(左から)GACKT、堀江貴文、西野亮廣

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 実力やカリスマ性で、芸能界で輝くタレントたち。でも、中にはファンと同じくらいのアンチが存在する人も……。バッシングされても仕事を干されない、その打たれ強さに芸能評論家の宝泉薫が迫る!

【写真】「西野亮廣を休ませる権」はなんと10万円! 内容に驚き

“こじらせ芸人”の生きる道は?

「クセがすごい」というのは千鳥・ノブのギャグだが、クセのすごさで生き残っている芸人もいる。その代表が江頭2:50だ。

 最近は被災地支援などのボランティア活動で“じつはいい人”的なイメージも獲得しているものの「芸はやっぱりキモい」と嫌う人も少なくない。ある意味、この振れ幅が彼を予定調和に陥らせず、飽きのこないタレントにしているのだ。

 若手芸人では、ゆりやんレトリィバァ(30)もそうだ。今年3月『R-1グランプリ』で優勝。2017年には『THE W』でも優勝しており、ピン芸人&女芸人の二冠を達成した。

 にもかかわらず『R-1』の直後には「優勝は納得できない」「1度も笑えなかった」といった声もちらほら。彼女はブレイク当初からアンチも多くて「面白くない」と感じる人がけっこういるようだ。

 そこには“笑い”以外の要素も絡んでいる。実は「面白くない」という言葉とは「不愉快だ」という意味で使われるものでもあるのだ。

 ゆりやんの場合、芸風やキャラが不愉快だから「面白くない」という人も多いのではないか。

 そういえば、彼女は中学時代にいじめに遭っている。テニス部のキャプテンに立候補したことで反感を買い、悪口を言われたり、ボールをぶつけられたそうで、

「学校行くの嫌だなって、休みたいって……でもここで辞めたらいじめた人たちの思うつぼだから」(「徹子の部屋」)

 と告白している。

 そんな彼女は上昇志向も隠さない。40キロ近くダイエットしてイメチェンしたり「アメリカに行って芸人になりたい」と公言したり。そういう目立ち方も反発を招くのだろう。

万人ウケを狙わない西野や村本

 海外志向の芸人といえば、ほかに西野亮廣(キングコング)がいる。絵本や映画で一発当てたことで「ハリウッドを倒す」とまで言い出した。

 ただ、クラウドファウンディングによる上手すぎる(?)資金集めが「捕まってないだけの詐欺師」(千鳥・大悟)といじられたり、オンラインサロンの会員に批判されたりと、こちらも「賛否両論」だ。

 西野の場合、お笑いよりも商売が優先されているように見えるところが叩かれやすいのだろう。

 同じく海外志向を口にする村本大輔(ウーマンラッシュアワー)もまたしかり。こちらはお笑いより政治的な主張が優先されているかのようなところが、一部のアレルギーを生むわけだ。

 とはいえ、こういう人たちは万人ウケを狙っていない。そこで思い出すのが、大リーグで活躍した野茂英雄の言葉だ。

「敵も味方も半分ずつですから。何をやっても悪く言う人がいる。気にしないほうがいいですよ」

 野茂が渡米するときには、日本球界からバッシングされ、ファンからも「通用しない」という声があがったものだ。が、大成功をおさめたことで、そのこじらせた生き方も説得力を持つこととなった。

 ゆりやんも西野も、ちょこちょこと成功を重ねていることが生き残りにつながっているのだ。

逆に面白いデヴィ夫人や神田うの

 偉そうな人は嫌われやすい。ただ、そこが面白がられ、人気者になるケースも。デヴィ夫人や神田うのがそれだ。

 ふたりとも、トラブルには事欠かないが、それをものともしないたくましさがある。例えば、デヴィ夫人は1992年、米国でのセレブパーティーで女性をシャンパングラスで殴り、逮捕されるハメに。しかし、こう振り返った。

「私は刑務所でとても幸せでした。部屋を絵で美しくして、学生寮にいるように感じました」

 また、うのもかつて無敵の熟女タレントだった野村沙知代さんに平手打ちされたりしながらも、ひるむことはなかった。「アウトオブ眼中(眼中になし)」などのコギャル語も連発していたものだ。

 ちなみに、デヴィ夫人が大きな顔をしていられるのは、インドネシアの元・大統領夫人という肩書のおかげでもある。実はうのも、父が国家公務員だったり、夫が大企業の社長だったりと、なかなかの“上級国民”なのだ。

