東京23区内ながら、乗車人員が少ないJR駅として知られる京浜東北線の上中里駅(北区)。なぜ「閑散駅」になっているのか現地を訪問したところ、そこには坂道と複数の車両基地、“中州”のような住宅街がありました。

列車の本数単位で見ると「上中里」は一番の閑散駅

 約950万人が住む東京23区。新宿駅のように一日100万人を超す乗降客が行き交う駅もあれば、埋立地を走るゆりかもめのように、周囲に建物がまばらな駅など、様々な駅があります。


京浜東北線を走るE233系電車(画像:写真AC)。

 そのうちのひとつ、北区にある京浜東北線の上中里駅。快速を含むすべての列車が停車し、その本数は北行きと南行き合わせて1日500本以上あります(2019年11月時点)。しかしながら、2018年度の1日平均の乗車人員数は8062人です。上中里駅は、東京23区内のJR駅では京葉線の越中島駅(5735人)に次ぐ閑散駅なのです。

 乗車人員を列車の本数で割ると、越中島駅(1日326本)は1本あたりの乗車人員が17.59人なのに対し、上中里駅(1日529本)は15.24人。列車の本数単位で見ると、東京23区のJR駅で最も閑散としているのは、上中里駅といえます。

上中里駅の改札口は1か所 出た先は坂道 長い跨線橋

 上中里駅は、なぜここまで列車の発着が多いにもかかわらず、利用者が少ないのでしょうか。2019年11月、実際に現地を訪れました。ホームに降りると、東側は新幹線の高架と車両基地、西側は崖という光景が目に飛び込んできます。

 階段を上り、1か所しかない改札を出ると、駅前には台地の上に建つ大きな白いマンションとスーパーマーケット、いくつかの個人商店があります。そこから西側、台地の上へは坂道が続いており、左手側は住宅街、右手側は公園や神社などです。


京浜東北線の上中里駅前。右手の入口が車両基地の反対側に続く跨線橋(2019年11月、河嶌太郎撮影)。

 反対の東側はどうでしょうか。駅出口のすぐ脇に、50mはある長い跨線橋があります。跨線橋は、京浜東北線や湘南新宿ラインの線路をまたぎ、東北新幹線の高架の下を通ると、そのまま新幹線車両基地である「東京新幹線車両センター」の上を通ります。そして跨線橋の“終点”は4階くらいの高さになっており、地上へは階段かエレベーターで降りることになります。

上中里駅の東側には車両基地がふたつも

 跨線橋から地上に降り立つと、目の前にはコンビニがあり、周囲には住宅街が広がっているように見えます。しかしその住宅地を東へ150mほど進んでいくと、広大な鉄道用地が現れます。「尾久車両センター」と呼ばれる一大車両基地です。

 この住宅地は、言ってしまえば車両基地と車両基地に挟まれた“中州”のようなエリアです。上中里駅の乗車人員が少ない大きな理由として、近隣にこうした車両基地が存在するため、駅周辺の人口が少ないことがあると考えられます。


上中里駅から続く跨線橋の東端は4階くらいの高さにあり、階段かエレベーターで上り下りできる(2019年11月、河嶌太郎撮影)。

 また、駅の西側に東京メトロ南北線の西ケ原駅、尾久車両センターを挟んだ向こう側に東北本線の尾久駅があり、利用者が分散していることも、上中里駅の乗車人員が少ないことの一因といえるかもしれません。

 ちなみに西ケ原駅は、東京メトロで最も乗降人員が少ない駅(2018年度)、尾久駅は東京23区では上中里駅に次いで乗車人員が少ないJR駅です。上中里駅から尾久駅へは歩いて15分ほど。尾久車両センターを潜る、長さ約180mの地下道を利用するとたどり着けます。新幹線車両基地の上を跨線橋で渡る上中里駅とは対照的なつくりになっている点も面白いところです。