KABA.ちゃんが性別適合手術前の葛藤を明かす「本当はゲイとして男性が好きなのかなとか考えたり」

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 ミュージシャンの西川貴教さんらが「学ぶ」をコンセプトに「身近で当たり前の事だけど詳しく知らないモノ、事」をテーマに深掘りしていく番組『西川学園高等学校、略してN高!』。

 今回のテーマは“性転換”。ナグモクリニック名古屋院長の山口悟さんを講師に招き、西川さん、土屋礼央さん、ミクロマンサンライズ!!!さん、星田英利(以下、ほっしゃん)さん、IMALUさん、KABA.ちゃんさんに性的マイノリティーの概要や、手術の歴史、実際に手術に至るまでのプロセスを解説しました。

 手術後に後悔する人がいることに話題が及ぶと、実際に性転換手術を行ったKABA.ちゃんさんは、手術前の精神療法で「本当はゲイとして男性が好きなのでは」と悩んだ過去を明かし、手術前の精神療法は「絶対にやってください」とコメントしました。

左手奥から時計回りに西川貴教さん、IMALUさん、ミクロマンサンライズ!!!さん、ほっしゃんさん、KABA.ちゃんさん。 7〜8人に1人の割合で存在する「LGBT」とは? 左から土屋礼央さん、山口悟さん。

土屋:
 きょうの授業のテーマは「性転換」ということで、最近は性別適合手術を受けたGENKINGさんの話題であったりタイムリーでございますけれども、LGBTとか性同一性障害という言葉をよく聞きますね。きょうは性転換手術の最後まで踏み込んでいこうかなと思っています。KABA.ちゃんはやっぱり声が女性ですね。

KABA.ちゃん:
 下半身だけじゃなくて声も変えて。あ、声もじゃない、全部変えたんだった(笑)。

土屋:
 足も綺麗。見てこれ。

西川:
 僕、KABA.ちゃんが変身していく途中の状態のときとか、ちょこちょこ会って経過とか見ていて。タマを抜いたあとって、コンビニで売っている梅干しの種があるでしょう。あんな状態になるんですよ。それを写真で見せてもらった。

土屋:
 戸籍上も女性でということで、地上波でもいろいろ取材を受けているのですが、やっぱりなかなか喋れないこととかもあるんですよね。

KABA.ちゃん:
 そうなんです。全部カットされるとか、手前でなくされるとか。

土屋:
 なのできょうはたっぷりとお話を聞いていきたいと思います。それでは特別講師の先生をお呼びしたいと思います。GID(性同一性障害)認定医の山口悟先生です。山口先生のプロフィールをご紹介しましょう。

 では早速授業にいきましょう。最初の授業はこちらです。LGBTという言葉は最近よく聞きますが、セクシャルマイノリティの総称です。どういうものがあるのか一覧がこちらです。

土屋:
 ここにLGBTという頭文字があります。わかりますか。

ミクロマンサンライズ!!!:
 Lがレズビアン、Gがゲイ、Bがバイセクシュアル。

土屋:
 正解です。

土屋:
 最近、Tというのがどういう単語かというのをご存じの方いますか。

IMALU:
 トランスジェンダーです。

土屋:
 正解です。性別越境者ということですね。このLGBTについて先生に解説していただきたいと思います。

山口:
 セクシャルマイノリティと言いまして、要するに性的な少数派、そういう人たちをまとめてこういうふうに呼んでいます。体が女性なのですが好きな対象が女性なのがレズビアン、体は男性で好きなのが男性がゲイ、とにかくどちらでも好きになっちゃうのがバイセクシュアル。これらは性の指向と言います。トランスジェンダーというのは、性の自認で分類したものなのですが、性の自認が男なんだけど体が女という方のことです。

ほっしゃん:
 じゃ、LGBとTはちょっと違うということですか。

山口:
 ちょっと違います。

土屋:
 KABA.ちゃんはどこなんですか。

KABA.ちゃん:
 私はみなさんと出会ったときはGだったんです。でも今はTです。

ほっしゃん:
 今は女性になったからGは残ってないのか。

KABA.ちゃん:
 そうですね。戸籍も変えちゃったから、女性だからここに当てはまらないという人もいるのですが、海外では女性になってもTと言われる方もいるみたいです。だからこの中に入れるのであったらTですね。

