「セーブ数」より「セーブ成功率」…信頼できるクローザーは誰?
セーブ数が同じでも、失敗するケースが多ければ優秀ではない
セーブは試合の最後に出る投手が、味方のリードを保ったまま試合を完了させると付く記録だ。セーブの条件としては、勝ち試合の最後に投げ、勝利投手の権利を持たない投手であることが絶対で、次の3つの条件のいずれかに該当する必要がある。
1.3点以内のリードがある場面で登板し、最低1イニング以上投げてリードを保つこと
2.アウトカウントと走者の有無に関係なく、迎える打者2人に本塁打を許したら同点または逆転される場面で登板し、リードを保つこと
3.点差に関係なく、リードしている場面で登板し、3イニング以上を投げてリードを保つこと
こういったセーブが付く状況で投げる救援投手を、一般にクローザーや守護神と呼ぶ。
クローザーは「セーブ数」で評価されるが、セーブ数が同じであっても、セーブが付く状況で同点に追いつかれたり逆転されるなど失敗するケースが多ければ、そのクローザーは優秀とは言えない。MLBではセーブ状況での失敗を「ブロウンセーブ=BS(セーブ失敗)」と言う。また、セーブ状況でのセーブに成功した数の比率を「セーブ成功率=S%」と言う。セーブ成功率は、一般的に8割以上欲しいところで、9割以上ならば絶対的な存在と言えるだろう。
4月30日までのNPB各球団の主要なクローザーのBS、セーブ成功率を見ていこう。
○パ・リーグ
S BS S%
松井裕樹 (楽) 10 0 100.0%
サファテ (SB) 10 0 100.0%
平野佳寿 (オ) 7 1 87.5%
益田直也 (ロ) 6 1 85.7%
増田達至 (西) 4 0 100.0%
増井浩俊 (日) 2 1 66.7%
楽天の松井裕樹は29日の日本ハム戦でサヨナラ負けを喫したが、2-2の同点からの登板、つまりセーブ状況ではなかったので、BSはつかない。ソフトバンクのサファテとともに、ここまで優秀な成績を残している。
ロッテの益田はチーム状況が厳しい中で、良く奮闘していると言えるだろう。開幕に出遅れた日本ハムは、そもそもリードされて終盤を迎えることが多いため、増井が登板するセーブ状況が少ない。
安定のパ・リーグに対し、失敗の多いセ・リーグ
○セ・リーグ
S BS S%
ドリス (神) 10 2 83.3%
カミネロ (巨) 7 1 87.5%
田島 慎二 (中) 7 2 77.8%
今村 猛 (広) 4 0 100.0%
秋吉 亮 (ヤ) 4 0 100.0%
パットン (De) 3 2 60.0%
山粼康晃 (De) 2 1 66.7%
パ・リーグのクローザーよりもセーブ成功率が低いようだ。絶対的なクローザーがいないことが分かる。阪神のドリスは両リーグ10セーブ一番乗りを果たした。失敗もするが、スタミナがあるのが持ち味だ。
広島は昨年、34セーブを挙げた中粼翔太が故障で登録を抹消され、ジャクソン、ブレイシアが起用された後に、今村が就任。今のところ失敗なくクローザーを務めている。
DeNAは不安定な投球が続く山粼康晃をセットアッパーにして、パットンをクローザーに配置転換したが、早くも2度もBSを記録し、信頼が置けない。今後を戦う上で悩ましいところだ。
クローザーは、現在のプロ野球では非常にウエイトの高いポジションだ。セーブ成功率が高いクローザーがいるチームは、勝利の方程式が確立しやすい。今季は絶対的なクローザーが誕生するのか。今後もセーブ成功率の推移を見ていきたい。
広尾晃●文 text by Koh Hiroo