自宅マンション上層階の共有窓には、角度を変えた監視カメラを2台も設置。写真はその1台

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「本当に気味が悪い人。いつか何かやらかすだろうと思っていたので“やっぱり”というのが正直なところです」

【写真】容疑者がセットしたカメラ、公園にあった注意書きほか

 と同じマンションの住人は暗い表情をみせた。

幼児が毒エサを食べなくてよかった

 警視庁は3日、大東文化大学外国語学部英語学科の准教授・藤井康成容疑者(51)を鳥獣保護法違反容疑で逮捕した。1月13日午前11時半ごろ、東京都北区の区立神谷公園でカワラバト4羽を殺した疑い。

 手口は少し手が込んでいる。農薬に含まれる劇物のメソミルをいったん水に溶かし、その水溶液に漬け込んだ精米を乾燥させ、公園にいるハトにエサとして食べさせた。容疑者宅からは通販で購入した農薬が見つかっている。

「もともと人間嫌い。宅配業者とも会いたくないタイプで、ネットで買ったそういうものはコンビニどめにしていた」

 と先のマンション住人。

 容疑者は取り調べに対し、

「家の近くにハトが来て汚すのが嫌だった。邪魔だった」

 などと供述しているという。

 公園に隣接する小学校の防犯カメラ映像が逮捕のきっかけになったとみられる。

 カワラバトとは、都市部の公園などでよくみかける別称・ドバト(土鳩)のこと。羽の色はグレー系をベースに緑、紫などがまじり、「ハト胸」の言葉があるように大きく胸部が膨らんでいる。

 犯行現場近くの男性住民は、

「この公園は幼児がよく遊びにくる。幼児が毒エサを拾って食べたりしなくてよかった。逮捕のニュースが流れる直前、巡回中の警察官が“もう犯人を捕まえましたから安心してください”と言っていた。ハトが殺されたのはこの公園だけでなく、近所の公園で不審死が相次いでいたから、怖がる住民が多かったんだよ」

 と話す。

 逮捕案件のほか、周辺の公園などで約3年前から約100羽の大量の鳥が不審な死に方をしている。同区立赤羽公園では、昨年10月に2回、今年2月ごろに1回、カワラバトとみられるハトが犠牲になった。

 同公園を散歩中の男性は、

「ここはエサをあげる人が多いからハトが多い公園でね。昨年10月にハトが3、4羽やられている。エサを食べてもすぐには死ななかったみたいで、木にとまっていてポロリと落ちてね」

 とショッキングな光景を振り返る。

「私が見たのはその1週間ぐらいあとで、やはり3、4羽だった。ヨロヨロと地面を歩いていて、パタッと倒れて死ぬの。かわいそうだった」

 と別の女性。

 今年に入ってからは大量のハトの死骸が……。

「昼前に公園を通ったら、50羽ぐらいのハトが死んでいてね。それはもう、異様な光景でしたよ。警察官もたくさん来て騒然としていました」

 と40代の男性。

 さらに、同公園から南東に約200メートルの同区立北運動公園では、約3年前に5羽のハトが死んでいる。

「たぶん、ここの事件が最初にハトが不審死したケースじゃないでしょうか。今年1月にはスズメが8羽、死んでいます」(同公園管理事務所)

 北運動公園のすぐそばにある同区立志茂公園では、昨年、ハトが1羽死んでいる。

「1羽だけなので事件性があるかわかりませんが、確かに死んでいるのを見ました。それにしてもハトを毒殺するなんてひどい。子どもに危害がなくてよかった」

 と育児中の母親はホッとした様子だった。

「計約100羽のハトなどの不審死が藤井容疑者の犯行かわからないが、捜査当局は余罪を調べている」

 と全国紙社会部記者。

管理人だと思っていた

 容疑者宅マンションは、これらの公園から徒歩10数分のところ。不動産関係者や住人らによると、親が所有する低層マンションの最上階の一室で約20年前からひとり暮らしをしているという。

「独身ですよ。最上階に木造増築の共有スペースがあり、洗濯物干し場として住人は利用できるはずなんですが、使うと藤井容疑者が怒るんですよ。ふだんはおとなしいけれど、キレると怖い。

 そこの窓には容疑者が取り付けた監視カメラが2台あり、室内で中継モニターをチェックしているらしい。部屋に彼女が遊びに来た男性住人は、離れた場所に住むマンションのオーナー(容疑者の親)から“女性を家にあげちゃダメでしょ”と注意されたみたいで驚いていました」(前出の男性住人)

 学生寮じゃあるまいし、来訪者の出入りまでチェックされるのは薄気味悪い。カメラの1台は真下のゴミ捨て場に向けられ、もう1台はマンション前の路上を映している。

 雑食のカラスがゴミ袋をあさることはあっても、基本的に草食で穀物や果実などをついばむ公園のハトがわざわざ食い散らかしにくるとは想像しにくい。カメラはバードウォッチング兼人間観察用なのか。

 前出の男性住人は「ハトもカラスもスズメもツバメも来ませんよ」として次のように話す。

「おそらく、藤井容疑者は鳥を見ていたのではなく、子どもたちを見ていたんじゃないかな。小さな園児がよく通る場所ですからね。ただ、マンション前の路上脇には、農薬をといた水を捨てたような白っぽい跡があるんです。あるいは鳥を建物に近づけないようにまいたのかもしれませんし、その効果で鳥が来ないとも考えられますが……」

 容疑者宅は奇怪な工夫が施されていた。換気口にバスタオルを詰め込み、その下の小窓も小さなカーテンで隠している。農薬を溶かした水のにおいや成分などが外部に漏れることを気にしたのだろうか。

 別の住人はこう言う。

「私は藤井容疑者をマンションの管理人だと思っていたので、事件のニュースで『大学の准教授』と知ってビックリしました。だって、スーツ姿は見たことがないし、ほぼ毎日、自宅にいて、いつもマンションの掃除をしているんですから。

 ひとりでブツブツ、ひとりごとを言いながら、ホウキとコロコロを使って。カーペットの掃除じゃなくコンクリートなのに、いつも、コロコロ、コロコロ、やっているんです」

 外出時はパーカーのフードをかぶるか、チューリップ帽姿。住人とは目を合わせないという。

 容疑者の研究分野は英語の会話・談話分析や社会言語学。今春、勤務先の大東文化大学で講師から准教授に昇格したばかりだった。10年前から容疑者を雇用する同大は、

「大変、ご迷惑をかけております。ただ、精神的な疾患ということも考えられますので、今後の捜査や裁判の経緯を見守りながら、適正な処分を決めていきたいと思っております」とコメントした。

 平和の象徴であるハトを毒殺したインテリ系バードキラーはなぜ毒殺の手法をとったのか、犯行動機の詳細な解明を待ちたい。

やまさき・のぶあき 1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物虐待などさまざまな分野で執筆している