※写真はイメージです

写真拡大

 少子高齢化に歯止めがかからない日本は、人口・世帯数が減少している。わが国の人口は2004年のピーク時に1億2784万人だったが、国の推計によると2050年には3300万人も減少するという。

 これに伴い、1000万戸を突破した全国の空き家も加速度的に増え続け、2033年には2000万戸に迫る勢い。なんと日本の空き家率は30%を超えるという予測もある。

全国的に不動産価値は下がる一方

「被相続人が亡くなり空き家を相続したものの、どう処分していいのかわからないといった相談が連日寄せられています」

 と話すのは、業界初の個人向け不動産コンサルティングを行っている株式会社さくら事務所の長嶋修会長。地方だけでなく都心でも国内の不動産価値は下がる一方。中には“負動産”と呼ばれる物件まで登場。

「特に団塊の世代が亡くなるころには、こうした問題がさらに深刻化。生まれ育った家だけに愛着もあると思いますが、半年住まない家はどんどん傷んでしまいます。できれば、両親などが生きている間に亡くなった後どうするのか話し合ったほうがいいですね」(長嶋さん、以下同)

 考えられる選択肢は『売る』『貸す』『管理料を払って維持する』『そこに住む』の4つしかない。

「貸すためには、30坪ほどの家でも外壁・屋根、床・壁・天井、水まわりにかかるリフォームが必要で、それぞれ150万円ほど。コスト回収期間も計算する必要があります。さらに10年後に売ろうとしても建物はもっと古くなり、空き家も増え市況はもっと厳しくなっています。賃貸に回すことが割に合うのか、冷静に見極めてほしいですね」

 もし将来、住む予定があるのなら、空き家のまま管理する方法も選択できる。

「自分で管理できない場合は月額5000円から1万円程度で、『空き家管理サービス』を利用する方法があります。'17年には空き家管理事業者を対象に『空き家賠償責任保険』の販売も始まりました。空き家に関する事故にも対応してくれますから、便利ですよ」

とにかく早期売却が吉?

 しかし都心や都市部の一等地以外、大半の地域は住宅価格の下落が予想される今、早期に売却するほうが賢いと長嶋氏は言う。

「ほとんどのケースで売値は“今”がいちばん高いはず。'19年12月31日までなら、家屋や取り壊し後の土地を譲渡した場合、譲渡益から3000万円控除できる特別控除の特例もあります。残したい心情はわかりますが、早めに解決したほうが経済的には得策です」

 家を持つことは、一国一城の主になること。そう言われた時代は今や昔。

「不動産は査定して売れるまで早くて3か月、普通は6か月かかります。できれば生前に遺言書を取り交わし、亡くなられたら速やかに売りに出す。時間がたつほどライバルの空き家が増えるので、先延ばしにして放置するのは危険です」

〈PROFILE〉
長嶋修さん
不動産コンサルタント。(株)さくら事務所代表取締役会長。テレビ出演など多数。近著に『100年マンション 資産になる住まいの育てかた』(日経プレミアシリーズ刊)