自己肯定感が低い人が、自分を守るためにやっていることとは(写真:K-Angle/iStock)

自分が思うような人生を歩むために「自己肯定感」が重要であることは知られつつありますが、中には自己肯定感が低いという認識がない人もいるでしょう。そこで本稿では、自己肯定感が低い人が、自らがこれ以上傷つかないために意識的、あるいは無意識的にしている「自己防衛策」について、心理療法士として長い経験を持つシュテファニー・シュタール著『「本当の自分」がわかる心理学』より紹介します。

思い込みで「現実」をゆがめてしまう人

自己肯定感の低い人が陥りやすい現象に、目の前の現実を「思い込み」でゆがめてしまうことがあげられます。

「自分は上司に意地悪されている!」
「自分はこの仕事に不向きだ!」

実際にはそんなことがないのに、一度こうした思い込みにとらわれてしまうと、本人には、それ以外の物の見方ができなくなります。こうした思い込みは、いったいどこからくるのでしょうか。

実は、神経生物学における複数の研究によって、誕生後の2年間でストレスをたくさん感じた子ども(思いやりのないケアをされた子どもなど)は、生涯にわたってストレスホルモン値が標準値よりも高くなることが証明されています。つまり、他の人よりストレス要因に、強く、かつ敏感に反応するようになり、大人になってからもストレスを感じやすいのです。

また、こうした「思い込み」は時間とともに「信念」となり、あなたの心の深いところに居場所をつくります。そして、何か事件が起きた時に、いつも「信念」をもとに目の前の物事を判断したり、特定の感情を抱いたりするようになってしまうのです。

こういった「信念」と自分が完全に一体化してしまうと、事実を客観的に見ることが難しくなり、思い込んだ現実にこれ以上自分が傷つけられないよう、「防衛戦略」という行動をとることになります。

・完璧主義

典型的な防衛戦略の1つが、「完璧主義」です。物事を完璧に行おうとする「完璧主義者」は、ほとんどの場合、そのことに情熱を捧げたいからではなく、ミスをしたり認めてもらえなかったりすることに不安を感じているために、がんばります。そのような人にとって、「過ち」や「失敗」は自分が不十分であることの証になるため、深い羞恥心を生じさせるのです。

自己肯定感がゆらぎやすい人の大半は、守りの態勢で生活を送ろうとします。他者にスキを絶対に与えないようにするため、ミスを極端に恐れるのです。しかし、完璧主義になると、力がなくなるまで頑張ってしまう恐れがあります。完璧主義のハムスターにとっては、ケージの中にある単なる回し車でも、出世に至るはしごのように見えるのです。だからこそ、すべてのことを正確に行おうと必死になるのです。

・外見にこだわりすぎる

完璧主義のバリエーションとして、「美への極度のこだわり」があります。外見に磨きをける場合、狙いを定めて行うことができます。カロリーや体重をはかったり、髪の毛を染めたり、クリームを買ったりすればいいでしょう。

心の底の自己不信は目に見えないため、簡単には克服できません。そこで、不安定な人の多くは、不安を抱えた自分自身を外見に投影するのです。そうすれば、具体的な方法で対処できるからです。

ところが、外見の美しさが手に入っても、心の傷がきちんと治るわけではありません。反対に、歳を重ねるほど、この防衛戦略で安らぎを手に入れることは難しくなります。

自己肯定感の低さが行動に出る

・わざと失敗する

一方、自分が不十分であることに対して諦めの気持ちを持っている人もいます。この人たちは、子どものときに「私なんかが努力したって、どうせ何も手に入らない」と感じるようなことを頻繁に経験しており、大人になってからも、自分が不十分であることを自ら繰り返し確認しようとします。


恋愛では、関係が破綻するように行動し、仕事では成功しないように行動します。たとえば恋愛でいうと、パートナーとしてあまり適さない人をあえて選んだり、パートナーが我慢できなくなるような面倒なことをいろいろと起こしたりします。

仕事でいうと、失敗することを怖がって重要な仕事を先延ばしにしたり、だらだらと時間をかけたりすることもあります。ほかにも、やり遂げることができないのではないかという不安から、実際の実力を発揮しないままに終わってしまっている人もいます。