Jリーグの順位決定方法が、一部変更された。

 勝点によって順位が決まり、同勝点の場合は得失点差が優先される。ここまでは変わらない。

 変化があるのは得失点差以降の条件で、これまでは総得点、当該クラブ間の対戦成績だったが、今シーズンは当該クラブ間の対戦成績が2番目に繰り上がる。ただし、ホーム&アウェイの2試合が実施された場合に限った適応となる。3番目には総勝利数が組み込まれ、総得点は4番目に下がった。

 今回の変更は、順位の決定にどれぐらい影響を及ぼすのか。過去の成績に照らしてみる。

 19年シーズンのJ1は、勝点で並ぶチームが多かった。7位のガンバ大阪、8位のヴィッセル神戸、9位の大分トリニータが勝点47で終えた。最終的な順位の決定は、得失点差によるものとなった。

 13位の名古屋グランパスと14位の浦和レッズ、15位のサガン鳥栖と16位の湘南ベルマーレも、勝点は同じだった。得失点差でそれぞれの順位が決定した。

 19年シーズンのJ2に今回の変更を当てはめると、順位が変わるチームがある。

 6位のモンテディオ山形と7位の水戸ホーリーホックは、ともに勝点70でフィニッシュした。得失点差もプラス19で並び、総得点で山形が6位となった。

 では、対戦成績はどうだったか。どちらもホームで勝利しているが、得失点差で水戸が上回る。今シーズンなら水戸が6位になり、J1参入プレーオフにギリギリで出場できたわけだ。

 18年シーズンのJ1でも、勝点と総得点の同じチームを見つけられる。13位の湘南と14位の鳥栖は勝点41で並び、得失点差もマイナス5で同じだ。当該成績は湘南の1勝1分なので、今回の変更に基づいても順位は変わらない。

 複数チームが勝点で並んでも、得失点差まで並ぶケースはどうやら多くない。今回の変更によって、順位が大きく変動するとことはなさそうだ。

 むしろ考えたいのは、「勝点」の定義だろうか。

 Jリーグが今回の変更に踏み切ったのは、全チームが全日程を消化できない、チームによって消化試合数にバラつきが生じる、といったことを想定するからだろう。新型コロナウイルスの感染拡大は、先行きが見通せない。これからまた延期や中止に追い込まれる可能性は、打ち消すことができない。

 異常気象リスクもある。例年以上にスケジュールの隙間を見つけにくいため、台風の上陸や集中豪雨などで延期された試合を組み入れるのは困難だ。

 様々な理由によって、同一リーグの全チームが全日程を消化できない可能性がある。それでも勝点に基づいて順位を決定するなら、「1試合あたりの獲得勝点」のほうが分かりやすい。
たとえば、34試合で勝点34のチームと、33試合で勝点33のチームが出た場合は、1試合あたりの獲得勝点は同じ「1」と見なす。そのうで、得失点差の比較としたほうが理解を得やすいのではないだろうか。

 いずれにしても、今シーズンのリーグ戦は公平性や平等性を担保しにくい。全チームの消化試合数が揃ったとしても、アウェイゲームの連戦が続くチームがあったりと、すべてのチームが同じ条件で戦ったことにならない。

 つまりは、全チームが納得できるスケジュールや順位の決定方法はない、ということである。その代わりに、下部リーグへの降格を無しとした。

 誰も経験したことのないシーズンである。何か予期せぬことが起こっても、自分(や自分の愛するクラブ)が不利益を被っても、忍耐力と胆力で乗り切っていくべきなのだろう。