第96回全国高校選手権は30日に開幕【写真:Getty Images】

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30日開幕の選手権…大滝雅良、小嶺忠敏ら、今年は名物監督がズラリ

 サッカーの第96回全国高校選手権は30日、各都道府県の代表48校(東京は2校)が参加して開幕する。駒沢陸上競技場で開幕戦1試合を行い、31日から首都圏9会場で熱戦を展開。決勝は新春1月8日、埼玉スタジアムでキックオフされるが、今回は多数の名物監督が顔をそろえた。

 3度の優勝を誇る清水商と庵原が統合し、開校5年目で初出場を果たした清水桜が丘(静岡)の大滝雅良監督は話題の一人だ。長年に渡って母校の清水商を率い、風間八宏、小野伸二、名波浩、藤田俊哉ら、数え切れないほどの名選手を育てた。かつて「静岡を勝ち抜くほうが全国で優勝するより難しい」と話していた大滝監督。その名将が激戦区を突破し晴れ舞台に姿を見せるのは、清水商が最後に選手権に出場した第90回大会以来、6年ぶりとなる。1回戦の相手は、出場24度目の高川学園(山口)だ。

 小嶺忠敏監督は島原商と国見(ともに長崎)で33度、現在の長崎総科大付を合わせると選手権で計38度の指揮を執る72歳の老練だ。国見では帝京(東京)と並び最多優勝6度を数え、Jリーグで史上初の3年連続得点王となった大久保嘉人をはじめ、平山相太や三浦淳宏、高木琢也ら大滝監督と同じく多数のJリーガーを育成。長崎総科大付でも国見時代からの走力とキック力を生かした戦法は健在だ。

 1回戦で中京大中京(愛知)と顔を合わせるが、同校は名古屋などで活躍し、Jリーグ通算54得点した岡山哲也監督が率いる県内では刈谷と並ぶ最多16度目の出場を数える強豪でもある。清水桜が丘と長崎総科大付がそろって1回戦を勝ち上がると、1月2日の2回戦では大滝VS小嶺という名将による夢の決戦が実現する。

流通経大柏・本田監督と昌平・藤島崇之監督は師弟関係

 流通経大柏(千葉)の本田裕一郎監督も忘れてはいけない。初任の市原緑で宮沢ミシェルらを育て、続く習志野では元日本代表の玉田圭司や広山望らを指導。選手権での優勝こそないが、全国屈指の強豪に栄達させ、1995年の全国高校総体では、西武台(埼玉)を破って初優勝した。

 2001年から流通経大柏に着任し、07年には大前元紀や田口泰士らを擁して選手権で初優勝。翌年は全国高校総体も初制覇したほか、13年には高円宮杯U-18プレミアリーグ東地区で初優勝し、チャンピオンシップでも高体連チームとしては初の栄冠に輝いた。そして、今夏の全国高校総体を制した余勢を駆って、ライバルの市船橋を県予選決勝で倒して出場権を獲得した。

 本田監督の習志野時代の教え子が、玉田やJ3鳥取の吉野智行強化部長と同期、昌平(埼玉)の藤島崇之監督だ。恩師との初対決の可能性があるのは準決勝となる。尚志(福島)の仲村浩二監督も習志野で本田監督の薫陶を受けた一人で、仲村が日本ユース代表に選ばれたことで、習志野は県予選免除で選手権に出場。師弟決戦は決勝でしか実現しない。

 島原商で小嶺監督に指導されたのが、タイガー軍団・前橋育英(群馬)を率いる山田耕介監督で、大勢の名選手を輩出。特に山口素弘や松田直樹、細貝萌といった守備の達人を多く育てた。前回大会は青森山田に、3年前は星稜(石川)にいずれも決勝で敗れているが、今回も優勝候補の一角に変わりはない。

青森山田・黒田監督は連覇へ、日章学園・早稲田監督は選手&指揮官でVに挑戦

 連覇を狙う青森山田の黒田剛監督は、コーチから昇格して23年目。柴崎岳を擁して第88回大会で準優勝し、前回大会では本州最北端のチームとして悲願を達成した。第79回、80回大会の国見を最後に連覇がないだけに注目が集まる。

 指揮官としても選手権優勝を目指すのが、日章学園(宮崎)の早稲田一男監督。第56回大会で帝京を2度目の優勝に導いたエースFWで、大会後に日本代表候補となった。13度目の出場で、どこまで上位に進出できるか。

30度以上出場している古豪は、秋田商の43度が最多で仙台育成(宮城)が32 度で続く。過去に2度優勝している秋田商は、選手として選手権を経験した小林克監督が指揮を執って4年目。13大会ぶりの勝利を目指す。5年ぶりに出場する仙台育英の城福敬監督は、来季からJリーグ広島を指導する城福浩氏の兄だ。2度のベスト4を上回る成績が目標となる。 (河野正 / Tadashi Kawano)