ノウフクJAS認証を末松事務次官(中)に報告した事業者ら(東京・霞が関の農水省で)

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 障害者が生産に携わった食品を日本農林規格(JAS)として認証する「ノウフクJAS」が始動した。第1号として4事業者が認証を受け、認証マークを付けた商品の販売を始めた。農福連携を消費者にPRするとともに、付加価値の付いた商品として販売できるようにする。農水省はノウフクJASについて、障害者の雇用と農業の担い手確保につながる農福連携を広めるきっかけにしたい考えだ。

 第1号の認証を受けた4事業者は、長野県のウィズファームとひだまり、京都府の山城就労支援事業所「さんさん山城」、愛知県のNPO法人すまいる。

 ウィズファームは、障害者の就労継続支援A・B型事業所のひだまりが、利用者の工賃を上げようと、地域で盛んなリンゴ栽培をするために立ち上げた農地所有適格法人だ。2017年から栽培を始め、リンゴ90アールに加え、ブドウや野菜など計2ヘクタールを管理する。剪定(せんてい)から収穫、梱包(こんぽう)まで障害者15人ほどで作業する。

 リンゴとりんごジュースなどの加工品をノウフクJASの認証マークをつけて販売する。ファームの森下博紀代表は「認証を、課題となっている販路拡大や利用者の工賃アップにつなげたい。人手不足が深刻化する農業で、担い手として頑張りたい」と意気込む。地元の温泉施設から既に「認証商品を販売したい」と打診があるといい、認証の効果を実感しているという。

 1日には4事業者が東京・霞が関の農水省を訪れ、末松広行事務次官と懇談した。末松事務次官は「農産物を売っていくには価値を付けて、その価値を分かってもらうことが大事」と強調。農福連携に込められたドラマや価値を伝え、取り組みを広めていくことに意欲を示した。

 登録認証機関の日本基金によると、現在、別の1事業者から申請が上がってきており、問い合わせも多いという。申請書の提出と審査員による実地検査を経て、認証までに1カ月ほどかかる。

<メモ> ノウフクJAS


 障害者が主体的に携わって生産した農林水産物と、それを原材料とした加工食品を認証する。もともとJASの対象は農林水産物の品質に限られていたが、JAS法が改正。18年4月から生産方法や取り扱い方法も規格の対象となり、日本基金がノウフクJASの創設を提案した。