2020年のサッカーシーズンを振り返る第4回目は、Jリーグを取り上げる。

 J1は川崎フロンターレ一色に染まった。2月の開幕節はサガン鳥栖と引分けたが、7月4日の再開初戦から10連勝を記録する。7月23日に名古屋グランパスに敗れ、翌節のヴィッセル神戸戦も2対2のドローに終わるが、8月29日の清水エスパルス戦から再び白星街道をばく進する。10月31日のFC東京戦まで12連勝を飾った。12連勝はリーグ最多4位タイの記録だった。

 優勝を決めたのは29節だった。2位のガンバ大阪を5対0で粉砕した。4試合を残しての優勝は、18チーム制のJ1で史上最速だった。

 川粼Fが作った新記録はまだある。勝点83、26勝、88得点は、いずれも過去最多だ。勝率0.897も01年、02年の磐田に並ぶ過去最多タイである。

 チームを支えたのはGKチョン・ソンリョン、CB谷口彰悟、DF車屋紳太郎、MF登里享平、家長昭博、大島僚太、FW小林悠ら、17年と18年の連覇を知る経験者たちだ。中村憲剛がシーズン後半戦から復帰してきたのは、川粼Fにとって最高の“補強”となっただろう。

 さらに言えば、編成が絶妙だ。

 アカデミー出身の選手では、4年目の田中碧が主力と肩を並べてきた。移籍加入では湘南ベルマーレからやってきた山根視来が、右サイドバックにピタリとハマった。

 このところJリーグ全体で需要が高まっている大卒選手については、伝統的に主軸へと結びつけている。中村、小林、谷口、車屋らだ。近年では18年入団のMF守田英正が日本代表に選出され、今シーズンはプロ3年目のMF脇坂泰斗、1年目のMF三苫薫とFW旗手怜央が、鬼木達監督の貴重な選択肢となった。三苫は得点ランキング5位タイの13得点をマークしている。

 アカデミー、高校、大学、他クラブからの獲得という選手供給のチャンネルが、川崎Fはしっかり機能している。それによって、好素材が好素材を呼び、選手層が高水準で保たれていくというサイクルが出来上がっていった。チーム全体の水準が問われたコロナ禍のリーグで、川崎Fがスバ抜けた強さを発揮した理由だろう。

 川粼Fの鬼木監督は就任4年目を迎えた。継続性も担保していたのである。J2を制した徳島ヴォルティスも同様だ。

 スペイン人のリカルド・ロドリゲス監督は、17年からチームを指揮してきた。昨シーズンはJ1参入プレーオフで勝ち上がり、J1の湘南ベルマーレとの決定戦に臨んだ。この時点でJ1の扉に手をかけていたチームには、3バックと4バックを併用できるベースがあり、そのために必要なポリバレントな選手がすでに揃っていた。キャプテンでボランチの岩尾憲のように、軸となる選手も決まっていた。

 そのうえで、後方からのビルドアップに長けるGK上福元直人、サイドアタッカーの西谷和希、ストライカーの垣田裕暉を補強した。ポリバレントな選手に加えてスペシャリストを迎えることで、J1昇格を狙える陣容が整ったのである。

 果たして、岩尾、西谷、垣田はリーグ戦全42試合に出場し、チームを引っ張っていく。垣田はリーグ3位の17ゴールをあげ、確固たる得点源となった。

 戦術的な柔軟性の高いチームである。4バックでも4−4−2、4−2−3−1、4−3−3のバリエーションを持つ。ただ、ロドリゲス監督はシステムに引っ張られない。一人ひとりの選手の個性を生かし、組み合わせによる化学反応を生かしながら、システムを使い分けていった。安定した戦いを実現されていった。

 J2は42試合の長丁場だが、徳島は一度も連敗をしていない。3試合連続で勝利から遠ざかったこともなかった。負けにくいチームであり、勝ち切れるチームでもあった。67得点は水戸ホーリーホックに次ぐ最多2位であり、33失点はリーグ最少2位だ。攻守のバランスは際立っていた。