24歳の時、不動産投資はお金持ちの手段だと思っていた

─ ご自身も不動産投資オーナーとしてコンパクトマンションを所有されていると伺っています。樋口さんが不動産投資を知ったきっかけを教えてください

24歳で不動産会社に就職して、そこで初めて「自分で住む」以外の不動産、つまり「投資用の不動産」があることを知りました。

当時は「不動産投資」と聞くと、ビル1棟を購入したりすることを想像していました。しかし勉強を始めると、マンションを1室単位で購入することができ、ローンを活用して購入できること。そして家賃収入を返済に充てることで、月々の負担を少なくできることなどを知りました。

実際、区分マンションを購入されるお客様の多くが、30代後半から40代のいわゆる一般的なサラリーマンだったので、不動産投資は身近な投資手法の一つだと感じましたね。

─ 樋口さんご自身の投資経験は?

投資歴としては今年で13年目くらいです。初めての投資は、社会人になって少し落ち着いた26歳から、勉強のために株式投資などを始めました。不動産投資を始めたのは会社を創業してからです。

社会人になるまで資産形成について習わなかったですし、働く会社が違っていたら「将来のこと」に考えが及ばなかったと思います。「不動産投資」のおかげで、それまで考えたこともなかった年金減少が将来起こり得ることも知ることができましたし。

不動産投資は「老後の年金対策」として、非常に魅力的に感じた 

─ 樋口さんが不動産投資を始めた理由を教えてください

シンプルに私自身の「年金対策」でやっています。会社を作ったら資産があるじゃないかと思われるかもしれませんが、会社の資産は私個人の資産ではありません。将来どうなるかなんて誰にもわからないので、純粋に将来の年金対策として不動産投資をしています。

株式投資やFXなど、世界情勢やマーケットを研究し、相場を見ることができる人は資産を増やしていらっしゃいます。しかし私自身は会社経営が本業で、資産作りは本業ではありません。そのため、市場動向を一日中ずっとは見てはいられません。ほったらかしで、かつ長期で安定的な資産運用をしたいので、不動産投資をやりながら安心して本業に集中できています。

─ コンパクトマンション投資の良いところを教えてください

大きく2つあります。1つ目は先ほども少し触れましたが、手間なく運用ができるところです。物件管理を管理会社に委託しておけば、特に日々何かをする必要はありません。

次に、都心にある区分マンションの家賃はボラティリティが少ない点です。私は15年間投資用マンションの販売に関わっていますが、その間に世界ではリーマンショックや東日本大震災、いまは新型コロナウイルスなど、さまざまな危機や災害が起きています。

その間、株価などは大きく変動してきたのに対して、コンパクトマンション投資の家賃相場は株価ほどの変動がなかったので、社会情勢の変化に対して強い投資、長期で安定した運用ができると考えられるのが2点目です。

15年の経験を通して、「長期で安定した投資」をしたいならば、コンパクトマンションは強いなと思っています。

─ 逆にコンパクトマンション投資のマイナス面についてはどのように考えていますか?

安定運用ができるというメリットがある一方で、すごくもうかる商品かというと、そうではない点です。

世の中にはもっともうかる投資商品はあります。コンパクトマンション商品はあくまでも「安定資産」として位置づけられます。銀行に預けるより、少しリスクを取ってもいいと考えられるならば、コンパクトマンション投資は検討する価値があるのではないでしょうか。

あらゆる不動産サービスを、誰もが享受できる会社を作っていきたい

─ 起業してRENOSYを作った背景について教えてください

前職で「不動産投資が良い投資手法であれば、なぜ自分で物件を購入しないの?」というお言葉をいただくこともありました。ただ、ご存知ない方も多いかもしれませんが、不動産業に従事していると、不動産投資ローンを利用することができないケースが多いのです。

不動産投資は本当にいい商品だなと思っていたので、自分が会社を作って、「社員が買えるようにしたい」と考えました。現在、一定の条件がありますが社員も買えるようになってきており、上場した理由の一つである「信用ある会社にしたい」という状態に近づけていると思っています。

また、不動産を買ってくださった最も長いお客様とは、15年ほどのお付き合いになります。お客様に信頼していただくことで、「家を借りたいんだけど」といった、不動産投資以外の「家」全般に関わる相談を受けるようになりました。

前職で扱う不動産は「投資用不動産」のみだったので、「自分が借りる」ための家も扱いたいなと思いました。お客様のニーズに対して「こうしたい」と思うものすべてを解決したいと思いました。それも起業した理由の一つです。

一社で完結する不動産投資サービスを提供したい

─ RENOSYの不動産投資は中古区分マンションをメインに扱っていますが、何か理由がありますか?

