では、unsafe-url、no-referrer-when-downgrade、origin-when-cross-originなどを含む、クロスサイトのsubresource/iframe要求に対して制限が弱いリファラーポリシーを無効にし、リファラーからのプライバシーの漏えいを防ぐ。

ほかにも、Windows版とLinux版でスクロールバーを常に表示しない設定をデフォルトに変更。Firefoxを既定のブラウザに設定する際に、既定のPDFハンドラーにも設定できるようにした。

Mozillaは2月に、Firefox 100でバージョンの桁数が二桁から三桁に変わることに起因する問題への対処を開発者に呼びかけていた。12年前にブラウザのバージョン番号が一桁から二桁になった際のトラブルで多くのライブラリが解析ロジックを改善しており、大きな障害にはならないと予想しているが、Firefox 100へのアップデート後に一部のWebサイトで表示や機能の不具合が起こる可能性がある。