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キングカズに歩いて会いに行けるだなんて!

ご近所でサッカーを観戦してきました。カテゴリーはJFL(※実質的な国内4部リーグ)。カードは東京武蔵野ユナイテッドFC VS鈴鹿ポイントゲッターズというもの。一般論で言えば地域のお祭りみたいなもので、広く世間の関心を集めるような試合ではありません。

しかし、この試合には特別なものがありました。今季から鈴鹿ポイントゲッターズの一員として、新たな挑戦をつづけるキングカズ・三浦知良さんがいたのです。これまで何度も見てきたキングカズではありますが、向こうからやって来てくれるなんてことは、そうそうあるものではありません。これはご近所の者として、お出迎えするしかありません。

↓スタジアムまで歩いて行きます!


カズに歩いて会いに行ける!

まぁ、横浜でも「絶対に歩いて行けない」というわけではありませんでしたけどね!



外はあいにくの雨模様。スタジアムまでの道を彩る自慢の桜並木も雨に打たれて散り始めています。青い空で優しい風が吹いていたら、さぞや綺麗な桜吹雪になったものでしょうが、少し残念なお天気です。ただ、それでも人の出足は快調です。明らかにサッカー観戦という風体の方がスタジアムへと元気に歩いており、道すがらのマクドナルドではサッカー観戦らしき人が昼ご飯をテイクアウトしています。普段の試合よりもグッと熱気を感じます。

キングカズをお迎えする運営側も特別な備えでこの一戦に臨みます。開門時間を早め、導線を整理して多くの来場者を来訪することに備えました。地域でもバスの増発を行なって、遠方からの来場者の足を用意しました。フードのワゴンや、漫画「アオアシ」とのコラボ装飾なども実施し、華やいだ雰囲気を生み出しました。スタジアム自慢の桜に囲まれた芝生席もお花見気分を演出してくれています。うむ、手作り感の残る備えではありますが、キングカズを迎える準備がしっかりできました。

↓スタジアムには「アオアシ」とのコラボ装飾が!


↓フードのワゴンが来場者の楽しい時間を演出!



↓桜に囲まれた芝生席は、雨で過ごしにくいもののいい雰囲気です!



僕も普段の観戦よりも早く現地入りしまして、盛り上がりの空気を堪能します。この天気であれば本来は100人とか200人とかの来場者にとどまるところですが、この試合には最終的に2006人もの観衆が詰めかけたとのこと。雨でなければさらに増えていたことでしょう。2019年にうっかりJリーグに昇格しそうになったときは、タダ券をバラまいて「とにかく来てくれ!」をやり、5000人以上を集めたこともありますが、あの頃以来の盛り上がりと言ってもいいでしょう。

決して大規模なスタジアムではないこともあって、雨を避けた人たちが集うメインスタンドのコンコースは通行するのも難義するほど。とりわけ、キングカズが所属するアウェー側・鈴鹿ポイントゲッターズのサイドは大変な人だかりです。関東圏では「今年初カズ」という試合でしたし、ご近所さんはもちろん首都圏全体から人が集まったのかなとも思います。ヴェルディや横浜FCのユニフォーム姿の人もいました。さすがキングカズ、別格です。

↓スタンドには「三浦知良」の名前が!



↓メンバー表にも「三浦知良」の名前が!


メンバー18名の平均年齢、いりますかね!

何か実態と合ってない数字になってそうですね!

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しばし花見などして待ちますと、ほどなく鈴鹿ポイントゲッターズが練習を開始。円陣のなかで完全に監督の存在感を発揮するカズは、若いメンバーたちを引き連れ、自ら率先してアップに臨みます。ボールを持ったときのぎこちなさのようなものは多少感じなくもありませんが、動きは55歳のそれではありません。いまだ情熱衰えず。単に長くつづけているかとかではなく、心に燃える炎があるからキングカズは別格なのだと改めて思います。

↓円陣のなかで完全に監督の雰囲気を出すキングカズ!



↓アップに余念のないキングカズ!



↓若手へのアドバイスも惜しまないキングカズ!


↓ストライカーとしてゴールへの嗅覚を研ぎ澄ませるキングカズ!



真っ先に動き出し、最後までアップをつづけたキングカズですが、この日のスタメンにキングカズの名前はナシ。開幕から2試合連続スタメンだっただけに少し残念ではありますが、まぁ致し方ありません。キングカズのチカラが求められる試合展開を期待して、試合を見守ります。

しっかりつないで崩していこうとするホーム東京武蔵野ユナイテッドFCに対して、鈴鹿ポイントゲッターズはアグレッシブです。長めに蹴った五分五分のボールに対しては積極的に競り合いで身体を当てていき、武蔵野ユナイテッドのボール回しもしつこくチェイスしていく構え。互いに得点はないものの、何か起こすとすれば鈴鹿のほうかなという感触の試合です。

↓雨なのでボールを拭きながらのプレーに。



↓ベンチで足をプラプラさせるキングカズ。



↓給水タイムでは積極的に若手たちに声を掛ける監督の雰囲気のキングカズ。



↓ベンチの裏でアップを行なうキングカズ。



↓前半を終えると、若手たちを出迎える監督の雰囲気のキングカズ。



ハーフタイムもキングカズはアップに余念がありません。ダッシュを繰り返し、ボールを蹴り、いつでもいける状態をキープしています。プロの選手であるならば当たり前という話ですが、その当たり前をダレずに慣れずに何十年もつづけていること自体が大変なことだなと思います。見ているコッチでさえ「雨でしんどいなー」と思う日でも、キングカズは何も変わらない。黙々と、淡々と、備えをつづける。色褪せない姿です。

