男女の金銭感覚は、相性と同じくらい大切

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 結婚前提のおつきあいが始まった時に一番揉めるのが、お金の問題です。それは、金についての考え方と使い方が、人によってまったく違うからです。婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合い現場に携わる筆者が、目の当たりにした男女の婚活事情を、様々なテーマ別に考えてゆく連載。今回は、『金銭感覚と貯金の有無について』です。

見栄を張る人ほど貯金がない!?

 里江さん(35歳、仮名)は、自営業の石橋さん(47歳、仮名)とお見合い後、交際に入りました。石橋さんは、年収が1200万円ありました。

 お見合いの立会いで私もお会いしたのですが、ひと目でブランドものだとわかる仕立ての良いスーツを着た、洗練されている紳士でした。

 先日のデートの様子を里江さんは、こう話してくれました。

「待ち合わせ場所に、ベンツで迎えに来てくださいました。そこからすごくおしゃれな郊外の一軒家レストランに行って、フレンチをご馳走になりました。年がひと回り上だけれど、見た目も若々しいし、このままいいお付き合いをしていけたらと思っています」

 石橋さんも里江さんとのお付き合いに前向きでした。二人は間もなく結婚を視野に入れた“真剣交際”に入りました。ところが、そこから2週間後、里江さんから、「ご相談したいことがあります」と連絡が来ました。

 事務所に面談にやって来た里江さんは、困惑した顔で言いました。

「先日、石橋さんが事務所兼ご自宅にしていると言うお部屋を見せてくださったんです。2LDKのお部屋だったんですが、そこがとにかく汚くて」

 破れた革張りのソファー、使われていない干からびたキッチンのシンクやコンロ、埃だらけの窓枠、さらに、高級スーツが、学生の部屋にあるようなキャスター付きのパイプハンガーにかけられていたというのです。

「男の一人世帯だからと言ってしまえば、それまでなんですが、ベンツに乗ってさっそうと現れたり、高級スーツをパリッと着こなしていたりしていても、住んでいる場所にはこれほど無頓着なのかと思ってしまいました」

 さらに数日後、「石橋さんとは、交際終了でお願いします」という連絡が入ってきたのです。理由は、こうでした。

「自営業の方って、借金を作っても当たり前と言う感覚なんでしょうか? 石橋さん、8000万円近く借金があると言うんです。私は、公務員の家庭で育っているので、お金は堅実に使って、コツコツと貯金をするという感覚です。

 結局1200万円の年収があっても、借金の返済があって自転車操業なんだそうです。だけど、高級車を乗り回して、20万円も30万円もするようなスーツを買う。私とはお金に対する考え方があまりにも違うので、結婚してもぶつかることが多い気がしました」

 確かに、自営業者の中には、大きなお金を借り入れて、事業を軌道に乗せV字回復を狙う人もいます。しかし、堅実な公務員家庭で育ってきた里江さんには、理解できない金銭感覚だったのでしょう。

 2人は交際終了となりました。

毎月、貯金ができなのが不安

 美波さん(42歳、仮名)は、大きな百貨店に勤めています。百貨店は、土日、祝日、年末年始と、人がお休みしている時が書き入れ時です。

「結婚したら転職をして、土日祝日が休める仕事に変わろうと思っています。パートタイムの仕事にして、家族との時間を大切にしたいんです」

 婚活をスタートさせるときに、私にこう言っていました。

 そんな美波さんが、お見合い後にお付き合いしていた吉本さん(42歳、仮名)と、結婚に向けての真剣交際に入りました。その後、未来の生活について具体的な話をするようになったのですが、ある時、美波さんから、相談の電話がかかってきました。

「吉本さんに、『結婚したら今の仕事をやめて、パートタイムの仕事を見つけたい。あいている時間は家のことをしたい』と言ったら、反対されました。『自分の給料は決して多いわけではないので、パートではなく今のままフルタイムで働いていてほしい』と言うんです」

 吉本さんは、1年ほど前に、今の会社に転職をしました。以前勤めていた会社は給与がよかったものの勤務形態がキツく、また人間関係も良くなかったので、思い切って転職したのです。

 前職の時は、毎月決まった額の貯金もできていました。それが今は全くできなくなってしまったというのです。

「1人から2人の生活になったからといって、生活費が2倍になるかと言うとそうじゃないですよね。男のひとり暮らしだと外食も多いし、何かと出費がかさむ。

 私がパートをしながら、うまくやりくりすれば少なからず貯金はできると思うんです。それに吉本さんには、かなりの金額の貯金がすでにあるんですよ」

 驚くべきは、その金額でした。前の会社の退職金とこれまでコツコと貯めた金額を合わせると 2000万円以上もの貯金がある。

「たとえ銀行口座に2000万円あったとしても、今、貯金ができないこと、また貯金を使って減っていくことが不安なんですって。『老後のためにこのお金は崩さずに取っておきたい』というんですね」

 このカップルは、女性が結婚後の仕事をどうするか、今、話し合っている真っ最中です。

金銭感覚がピタリと合った2人

 こんなカップルもいました。

 4月に成婚退会した山本さん(42歳、仮名)と佳恵さん(34歳、仮名)のカップルは、金銭感覚がピタリと合っていました。

 山本さんが佳恵さんに、「プロポーズした」と報告を受けた時に、「婚約指輪はすでに用意していたの?」と聞くと、こんな返事が返ってきました。

「彼女は、『ダイヤの指輪はしないからいらない』と言っていたので、プロポーズの時は、ちょっと値のはるレストランで食事をしました。結婚指輪はそのうち2人で買いに行こうと思っています」

 婚約指輪に関しては、女性によって思い入れが違います。値段には関係なく記念だから欲しい思う人、憧れのブランドがあってそこの指輪が欲しいと言う人、佳恵さんのように、いただいてもしないからいらないと言う人。

 佳恵さんは、“無駄なものには、お金を使わない”主義。そこが、山本さんと合致していました。

 そして、山本さんは貯金を2000万円、佳恵さんは1000万円持っていると言うのです。山本さんは、前出の吉本さんのように、退職金プラス貯金ではなく、大学を卒業後に、給料から捻出して貯めた金額です。

 「ずいぶん貯めたのね」と私が言うと、山本さんは、平然と言いました。

「だって20年働いているんですよ。毎年100万円ずつ貯めたら、こうなるでしょう」

 2人は今、新居を分譲マンションにしようか、戸建てにしようかと相談しています。

 これまでたくさんのカップルを見てきましたが、結婚の具体的な話が進んで行く過程で、たいていお金の問題にぶつかります。

 女性は、「男性が食事代を出してくれた」「出してくれなかった」「デート代がいつも割り勘」「6、4の女子割りデートをする男はセコイ」などと、お付き合いをしている時の、表面的な金銭のやり取りを話題にします。

 しかしながら、気前がよくて見栄っ張りな男性ほど貯金がなかったり、ケチな男性ほど貯金を持っていたりすることがあります。

 ただ、人のためにお金が使えるのは生きたお金の使い方ですよね。お金の使い方に人となりが出るというのも、一理あります。

 そして、結婚は恋愛とは違います。日々の生活をともにするのですから、お互いの金銭感覚が合致するか、また、貯金や借金などをどう捉えているかは、相性と同じくらい大切なことなのです。

鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『あいかつハウス』http://aikatsuhouse.grupo.jp/