西川:
 性同一性障害と呼ばれる方々がTに入るということですね。

山口:
 そうですね。もちろんこれに入らない人もいるのですが、大雑把に言えばそうですね。

土屋:
 LGBTの人たちというのは、割合で言うと何人に1人くらいなのですか。

山口:
 いろいろな調査があるのですが、本当に7〜8人に1人というデータがあったりします。

土屋:
 普通に身近にいて、カミングアウトできないとかありますからね。

ほっしゃん:
 自分自身が気づいていない方とかもいらっしゃるんですか。

山口:
 そうなんです。特に若年の方は気づきがなかったりして、行きつつ戻りつつ悩んでいる方もたくさんいるんです。誰かに言うときには、もう10年も15年も悩んでいる方が多いんですね。

1964年の有罪事件をきっかけに、性転換手術はアンダーグラウンドなものへ

土屋:
 性転換治療の話を進める中で、どうしても歴史を紐解いていかなければいけません。世界と日本の外科治療の変遷をグラフにしました。こちらです。

山口:
 1950年代にアメリカで軍人を対象にした性別適合手術が初めて行われました。日本でも名もなき病院で手術がはじまっています。ところが64年、ブルーボーイ事件といって、男性の娼婦の男根を切ってしまった産婦人科の先生が有罪になってしまったんです。

ほっしゃん:
 傷害事件みたいにね。

山口:
 そうです。日本の事件ですが、それ以来手術をやってはいけないという認識が医療界に広がってしまって、この時期からアンダーグラウンドになってしまった。

ミクロマンサンライズ!!!:
 頼まれて手術をしたということですか。

山口:
 当時は男娼という方が社会に割といらっしゃって、そういう方が男根を取ることで商売ができるというのがあったので、性の違和とは別ではないかという勘ぐりがあったりもして、有罪になってしまったんです。医療サイドが禁止されたと思っちゃったんですね。しかし、今年この手術が保険適用可になる見込みです。

ほっしゃん:
 言ってみれば、自分には責任はないですもんね。

山口:
 そうですね、先程のLGBTはすべて自分では選ぶことはできないです。すべて内から湧き出てくるものなので。

土屋:
 KABA.ちゃんはどこで手術をしたんですか。

KABA.ちゃん:
 私はタイです。日本でもできるんですが、手術の件数が多かったと言うんですかね。

土屋:
 やっぱりレベルというか、海外の方が件数が多いですから。

ほっしゃん:
 タイの病院でもいくつか候補はあったの?

KABA.ちゃん:
 ありました。本当はアメリカでやりたかったんですけれど。

西川:
 なんで?

KABA.ちゃん:
 ケイトリン・ジェンナーという元金メダリストが女性になったんですけれど、その手術を担当してくださった先生が私はすごく気になっていて、その先生自身も当事者なんですって。男性から女性になられて。なおかつ産婦人科の先生から、そういう性転換の手術もやるようになったっていろいろと情報を集めていました。私はやりたかったんですけれど、間に入ってくれていた方に騙されちゃって。

一同:
 えぇ!?

KABA.ちゃん:
 デポジットとかが返ってこなくなっちゃって……。

西川:
 先にいくらか預けていたんだ。

ほっしゃん:
 じゃあ、手術できなかったんだ。

KABA.ちゃん:
 そうなんですよ。

土屋:
 今年から性別適合手術が保険適用になれば一気に数が増えてくるかもしれませんね。

西川:
 そういう話になると、日本だとすぐに「モロッコで」って出てくるじゃないですか。あれは本当は違うんですよね。

山口:
 モロッコという国がやっていたのではなくて、モロッコにいらしたフランスの医師がやっていたから有名になっただけですね。

西川:
 フランスは当初、そういう手術は宗教の関係であまりできないということもあって、当時のモロッコはフランス領だったので、そこで開業されてやられていたって。

土屋:
 すごい詳しいですね。

KABA.ちゃん:
 あれ、もしかして?

西川:
 ついてるよ(笑)!

性転換手術を後悔しないための精神療法。KABA.ちゃん「絶対にやってください」

土屋:
 次は手術のプロセスについて勉強していきたいと思います。理解をより深めるためにしっかりと勉強していきたいと思います。こちらです。

山口:
 FTMというのはFemale to Male。女性から男性へ。MTFはMale to Female。男性から女性へ。これがまず大原則としてあります。一番上に書いてあるのが生殖腺切除。女性の体から子宮と卵巣を取っちゃう。男性の体から精巣を取っちゃう。これはとっても特別な手術です。母体保護法という法律で守られている臓器ですから、ここは非常にハードルがあります。

ほっしゃん:
 男性で言うと、まだ性器はついたまま?

山口:
 ついていますね。そしてMTFというのが、いわゆる性器を取る手術であったり、膣を作ったりする手術です。女性から男性の場合は膣を閉鎖したりとか、それこそクリトリスの場所をずらしたりとか、陰のうみたいなものを作ったりします。

IMALU:
 閉鎖ってどうなっちゃうんですか。穴だけ閉じる?

