11月6日、「アジアのノーベル賞」と呼ばれるラモン・マグサイサイ賞を受賞した石澤良昭教授による“受賞記念講演会”が上智大学で開催された。講演会では、アンコール・ワット遺跡群の保存修復に取り組んできた活動などを中心に、石澤教授が行ってきた取り組みについて紹介された。

マグサイサイ賞とは?


フィリピンのラモン・マグサイサイ大統領を記念して創設された賞で、毎年アジア地域で社会貢献などに傑出した功績をあげた個人や団体に対し、ラモン・マグサイサイ賞財団から贈られるもの。これまでにインドの故マザー・テレサや元国連難民高等弁務官の緒方貞子氏らも受賞しており、昨年は国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊が日本の団体として初受賞している。

長年に渡ってアンコール・ワットの保存修復を行う



石澤教授は、2017年8月31日にマグサイサイ賞を受賞。長年に亘るアンコール・ワット遺跡群の保存修復および同遺跡を守るカンボジア人専門家の人材養成に尽力したこと、そしてその貢献によってカンボジア人が自国の固有文化遺産に対する誇りを取り戻すきっかけを与えたことなどが高く評価された。

石澤教授が最初にカンボジアを訪れたのは1960年頃。上智大学の神父に連れられてアンコール遺跡を研修で訪ねたところ、不思議な遺跡の形に圧倒され「ここに残りたい」と強く思ったという。ところが、内戦が続いていた当時のカンボジアはポル・ポト派によりカンボジア人たちが大量に虐殺され、アンコール・ワットも荒廃。そんな惨状を目の当たりにした石澤教授は、遺跡の修復や専門的な知識をもったカンボジア研究者を育成するため、50年近くにわたって活動し続けてきた。その功績が高く評価され、今回の受賞に至ったという。


講演会が行われたこの日、アンコール・ワット遺跡群をテーマにした企画展や、マグサイサイ賞の受賞メダルや賞状などが上智大学構内にて展示された。滅多にお目にかかれない出展物の数々に、多くの人が詰めかけていた。