なぜか負けないGACKT

 そんなふたりに対し、もっぱら独力で「俺様」キャラを築き上げてきたように見えるのが、GACKT

 ミュージシャンや役者としてのビジュアルやカリスマ性、ストイックな言動もさることながら、人気バラエティー『芸能人格付けチェック』(テレビ朝日系)での圧倒的な強さが、その「俺様」ぶりに正当性をもたらしてきた。

 高級食材やワインなどの真贋を当てる戦いで、ほかの芸能人が3、4問続けて当てるのに四苦八苦するなか、65連勝というありえない記録を継続中。現代のような情報化社会で、本物を見分ける能力は誰もが欲しいものだ。ここ数年は『GACKTの勝ち方』『GACKT超思考術』といった自己啓発本も出版している。

 その一方で、トラブルも珍しくない。違法性が噂される仮想通貨に関わったり、立ち上げたアパレルブランドの商品にパクリ疑惑が取り沙汰されたり。今年2月には、知人へのサプライズで愛犬を里子に出すという動画が「犬の気持ちを考えていない」と批判されてしまった。

 しかし、そこで退かないのがこの男。《喧嘩売りたいなら買ってやるから来いや》と反論してみせた。炎上に追い込まれたら終わり、みたいなところもある現代にあって、この打たれ強さもまた、ファンにはたまらないのだろう。

 こういうスタンスは、貫けるなら貫いたほうがいい。というのも、うのは5年前に「脱KY」宣言をして、やや失速してしまった。ベビーシッターによる1300万円相当もの盗難被害を公表、それが「自慢か」と叩かれたことがきっかけだ。

 はたして、GACKTは「格付け」同様、勝ち続けることができるだろうか。

バラドルのポンコツはもはや才能!

 バラドルは戦国状態が続いている。大人数アイドルグループのブームのおかげで、そこからバラドルを目指す人もいて、飽和状態ともいえる。

 ただ、アイドル出身のバラドルはいまいち踏ん切りが足りない印象。かつての鈴木奈々のように、少々のバッシングなど自分の大声でかき消してしまいそうな逸材はなかなかいない。

 鈴木の場合、7年前の結婚でママタレ路線に行くのかと思いきや、今も大阪王将のCMなどで変わらず叫んでいる。思えば、同じ言葉を2度繰り返すというあの芸風もCM向きだ。

 さすがに天下からは遠ざかったが、消えそうで消えていないのはなんだかんだいって貴重な存在だからだろう。バラドルとは、うるささが騒音とは限らないという世界なのだ。

 だからこそ、丸山桂里奈のような人も重宝される。もともとはアスリートで、それも女子サッカーの日本代表としてW杯優勝に貢献。チーム(なでしこジャパン)として国民栄誉賞も受賞した。

 にもかかわらず、どこかちぐはぐな面白さがある。たとえば、一昨年の『沸騰ワード10』(日本テレビ系)でのこと。熱い料理に取りつかれているとして、あんかけ焼きそばや小籠包などを食べてはむせていた。鈴木同様、ウザイとかむかつくといった反応も生むが、バラエティーにおいてポンコツは才能だといえる。

倖田來未や藤原紀香はおしゃべりで……

 ただ、イケているはずの人がそうじゃない姿をさらすのはまずい。“エロかっこいい”パフォーマンスで一世を風靡し、レコード大賞にも輝いた倖田來未の失言騒動はまさにそれだった。

 2008年に「35歳を過ぎると羊水が腐る」というラジオでの発言が問題視され、活動自粛。それでも、今年1月の『芸能人格付けチェック』(テレビ朝日系)ではGACKTと組んで全問正解を達成して、名誉挽回してみせた。

 彼女の場合、根がいわゆる“関西のオバチャン”で、しゃべりすぎるクセがあるのだ。一昨年『ミュージックフェア』(フジテレビ系)で「自分に禁止令を出すとしたら?」と聞かれたときには「歌う前にしゃべりすぎたらアカンで禁止令」と答えていた。声が枯れるからだそうだが、いい女になりきるためにも、たぶん、しゃべりすぎはマイナスだ。