山口:
 たとえばご老人の方で子宮が落ちてきてしまう方がいるのですが、そういう方も閉鎖します。女性の加齢変化に対して行う手術なのですが、トランスジェンダーの場合は膣の粘膜を全部取って縫います。あとは女性が男性になるにはやはり乳房を取らないといけない。これは絶対ですね。下半身はともかく上半身は社会的にも目立つ場所ですからね。男性の場合は逆に豊胸したり声を変えたり、顔のエラを削ったりします。

土屋:
 たとえば「私、性転換手術をしたいです」「はい、きょう手術しましょう」とはいきません。ここにいくまでのプロセスを説明します。まずは精神療法、ホルモン療法にいって、ようやく性別適合手術ということなのですが、精神療法についての説明をお願いします。

山口:
 まず、精神科の先生が果たして手術が必要なのかどうか、あるいは性同一性障害なのかを診断するには三つくらい行うことがあります。一つはまず、躁うつ病と言われている双極性障害といった病気とか、うつ病とか別の疾患が本人に性別違和を引き起こしているのではないかという意味で、別の疾患ではないという鑑別が必要です。

 一過性に気の迷いで言ってしまうこともあるかもしれません。さらに子供のときから受診するまで「子供のときはどうでしたか」「小、中、高校生のときはどうでしたか」と、生活史を聞きます。そうすると、性別違和が時間軸に沿っているかどうかがわかるんですよ。急に目覚めたとかではなく、持続していることが大事なポイントになっています。

 さらにカミングアウトをしたあととか、社会で生きていくためにはたくさんのハードルがあるので、そのあたりのアドバイス、あるいはカミングアウトの方法そのものをアドバイスすることもあります。

土屋:
 精神療法を行って、実際に性転換手術に踏み切る人は何パーセントくらいですか。

山口:
 実際に精神療法をして本当に手術までいくのは5%くらいです。

一同:
 えっ!?

西川:
 意外とそこの手前で「もしかして違っていたのかも……」と気づくということなんでしょうか。

土屋:
 患者さん自身が止めるのか、先生が止めるのかどちらなんですか。

山口:
 どちらもだと思います。別の疾患の場合はこちらが止めます。あとは話を進めていく中で、「ちょっと違うかな」と自分が認識していくとかですね。

IMALU:
 手術を受ける人は必ずこれはやらないといけないんですか。

山口:
 理想ですね。法律ではありません。

KABA.ちゃん:
 私やりました。自分史を書かされるんです。生まれたときから現在まで、こういう時期にこういうことが起こってどう思ったとかを全部書いて、それを見ながら先生と話をしていくというのを1年近くやりました。

土屋:
 これはみなさん1年くらいやるものですか。

山口:
 そういうわけではないですが、だいたい半年くらいは必要ですね。

土屋:
 やっぱり間違って手術してはいけないというものがあるからですか。

山口:
 それもありますし、やっぱり1回くらいだと、「こう言えばいい」みたいなマニュアルが出回ったりしますからね。

KABA.ちゃん:
 そういうのをなくすために、カウンセリングも時間をかけて通わないといけないんですよね。

西川:
 でも途中で「私、そうじゃなかったのかも……」というのは、本人が気づいていくものなのですか。

山口:
 そうですし、ホルモン療法で止まる方もいます。

ほっしゃん:
 まれに手術終わってから「やらなければよかった」と言う人もいるんですか。

山口:
 どうしても、いなくはないですね。

西川:
 そのためにもやっぱり順番を経ていかないとね。

土屋:
 そういうことで自殺をしてしまう人もいるらしいです。1回手術してしまうと絶対に元に戻れない。

KABA.ちゃん:
 情報を集めているときに、手術の前後に精神的に不安定になって万引きをする人がいるんですって。私、そういうのが出て捕まっちゃったらどうしようって。だからそういうのがあって、なかなか踏み切れないというのもありました。

ほっしゃん:
 KABA.ちゃんも1年間カウンセリングをやっているうちに、「もしかしたら違うかも……」と思ったことはあったの?

KABA.ちゃん:
 ちょっとはありました。

ほっしゃん:
 KABA.ちゃんですらあるんや。

KABA.ちゃん:
 自分は本当はゲイとして男性が好きなのかなとか。

西川:
 だったら別に手術をする必要はないもんね。

土屋:
 やっぱり精神療法はやったほうがいい?

KABA.ちゃん:
 絶対にやってください。