↓走りつづけるキングカズ。



↓ボールを蹴りつづけるキングカズ。



迎えた後半。キングカズの出場は引きつづきありませんが、試合のほうには動きがあります。後半の半ば過ぎ、自陣ゴール前でピンチとなった鈴鹿は、武蔵野選手との交錯でゴールキーパーが足を痛めていました。片足跳びでないと移動もままならず、試合中にうずくまってしまうような状態でした。のちに途中交代することになるほどでしたので、かなり傷んでいたのでしょう。見ていて、一度試合を止めるかな?と思いました。

しかし、その「試合を止めるかな?」という思い込みの隙を突くように、負傷者を出した側の鈴鹿がカウンターで一気に攻め上がります。遠めから狙ったシュートが枠に当たって跳ね返ると、武蔵野ユナイテッドのGKはボールを見失ってしまいました。転々とするボールに詰めたのは鈴鹿。最初から最後までボールを追いかけまわしてきたマインドが先制点につながりました!

↓鈴鹿の先制点決まりました!



↓キングカズも歓喜の輪に加わり喜びます!



さぁ、これでメンバーにも変更があるでしょうか。鈴鹿は負傷したゴールキーパーのほか、中盤と前線に交代のカードを切っていきますが、しっかりとこの1点で逃げ切ろうという意図のよう。この試合でトップに入っていた鈴鹿の栗田選手は前半から積極的な動きを見せていましたが、後半に入っても動きは衰えず、先制点の場面でも鋭いダッシュで最後に押し込む仕事をしていました。守りの面を考えてもこの動きのよさは替えづらいかなというところ。

それでもキングカズは何が起きてもいいようにと、練習用のジャージを脱ぎ、スパイクに履き替え、ユニフォーム姿で待機しています。垣間見える引き締まった肉体と、準備完了のユニフォーム姿。声が掛かることはありませんでしたが、最後までキングカズは臨戦態勢でそこにいました。試合に参加していました。プレーする姿は見られませんでしたが、選手として試合に加わるキングカズは健在でした。

↓ユニフォーム姿になるキングカズ!



↓スパイクを履くキングカズ!



↓いつでもいける態勢のキングカズ!



↓ヤスさん!5人替えてくれていいですよ!



↓勝利の瞬間、キングカズはベンチで若手と抱き合って喜びました。



↓完全に監督の雰囲気で若手を労うキングカズ。



少し前まで、キングカズの生き方というのがよく理解できませんでした。長く現役をつづけたい、それはもちろん理解できるのですが、キングカズほどの選手がJFLまでカテゴリーを落として現役にこだわる情熱はどこから生まれるのか、よくわかりませんでした。Jリーグですらないのなら、これを区切りに辞めるものなんじゃないかと思いました。そして監督なりコーチなりをやるんだろうと。何故つづける、何故辞めない、そこが上手く理解できていませんでした。

しかし、最近気づいたことですが、キングカズは今も昔も「挑戦」をつづけているのでしょう。何の勝算もなくブラジルに渡り、自らのチカラで道を切り開いた青年時代から今に至るまで、キングカズは前へ前へと「挑戦」をつづけていたのです。遠くの夢として「世界一の選手」や「ワールドカップ」はもちろんあったでしょうが、真に目指していたのは「前」だった。現実的に今のキングカズは「世界一の選手」や「ワールドカップ」を目指す状況にはありませんが、今もなお「前」を目指すこと、「挑戦」することはできるのです。

遠くの目標がすべてで、それが消えた瞬間に情熱がおさまってしまうタイプの人なら、そこで次に心燃える目標を探しもするのでしょう。今度はコーチだ監督だタレントだ、と。しかし、遠くの目標はありつつも、真に目指しているものが「前」であるのならば、自分が後退して遠くの目標から遠ざかったとしても、情熱がおさまる理由などないのです。

千里の道を行くときに、いつか千里先にたどり着くために逆算した一歩を踏み出すのではなく、常に前への一歩のことだけを見つめているような生き様。それがキングカズの生き様なのだろうと思います。そして、そういう生き様の人であるからこそ、子どもの成長を見守るときや若者の成長を見守るときと同じように、今その出来が世界一には遠く及ばなかったとしても、その歩みはいつも新鮮で、輝いて見えるのだろうと思います。むしろ今季などは、普通の人が「まだ前に進もうとするんですか!?」と驚くような位置にいることで、昨年までよりもさらに輝きは増す部分さえあるのかなと思います。

「そろそろカズも辞めるのかなぁ」と思ってからすでに20年ほどが経ちました。新たにプロになった選手が先に辞めていきました。一日一日が勝負で、いつどんなきっかけで「もはや一歩も前に進めない」ような怪我を負ってもおかしくない年齢の選手ではありますが、また来年、また次の機会に、うちの近所まで来てくれたら嬉しいなと思います。まだカズは前を目指している、その姿を見ることで、自分もまたいくつになっても「挑戦」をつづけることができるという勇気がわき上がるでしょうから。

↓スタンドのサポーターに手を振って、颯爽とキングカズは去っていきました!


ありがとうカズ、ご近所まで来てくれて!

春、天候に恵まれたら、素晴らしい景色が広がるスタジアムなので、また来てくださいね!

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GKの負傷交代がなければ最後にちょっとだけ出られたかもしれませんね!