本業と副業の掛け持ちによるダブルワークをしている人は、年末調整の手続きに気をつけなければなりません。ルールを理解しておかないと、適切な手続きができない可能性があります。その場合、正しく納税できないため注意が必要です。

今回は、ダブルワークで働いている人の年末調整や確定申告の方法について解説します。

ダブルワークでも年末調整は1ヶ所のみ

年末調整は、毎月の給与から源泉徴収している税金の合計額と、再計算して確定した1年間の所得税の差額を精算するために行われます。ダブルワークをしていて2ヶ所以上の企業から給与を受け取っている場合でも、年末調整の手続きを行うのは1ヶ所のみです。ここでは、ダブルワークの年末調整の基本について解説します。

年末調整は本業の勤務先で行う

同じ年に複数の勤め先で年末調整をした場合、各種控除の申請が重複して適用されてしまいます。そうなると納税額の計算にも誤りが生じるため、正しく課税できなくなります。ダブルワークで2ヶ所の勤務先がある人は、複数の企業から年末調整の書類を受け取ります。しかし、年末調整の手続きは1ヶ所のみで行いましょう。

年末調整を行うのは、基本的に最も高い給与を受け取っている本業の勤め先です。副業などで本業よりも少額の給与を受け取っている勤め先では、年末調整を行う必要はありません。

3ヶ所以上の勤務先がある人も、考え方は同様です。本業の勤め先のみで年末調整を行い、正しく納税額を計算できるようにしてください。

副業のほうは確定申告をする

本業の給与について年末調整をすれば、納税額を正しく計算できます。ただし、副業の給与は年末調整ができないため、そのままでは納税額を適切に確定できません。そのため、副業については本業の年末調整とは別に確定申告が必要です。

本業や副業の勤め先で納税額の計算が終わると、源泉徴収票が手元に届きます。確定申告はそれらの書類をもとに行いましょう。

きちんと確定申告を行えば、副業で得た給与についても税金の過不足分を精算できます。確定申告の期限は、給与を受け取った翌年の2月16日から3月15日までです。期限内に税務署に対して手続きを済ませる必要があります。ただし、納税が必要なく還付を受け取るだけであれば、給与を受け取った翌年の1月1日から5年間まで確定申告が可能です。

ダブルワークで確定申告が必要なケースとは?

ダブルワークで複数の勤め先から給与を受け取っていても、必ず確定申告が必要なわけではありません。ここでは、ダブルワークをしている人はどのような場合に確定申告が必要となるのか解説します。

副業で得た所得が年間20万円を超える場合

ダブルワークの場合、確定申告が必要になるのは、本業以外の副業で年間20万円を超える所得を得た場合です。

パートやアルバイトなどの雇用契約により受け取った給与所得だけでなく、個人で業務を請け負って得た報酬も含みます。たとえば、雑所得や事業所得なども対象です。ただし、所得とは、収入から経費を差し引いて残った金額のことです。仕事のために経費がかかっている場合は、収入から差し引いたうえで所得を計算しましょう。

つまり、年末調整をしていない本業以外の所得が年間20万円を超えているなら、確定申告が必要となります。一方、本業以外の副業による所得が年間20万円以下であれば、確定申告をしなくても問題ありません。

年末調整を2ヶ所でしてしまった

複数の勤め先から給与を受け取っているケースでは、誤って年末調整を2ヶ所以上で行ってしまう人もいるでしょう。その場合、各種控除の申請が重複して適用されているため、本業の勤め先以外の年末調整は取り消す必要があります。

まずは本業以外の勤め先に事情を説明し、年末調整の取り消しを依頼しましょう。そのうえで、それぞれの勤め先から受け取った源泉徴収票を用意し、本業以外の給与について確定申告を行います。ただし、副業で得た所得が年間20万円以下であれば、確定申告は必要ありません。

ダブルワークで確定申告をする際の注意点

ダブルワークをしており、副業の給与について確定申告する際は気をつけるべきことがあります。ここでは、具体的な注意点について説明します。

副業で経費計上が可能な場合もある

副業について確定申告をするときは、経費を計上できる場合があります。副業による収入が雑所得、事業所得、不動産所得のいずれかに該当するケースです。そのため、パートやアルバイトなどの給与所得を受け取っている人は、確定申告で経費の計上はできません。

経費として計上できるのは、基本的に事業を行うためにかかった費用です。たとえば、物販を行っているなら、仕入れた商品の発送料や宣伝のための広告料などが経費として認められます。フリーランスとして業務委託で仕事をしているのであれば、パソコンの購入費や通信費などを計上可能です。

副業による所得が20万円以下でも住民税の申告は必要

副業による所得が20万円以下なら所得税の確定申告は不要です。ただし、副業による所得が20万円以下であっても、住民税の申告は必要となります。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は忘れずに行いましょう。

住民税は都道府県や市町村に対して支払う税金であり、申告は各自治体の窓口で行います。住民税の申告時は、副業の所得が給与所得なら源泉徴収票、事業所得なら帳簿や領収書などの書類が必要です。また、控除に関する書類や本人確認書類なども用意しておきましょう。

なお、確定申告をしている場合は、あらためて住民税の申告をする必要はありません。

ダブルワークをする場合は会社に相談する

ダブルワークは自分の意思で自由に行えるため、原則として処罰の対象になることはありません。ただし、勤め先によってはダブルワークについて独自のルールを定めている場合もあります。ダブルワークを希望するなら、必ず本業の勤め先へ事前に相談しましょう。

基本的に、副業は本業の勤務時間外に行うのがルールです。また、企業によっては、ダブルワークについて届出を必須としているところもあります。また、以下の条件に該当すると副業が制限される可能性があります。

・労務提供上の支障がある場合
・業務上の秘密が漏洩する場合
・競業により自社の利益が害される場合
・自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

出典:副業・兼業の促進に関するガイドライン|厚生労働省

まとめ

ダブルワークをしている人は、本業の勤め先のみで年末調整を行いましょう。副業による所得が20万円を超えている場合は、年末調整のほかに自分で確定申告をする必要があります。条件を確認し、期限内に手続きを済ませましょう。

また、場合によってはダブルワークが制限される可能性もあるため、事前に勤め先へ相談することが大切です。ダブルワークをする場合は、こうしたルールをしっかり守りましょう