設定した自社株買い枠を使い切っていない企業が多い。足元の業績は良好で、株主からの圧力が強まっているという。

自社株買い見送りは、駆け込み増配の可能性あり!?

自社株買い、今年は低調。 期限内に買わなければ、 増配に株主還元変更も

今年は自社株買いが極端に少ない。一方、企業業績は順調に拡大しているため、利益還元を求める株主の圧力は強まるばかりだ。9月中間期末を前に、経営者は自社株買いか増配かの選択を迫られている。

1〜6月の自社株買い枠(取得目標額)は2兆2000億円と前年同期比で半減した。4年ぶりの低水準である。7〜9月期は自社株買いの発表がもともと少ない傾向があるため、今年は自社株買いに慎重だといえる。

背景には、企業買収や設備投資のために株主還元を絞る企業もありそうだ。しかし、現実には買収など大型投資を実行する企業が多数を占めることは考えにくい。

「買い時を逃した」―。インサイダー取引規制があるため、自社株買いについての企業経営者の口は重いが、大手建設会社の幹部はこう漏らす。年度当初に様子を見ているうちに株価が上昇し、自社株を買えなくなったというのだ。

一方で、企業業績は増益基調にある。2017年3月期は配当と自社株買いを合計した総還元額が 17 兆5000億円と過去最高だった。ただ、企業業績は2ケタの増益を達成したため、総還元性向は5ポイントほど低下し、株主還元はむしろ後退した格好になっている。株主権強化の旗を振ってきた金融庁内でも不満が大きいようだ。

年度下半期にかけて、企業にとって利益還元が重要な経営課題になる。なかでも自社株買い枠を設定した企業は、遅ればせながら買うか、自社株買いをやめて配当を増やすかの2つに1つを選ぶことになる。

市場で最も注目されているのはトヨタ自動車。5月 10 日に2500億円、5000万株を上限とした自社株買いを発表したのだが、8月初頭の本稿執筆時点で累計取得株数はゼロである。トヨタ自動車の取得期限は8月 31 日。8月末まで1株も買わなければ、最大2500億円の自社株取得の原資が宙に浮く。同社は財界代表企業だけに内部留保として貯め込むのは難しく、配当の引き上げとして株主に還元される公算が大きい。自社株買い枠が埋まっていない企業が狙い目だろう。

メルカリ上場か?関連銘柄の値動きをしばらくチェック!

上場申請を終えたとの報道をメルカリ側は否定したが…

今や国内はもちろん、海外でも絶大なる支持を獲得しているメルカリ。昨夏には米国におけるiOSトップ・アプリ・チャートで、「ポケモンGO」に次ぐ3位にランキングして話題を集めた。メルカリとは、一般ユーザーが自分で値付けした所有物をネット上で販売できるフリマアプリだ。

サービス開始は2013年だが、登録料や出品料も不要で手軽に販売できることから、ダウンロード数が急ピッチで拡大。成約時に販売価格の10%を手数料として徴収する収益構造なので、利用者が増えれば同社の利益もそれに比例して拡大する。テレビCMに巨費を投入して知名度を高めつつ、早くも2016年には黒字化を達成し、売上高は100億円を突破した。

冒頭でもふれた米国とともに英国にも進出しており、いっそうのグローバル展開も視野に入れているという。そして、そのための資金を調達するうえでも秒読み段階に入っているとウワサされてきたのが同社のIPOだ。7月下旬には、東京証券取引所に上場の予備申請を終えたと日本経済新聞が報道。メルカリ側は「現段階で決定している事実はありません」と発表したが、早ければ年内にも上場が現実となる可能性が大だと多くの市場関係者が予想している。

時価総額が1000億円を超えると目されており、今年最大規模のIPOとなりうるわけだ。おそらく多数の投資家が殺到し、抽選倍率もかなり高くなるのは必至の情勢。当選しなかった場合、初値をつけた後の投資妙味はどうなのだろうか?

フィスコの田代昌之さんは次のような見解を示す。「ネームバリューなど、魅力的な要素は大きいが、時価総額の規模からすれば、初値暴騰は難しいかも。会社規模を考慮すると東証1部上場の可能性は十分にあり、その場合は年金のようなパッシブファ ンドの買いが入り、需給的な追い風が加わります」

果たして、ユーグレナやサイバーダインを彷彿させるような株価上昇は期待できるだろうか。メルカリ関連と位置づけられている銘柄の株価にも、その予兆とも言える動きが見られる。アプリ開発やネット広告などを展開しているユナイテッドがその典型だ。同社はメルカリと資本業務提携を結んでおり、真っ先に関連銘柄として物色されがちだ。

「そのユナイテッドの大株主がD.A.コンソーシアムです。GMOインターネットも子会社のGMOペパボを通じて出資しています」(田代さん)

正式に上場の日取りが決まるまで、その可能性が取り沙汰される度に、憶測レベルでも関連銘柄が物色される確率が高い。LINEの上場が決まるまでの道筋とよく似た展開となりそうだ。だとすれば、再び何らかの観測が出る前に買っておくのも一手だろう。