 じつは藤原紀香も似たタイプ。若いころから、ドラマでもバラエティーでも、関西弁をしゃべるときは生き生きとしていた。陣内智則と離婚した際にも、いかにもおしゃべりな、はるな愛とのほうが仲がよかったなどと報じられたりしたものだ。

 おしゃべりが好きだから、水素水にハマれば、それも隠すことなくしゃべってしまう。彼女が火付け役のひとりでもあった水素ブームは、’16年に国民生活センターが健康効果を「根拠なし」としたことですたれてしまったが、本人は今も愛好しているようだ。

 昨年の女性誌インタビューでも、

「夜は大黒摩季さんから紹介されたマシンで高濃度の水素を吸いながら就寝しているので、かなりぐっすり休めますね」

 と、効用をアピール。もっとも、彼女は自分らしく生きているだけなのだろう。もしかしたら“いい女”として持ち上げすぎたメディアにも責任があるかもしれない。

 同じことが剛力彩芽にもいえる。国民的美少女コンテスト出身とはいえ、決勝までは進んでいない。にもかかわらず、デビューから露出しまくり状態。ファンも増えたが、事務所と業界全体の「ゴリ推し」だとして、アンチも生まれた。

 プライベートでは、日本有数のお金持ちと交際。最終的に破局しても、いまいち同情されなかった。“推しの強さ”が仇になる、という典型だ。

 ただ、この3人の場合、本人自体に「押しの強さ」がある。何があってもめげることなく堂々としているからこそ、許せたり、ニクめなかったりするのかもしれない。

“ケンカする金持ち”たち

 大金を稼ぐには、卓越した才能(タレント)が必要。それゆえ、芸能人以上の注目を浴びる金持ちがいる。ZOZO創業者・前澤友作もそのひとりだ。

 月旅行の権利を獲得したり、紗栄子や剛力彩芽と付き合ったり、SNSで「お金贈りおじさん」を名乗って総額1億円のお年玉を配ったりと、行動もなかなか派手だ。

 ただ、この人以上の注目を長年、浴び続けているのがホリエモンこと堀江貴文。それは「金持ちケンカせず」のことわざの逆を行くようなトラブルメーカーだからだろう。

 IT企業・ライブドアの社長時代にはプロ野球への新規参入をめぐって、楽天と争ったり、ニッポン放送を買収しようとして、フジサンケイグループと衝突したり。その後、証券取引法違反で逮捕されたときも、マスコミ報道などを不服として『徹底抗戦』という本を書いたりした。

 ここ数年、宇宙ベンチャー企業に出資し小型ロケット開発に携わることを報じられ話題にもなった。しかし、昨年は広島県の餃子店とマスクの着用をめぐってモメてしまい、SNSで非難。堀江の支持者たちも誹謗中傷したため、店は休業に追い込まれた。これに対し、支援に動いたのが、ネットの巨大掲示板・2ちゃんねるの創設で知られるひろゆきだ。現在はフランスのパリ在住だが、リモート出演していた『グッとラック!』(TBS系)などでクラウドファンディングを呼びかけ、1500万円を集めて店の再出発を助けた。

 これにイラついたのが堀江で「キレました」「性格悪すぎ」と敵意をむきだしに。ひろゆきが前出の前澤と500万円ずつ出し合い、児童養護施設にパソコンを贈る計画を発表すると、

「格安スマホ配ったほうがよっぽどマシ」

と批判した。

 なお、ふたりはインターネットバブルでのし上がった似た者同士だ。共著を発表するなど仲よしにも見えていたが、堀江は「親友だったことは一度もありません」と断言。ひろゆきも「僕がもともと体形いじりとかめちゃめちゃやってたから、そのせいでさすがに堪忍袋の緒が切れたのでは」と分析した。

 とまあ、レベルが高いのか低いのかよくわからないケンカだが、世間はこういうもめごとが好きだ。まして、ちょっとやそっとじゃ傷つかないような金持ち同士のケンカなら高見の見物ができる。海の向こうでは「ケンカする金持ち」を貫くことで大統領にまでなったトランプみたいな人もいるほどだ。

 そういえば、堀江も選挙に出たし、そのうち、ひろゆきの出馬もあるかもしれない。

 それはさておき、トランプの選挙戦は2度とも僅差で全米が盛り上がった。賛否両論を生むキャラは、それくらい魅力的なのだ。賛否両論タレントが強い理由も、そこにある。

寄稿:宝泉薫(ほうせん・かおる)アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)