中古の方が新築よりも運用効率がいいと考えたからです。当然、新築には新築の良さがありますし、私自身も新築は好きです。もちろん中古が全部いいというわけでもありません。不動産というのは、それぞれの目的に応じて、必要とされる最適な不動産の種類が変わってくるので。ただ、あくまでも運用商品として考えた場合に、中古不動産を扱おうと考えました。

そのほか、仲間(グループ会社)を増やすことで、「こういうことができるといいな」と思うものをRENOSYのサービスで実現し解決しようとしてきました。

例えば、

古くなった部屋の不動産価値を低コストで高めるリノベーションを提供したい(イエスリノベーション株式会社) 入居者募集を、他社の不動産会社に協力していただく以外に自社でも展開できるようにしたい(イタンジ株式会社、株式会社Modern Standard)

などです。

エアコンや給湯器の交換といった突然の支出が困るというお客様とのやりとりから、月々に支出を分散させて設備費のリスクをカバーする賃貸管理プランも用意しました。

もちろん、私自身も自社のサービスをすべて利用してきています。不動産投資をはじめ、家も借りていましたし、家の購入とリノベーションもしています。

─ グループ会社のシナジーを生かして、お客様と長期の関係性を築いていく、ということですね

ええ、不動産投資という投資商品との付き合いは長いです。それに紙の資料も年々増えていくので、お客様から「買った物件はなんだっけ(建物名や所在地がわからなくなった)」と、書類をなくされる声もありました。

そこで、書類の管理や収支シミュレーションができる「OWNR by RENOSY」というスマホアプリも作りました。とにかく、マンションオーナーにとって「こうなったらいいな」と思えるサービスを詰め込みました。

おかげさまでRENOSYの不動産投資は現在、20代から90代の方にまで、非常に幅広いお客様に利用していただけるサービスになっています。

OWNR by RENOSY

堅実な資産形成を提供していきたい

─ 不動産投資はどういう方に向いていると考えていますか?

将来の年金に不安がある方、将来の年金にプラスしたいという方には、向いていると思います。

ある程度、年収のある方にも必要だと考えています。厚生年金は年収が上がるにつれて納める保険料が上がり、比例して受け取れる年金も上がります。しかし、納める保険料には上限があり、ある地点でストップしてしまいます。

ですので、退職後に公的年金だけで暮らすとなると、年収が高ければ高い方ほど、現役世代の生活レベルから生活を変える必要がでてきます。年収が高いから安心ということではなく、年収が高い人も自力で年金対策をした方がいいのではないでしょうか。

現役時代に稼ぐお金を、飲み代やゲーム代などにすべて使ってしまうのではなく、不動産投資に少しのお金を使っておくことで、年金対策や資産形成ができるので、将来を安心して迎えたいと思う方に向いていると思います。

─ 不動産投資にはいくつか種類がありますが、それぞれどう考えますか?

不動産の種類は、区分マンションか一棟マンション、戸建て、アパートの違いがありますが、立地と不動産価格によってもリスクや利回りも異なります。

多くの方は、家賃収入を目的に不動産投資をされると思います。中には相続対策や短期での値上がり益を狙って投資する方もいらっしゃるかと思います。ですので、「これはいい投資、あれはダメな投資」という問題ではなく、それぞれに特徴があって、投資目的が違うと考えています。

海外の不動産へ投資する場合、タイやベトナムなどであれば不動産の値上がり益を狙っての投資になります。これは日本のバブル期と同じような感覚です。アメリカでの不動産投資も、戸建てで数千万円規模ですね。為替差益を狙うという人もいらっしゃるでしょう。シンガポールとか香港だと1棟で億単位です。いずれも一般的にはキャピタルゲイン狙いです。

そして海外不動産への投資は、現金を使います。現金で買うとなると、同じく「現金を使う投資」として、株式投資などと同じカテゴリで考えることになるといえます。

「不動産投資をする」という行為を一括にするのではなく、どんな条件でどういう目的で行うのかによって、いろいろな種類がある中から、最適な不動産を選択できると思います。

─ 目的次第、ということですね

そうです。例えば、「車を買う」という行動を見ても、目的はそれぞれ違っていて、「大人数を乗せられる移動手段として」なのか「走りを楽しみたい」のか、「移動しながら生活するため」か、など、目的によってどんな車を選択するかが変わってくるのと同じです。

「大学に通う」という行動に対しても、スポーツのために入学するのか、数学を学ぶためにまたは日本語を学ぶために入学するのかは、学生によってそれぞれ目的が違いますよね。どれがいいのか?という問題ではなく、お互いを否定するものでもないですよね。

投資はどれか一つに絞る必要もなく、複数の手段で運用できるはずです。不動産投資は手元にあるお金をほぼ使わないので、現金を使った運用と両立できるはずです。